このところ騰勢が続いていた原油価格がやっと一服した。週明け15日のニューヨーク原油先物相場は、原油価格高騰による世界経済減速で需要が減退するとの観測から大幅続落、約1カ月ぶりの安値になり、その後引き続き低下17日NYMEX軽油はバレル68.69ドル、18日も69.45ドルと70ドルの大台を下回っている。
この原油高騰に加え米国貿易赤字の悪化とこのところの消費者物価上昇をにらんで再度FF金利上げの観測が出、ダウ平均が連日大幅に下落、本日前場の日経平均は遂に16000円台を割って推移している。
市場のメッセージは原油価格の高騰が長期的に世界経済へ悪い影響を与えるというものである。今まで原油高騰の悪影響が何度も報じられたが、世界経済は成長を続けてきた。しかし、さすがにこれ以上の価格高騰には耐えられないと言う見方である。
誰もが持つ疑問はこの先石油価格がどうなるかであろう。原油価格予測といえば必ずゴールドマン・サックスのアナリスト、アージュン・ムルティ氏の地政学リスクに重きを置いた過激な予測(105ドル)の可能性が引き合いに出される。一方 原油価格の上昇基調は終わり、今後は沈静化に向かうと言う説も依然聞かれる。ここで、原油価格を決めるメカニズムを整理しておきたい。
原油価格は需給で決まると言うのはその通りだが、実際にはニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場で短期の需給状況をにらんで価格決定に投機資金が大きな役割を果たしている。需給については従来中国の需要急成長と油田や製油所への投資不足と地政学リスクの文脈の中で語られていた。
しかし、ニューズウィーク最新号によると誰が主役か考え直したほうがよさそうである。世界の原油の70%はサウディアラビア、イラン、イラク、ロシア、ベネズエラから供給されている。これらの国の政権は不安定で効果が出るまでに5-10年もかかる先を見越した長期投資はしない。彼らは先のことを考える余裕が無い、基本的に現ナマが欲しい。
一方、需要の面では欧州と日本のガソリン消費は70年半ばから横這いだった。実は最大の世界のガソリン需要増は中国ではなく米国の大型自動車SUV増によるもので、米国の政治が需要増を招いた、排ガス規正法をザル法にしたためと報じている。
私はこのレポートを具体的な数字で確認していない。原油はガソリンだけではなく工業用まで含めれば中国ファクターの比率はもっと大きいはずだし、自動車需要が急増し2006年日本市場を上回るのは間違いない。しかし、需要増を中国だけに帰することは出来ない。
もう一つのアナリスト・レポート(モルガンスタンレーのフェルドマン氏)によると原油価格は現在の需要とタイムラグを持った過去の供給によって左右される、所謂ホッグサイクルに陥ったと分析している。言い換えると需要が右肩上がりで増えている時、価格は長期上昇モードに入ったと私には理解される。
一昨日、CNNのライブ・インタビューで環境活動家でもある俳優レッドフォード氏や、巨額の利益と退職金が非難されているシェブロン社CEOが出演して論陣を張ったが、議論はかみ合っているようには思えなかった。欠けているのは政治的リーダーシップであることが誰の目にも明らかだった。
中国は石油消費を抑制するほど成熟してないし国内事情が許さないはず、ブッシュ政権が政策転換する可能性も少ない、産油国は全体として反米にシフトしている。以上のファクターを考えると原油価格の上昇基調は継続する、価格上昇は宇宙船地球号にとって日本にとっても悪くないかもと思うが。■