CNNは今朝から終日ブッシュ大統領が新移民政策をテレビ演説で発表し、それに基づき6000人の州兵をメキシコ国境に派遣することを報じていた。米国には1200万人の不法移民がおり、低賃金労働で企業活動や市民生活に貢献する一方で、病院や教育システム等の公共サービスの負担になっていると非難されている。
移民受け入れに最も不寛容な国に住む者として政策の良し悪しをコメントする資格は無いが、番組や記事を見た印象と私の経験を少し紹介する。ブッシュの政策は国境警備強化と不法移民をゲストワーカーとして一時的な法的地位を認める‘包括的’なものだった。
政策に対する反応は賛成と反対が拮抗し、国が割れているように感じる。今まで問題を先送りしてきたとブッシュを責める声が両側にある。共和党保守派は不法移民に市民権を与えることに強硬に反対しており、ブッシュも一時労働者として認めるものの市民権は与えられない明言した。
9.11後強化されたはずの国境警備がこんな程度では、ブッシュが約束した国家安全保障政策は機能しておらず麻薬密輸・テロリスト潜入を防ぐことも出来ない。更に、不法移民を放置するどころか合法化するのは法治国家として許されないと言う主張が勢いを得ているように感じる。
一般市民は英語を話さないで米国の価値観を共有しないヒスパニックに対し必ずしも同情しない人が多いように感じる。数週間前のヒスパニックの百万人デモは裏目に出たかもしれない。
とはいっても現実には1200万人の不法移民を追い返すことなど現実的でないし、貴方達がダンスしている間彼らがゴミを集め、床を掃除しているのを理解しているのかと言う識者の声も聞こえてくる。どうも100点を取れる対策はなさそうだ。
国境沿いの州の企業は不法移民雇用の罰則強化を恐れている。カリフォルニア州知事は、州兵は国境警備の目的の為のものではないとクレームしたと伝えられている。州兵派遣は7月に予定されているメキシコ大統領に影響し反米政権が生まれる恐れがあると脅迫まがいの警告も受けている。思わないところでブッシュは掛け率の高い賭けをせざるを得なくなった。
私がカリフォルニアで働いた時たまに夜間工場を見回ると、見かけるのは決まってラジカセで聞きなれないスペイン語の音楽を聴きながらモップを動かしているヒスパニックばかりであった。ジャニター(清掃員)と言えばヒスパニックというのは東部でも同じで、米国社会の隅々まで子供のときから焼き付けられた常識になっていた気がする。
ファースト・フードの店員もヒスパニックが非常に多い。確か数ヶ月前に書き込んだと思うが、あるハンバーグ・フランチャイズでは英語を話せないヒスパニックの店員に代わり、車に乗った顧客の声はマイクで拾われアウトソースしたコール・センターでオーダを受け店に伝えるシステムが導入されつつあると言う。英語を話す店員はコストが高いと言うことらしい。
管理職などの知的職業に就くヒスパニックはワシントン州ではほんの一握り、カリフフォルニア州でもそれ程見かけなかった。当時特に問題意識も持たず、彼らが何を考えているのか話し考える機会を持たなかったのは今思い出すと残念だ。
99年に家内とLAに旅行した時、ホテルの近くにヒスパニックが集中して住んでいる街があり夕方散歩したことがある。そこはジャパン・タウンより遥かに大規模で雑然とした街並みだった。全く違う世界に迷い込んだ気分になった。翌日日帰りで訪問した国境の向こう側の街ティワナと同じ雰囲気だった。
家内は身の危険を感じたと言うが、私は雑然とはしていても不安は感じなかった。その後、記憶では「世界一短いというケーブルカー」がある近くの一段と雑然とした市場に行き買い物をした。生鮮食品が豊富でヒスパニック以外の買い物客もいた気がする。多分彼らの中にも沢山不法移民がいたのだろうと思う。■