堀江社長のユニークなキャラクターと相俟ってライブドア事件はショッキングな展開をし、お茶の間の目を釘付けにしてきた。この事件の主役はライブドアだが、日本資本主義システムの抱える問題を表面化させた。今までの報道と論評を整理してライブドア・ショックがもたらした物を整理した。再発防止だけでなく何を改革して行くかこの機会に根本原因を追究していくべきである。
1) 金融庁の無能力:門番であるべき金融庁の証券取引等監視委員会の無能力が、閣僚にライブドアの日本放送の買収を合法であると発言させ、それ以降のライブドア暴走の流れを許すことになった。誰も警告を与えブレーキを踏まなかった。独立性の高い日本版SECを作ることが求められる。
2) 法の不備:証券取引法強化は必須で、やり得を防ぐため監視機能体制強化と罰側の見直しが急がれる。エンロンやワールドコムの不正会計発生時、米国は短時間で徹底した法整備を行い、信頼を繋ぎとめた例を見習って欲しい。幸い市場は落ち着きを取り戻してきたが、それで「喉もと過ぎれば」にならないようにしたい。
3) 東京地検特捜部の力:強制捜査が始まってからたった1週間でライブドアのトップ4人全員逮捕となった。この特捜部の電撃的な速さは特捜部の実力の凄さと、余程事前に証拠を握っていたことを物語っている。特捜部の「巨悪は許さない」と言う揺るぎ無き信念を感じると同時に、何らかの政治的な動きが背景にあった疑いが残る。
4) 東証の犯罪的無能:昨年から東証の無能力さは世界の日本市場への信頼を著しく失墜させ犯罪的でさえある。東証の処理能力強化は当然として、東証以外に代替市場が必須であることが明確になった。
5) 株式市場の調整は適切:昨年末からの株式市場加熱はやや異常であり、日経平均が15,000円以上を超えてからバブルの臭いがし始めた。今回の株価下落は市場全体にとってはバブル部分を剥落させる良い調整の機会となった。
6) 企業評価基準:米国は2000年ITバブル破裂後、市場は配当を重視する評価に変え収束していった経緯がある。証券会社等は評価基準を見直し個人投資家に適切な投資情報公開をしていく責務がある。
7) 企業ガバナンス:ライブドアには企業統治が機能するかけらもなかったようだ。ライブドアを特異な例外と見ないで、環境問題からセキュリティまで全企業に対する警告と受け取り、企業統治のあり方を見直す必要がある。自動車メーカが全地球に及ぼしている環境破壊からヤマハの兵器転用可能な商品の中国輸出まで見直すべきことは山ほどある。
8) 堀江ファン:逮捕後も堀江社長を励ますメールが多数来ているらしい。既存勢力に対するアンチテーゼのメッセージのように見える。今後底流に何があるか意味するところを考えても無駄ではない気がする。
9) ライブドア報道部門の姿勢:ライブドアのニュース・サイトは「あらゆる情報を分け隔てなく集約し、オープンにしていきたい」「社会の公器として認められるべく、邁進する」とし、中立性と独立性を保ち、社内への家宅捜査でも、独自のニュースソースとして現在進行形で報道を続ける姿勢は、・・・ 経営上の嫌疑とは別にスタッフ一同にエールを送りたい(Nikkei BPから抜粋)。大新聞や放送局のなまくらな身内の不祥事の扱いに比べその姿勢は賞賛され報道の手本を示した。高く評価したい。
10)政治的影響:小泉政権の最大の関心は混乱が続き日本市場の信頼が失われる恐れだったはずだ。野党は堀江社長が先の総選挙で自民党の支援を受けたことを攻撃するのは当然だろう。買収に動いた時の金額の大きさと急激な成長を考えると、今後意外な所から「隠し球」が出て来て事態が急展開しないとも限らない。しかし、それで今までの構造改革が誤っていた訳では決してない、これを政治的に利用して逆行させてはならない。■