支持率下落が止まらないオバマ
米国の中間選挙が来週に迫っている。念願だった医療保険制度改革法を成立させた3月23日がオバマ大統領のピークだった。それ以来予想以上に力強かった世界経済の回復基調に今年になって翳りが見えだし、私のレーダーから米国の政治事情が消えすっかり疎くなってしまった。
それ以降オバマ政権と民主党支持率は下落を続けた。ニュースの見出しをみて気にはなっていた。そこで「クローズアップ現代」などのテレビ報道などを見て、直近に報じられた選挙予測と分析記事などを拾い読みして、付け焼刃ながら論じてみたい。
オバマ政権が何故支持を失ったか付け焼刃ながら急ぎ調べた。情勢を報じる記事を見る限り現状は、昨年9月にオバマ大統領が支持率を下げた原因について私の推測(http://blog.goo.ne.jp/ikedaathome/d/20090907 )の延長線上にあるように見える。
そこのけ、ティーパーティーが通る
2009年との違いは草の根が「ティーパーティー」という全国的なうねりになり、予備選で共和党の大物候補を破り選挙運動に多大の影響を与えていることだ。彼らは反改革・反リベラリズム、極端に言えば代案を示さない何でも反対タイプと特徴付けられる。
ティーパーティーは何者か。ニューズウィーク誌によればテレビに登場するのはペイリン前アラスカ州知事など女性が象徴的だが、ティーパーティー運動の中心は中年白人男性だ。中流階級は、収めた税金が金持ちと不法移民などの下層階級に使われると反発し、強い「怒り」を抱いている。
背景には経済回復が滞り雇用回復が進まず、中産階級が傷んでいることだ。2009年の期待が何も実現されず、失望に変わった。だが、ティーパーティー運動は何でも反対する無知な人達で、これに迎合する政治は米国を貶めると心配する声も聞こえてくる。ペイリン女史が奇声を上げて演壇に登る様子を見ると顔をしかめたくなる。実際、具体的な政策となるとティーパーティーは無策に近いし、共和党は政策をどう妥協させるか扱いに困っている。
消えた若者、女性の反発
深刻なのは、それ以外の層でも民主党は支持を失いつつあることだ。NYタイムズ/CBSの最新調査(10/27)によれば伝統的基盤の女性・カソリック・貧困層・無党派の支持が失われたという。多分このトレンドを変える事が出来るのは若者世代だ。だが、オバマ大統領選出の原動力となった若者世代が高い失業率に悩み、中間選挙に消極的で投票率が10%低下すると予想されている。
こうなると、日本の状況に酷似してくるように私は感じる。1票の格差が何時までも是正されないのが最大の原因だが、日本は老人と地方に比べ若者世代の政治への影響力の無さは悲惨だ。小沢氏の政治と金問題で女性の支持を失い、無党派層の若者は雇用不安で保守化した。
日本の状況は決して良くないのだが、政府が徹底的に借金し子供世代に問題先送りしている。政府の借金の結果として選挙権のある中間層の痛み和らげているのが、日本にティーパーティーのような過激な政治運動が現れない理由かもしれないと思う。
ここに来て、米国はティーパーティーに代表される無知な中流層に政治を決めさせて良いか、選挙直前になって一部の米国民の意識の変化が伺える。直近のニューズウィーク誌の世論調査ではオバマ支持が54%に回復、民主党候補への投票が48%になったと報じている。同誌は同じ記事で、不在投票(early voting)で、民主党候補がリードと報じている。
大方の予測は民主党大敗
しかし、上記のNYタイムズのように主要なメディアは民主党の大敗を予測している。Pew Research Centerは不在投票が全投票数の4分の1にまで増えると予測しているが(日本でも同じ傾向がある)、そこでも民主党が共和党を上回っているという兆候はないと報じている。民主党支持回復を伝えるニューズウィーク誌だけ突出している。
だがそれは私の期待でもある。例によって根拠薄弱の大胆占いをすると、民主党は負けるにしても大敗しないと期待する。占いより甘い期待というところだ。それがアメリカ民主主義の守るべき線であり、アメリカの良心だから。
総合すると下院は与野党逆転し、上院も逆転すれすれの際どい戦いとなる。それが現実になったら、米国も日本と同じようにネジレ国会が生じる。米国の大統領は国民が選ぶシステムであり、中間選挙は過去2年間の大統領の信任投票を意味する。しかし、困難な議会運営になっても大統領の地位が揺るぐ訳ではない。そこが世論調査や首長選の度に首相の地位が云々される日本との違いだ。■