かぶれの世界(新)

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'06春の読書

2006-05-11 18:17:05 | 本と雑誌

今回は読みたくとも古本屋では中々見つからない比較的新しい本を中心に図書館で借りて読んだ(印)。当然の事ながら図書館では選択肢が沢山あるお陰で余りに酷い本に時間を使わないで済んだ。しかし、下記のように古本でも結構いい本を見つけることが出来た。この夏はテーマに拘らずもっと気楽に読書を楽しむつもりだ。

今回は「ダール、デモクラシーを語る」と「戦争は何故必要か」の一読をお勧めしたい。全くかけ離れたように見える民主主義の大家と、当代随一の戦略家といわれる海軍大学教授のグローバリゼーションに対するコンセプトだが、ある意味米国特有の共通性を感じ私には面白い。

2.0昭和天皇の研究 山本七平 1989 祥伝社 昭和天皇は明治憲法を生真面目に遵守する自己規制の人だったことを既知のデータを用い繰り返し説明している。

2.0喪失の国 日本 MKシャルマ 2004 文春文庫 92年から約2年日本に滞在したインド人の日本人論。母国と違うことは変だという中華思想っぽい指摘はあるものの、著者の知的で深い洞察力に考えさせられることが多い。

2.0時代の深層底流を読む* 寺島実朗 2002 東洋経済 9.11前に書いたコラムに9.11後の書下ろしを加えたもの。市場経済は行き過ぎで既に格差を主張し、今日の著者の立場と一貫している。私には視点がやや内向きに感じる。

2.0日本の真実* 大前研一 2004 小学館 市場経済主義の最先端にいる著者の主張だが個々のテーマで一致するところが多い。総合すると共感を覚えないのは氏の発想は効率一本やりで精神的な部分が感じられないからと思う。

2.0読売vs朝日 読売新聞論説委員会 2004 中央公論新社 9.11から年金問題までの両社の社説を読売新聞の立場から比較したもの。取り上げたテーマでは読売のほうに分がある。朝日の立場での比較を見てみたい。

1.5メディアの迷走 ラクレ編集部編 2005 中央公論新社 昨年のNHK・朝日論争について識者の論評を読売の立場で纏めたもの。当時を振り返り録音テープ非公開の朝日は弱い立場にあり、歯切れが悪く情けない対応が思い出される。

2.0原理主義と民主主義* 根岸毅 2003 慶応大学出版会 民主主義とは人は過ちを犯すことを前提に「進歩」を目指してやり直しの自由を認める「再行主義」のシステムとし、原理主義をその対極にあると定義する。シンプルな理論だが、現実世界にあてはめようとするとそう簡単ではないことを読み終わる前から予感させる。

2.0モラルとしての民主主義* JHハロウェル 2006 慶応大学出版会 民主主義の原則を哲学的・社会科学的に定義。回りくどい言い回しで読みづらい、評価の半分は翻訳の悪さかも。1954年に書かれ全体主義と戦った大戦直後の生々しい新鮮な息吹を感じる。

3.0ダール、デモクラシーを語る* ロバートAダール 2006 岩波書店 民主主義の大家の9.11やグローバリゼーション観を聞くのはとても興味深い。イタリア出版社のインタビューで英語版が無いというのは珍しい。

2.0戦争ゲーム Dハルバースタム 1991 講談社 湾岸戦争リアルタイム論評。既に今日のイラク戦争の問題が指摘されている。ブッシュ(父)が史上最高から瞬く間に支持を失った様子が生々しく、多分息子のトラウマになった。

3.0戦争は何故必要か トマス・バーネット 2004 講談社 米国式グローバリゼーションは善という所から始まるので酷く独善的に聞こえる。何故良いのかの説き明かしが無ければ理屈が通らない場合がある。しかし、その後の状況認識、理論展開は軍事力だけに頼らないもので聡明で有能な戦略家の評価に値する現実的なものである。

1.0小泉純一郎宰相論* 屋山太郎 2005 海竜社

2.0プロフェッショナル広報戦略* 世耕弘成 2005 ゴマブックス 昨年の総選挙で大成功した広報戦略が紹介されている。首相に広報担当がいないのがもっと驚くが。

2.5ポストデフレ社会* ロジャー・ブルートル 2004 東洋経済新報社 前著のベストセラー「デフレの危機」に比べると翻訳が格段に良くなったと思うが、著者がネオコン的グローバリゼーション礼賛的経済理論を展開するとは驚いた。富の源泉は知識・世界貿易・良い制度から生まれると説き、欧州問題の指摘は的確である。

2.5貯蓄率ゼロ経済* はじ浩一 2006 日本経済新聞 貯蓄率低下は高齢化が原因と明確。日本の将来は貯蓄をほどほどに、投資の効率化を図れと説く。失われた10年は過剰貯蓄率が原因との主張は官僚の我田引水的論理展開で同意できないが、官僚出身らしい論理展開のベースになる各種データは参考資料として役に立ちそう。

1.5中華連邦 大前研一 2002 PHP研究所 台湾・香港等を含む7つの地域国家から構成される大中国を説くものだが、同じネタの本を読まされもういいという気がする。著者の中国関連本を初めて読む人には(2.0)、参考になる。

2.0鄧小平の遺言 落合信彦 1994 小学館 著者の足で稼ぐスタイルの報告はそれなりに説得力がある。90年代初め既に農民の困窮、官吏の汚職が認識されていた事が分かった。10年以上経った今の状況は最悪だが経済も成長した、どう評価するか難しい。

2.0人民元改革と中国経済の近未来* 榊原英資 2005 角川書店 人民元切り上げは貿易収支の改善にならない説は同意、政治の二重構造と政策決定プロセスは参考になるが説明が通り一遍、軍や農民の影響力のメカニズムが見えてこない。一党独裁の政治システムが日本と似ているという説は私には理解できない。

2.0意思決定の思考技術* ハーバード・ビジネス・レビュー 2001 ダイアモンド社 最初に感じたのはHBSといえども意思決定プロセスを論理的に定型化できてない。皮肉なことに何故誤った意思決定が起こるかよく整理されている。イラク開戦の意思決定を思い出させる。

1.5働くということ 2004 日本経済新聞社編 10代のニートから60代の倒産社長まで仕事に取り組むことが出来た人を足で稼いで取材した報告。成功物語の紹介以上のものではなく、読み終わって「だから何なの」という気持ちになる。

1.5コンサルタントの時代 鴨志田晃 2003 文芸春秋

1.0困った人* 養老孟司 2005 中央公論 ■

コメント (3)
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