一路西に向かう
翌朝、高知市内観光はスキップして国道56号線を西に向かった。1時間余りで須崎市に到着し道の駅で一休みした。ここでも真空パックした鰹のたたきやカツブシ等の海産物の展示が店内を圧倒していた。軽く朝食を頂く積りだったがまだレストランが開いてなかった。
朝食代わりに柏餅を買って表に出ると、私の実家の近くにあるショッピング・モール名の入った見慣れた送迎バスが停車していた。運転手を見つけ聞くと農協の視察だという、口ぶりでは半分観光を兼ねている感じだった。なんだか怪しいな。山間部の道を通って来たそうで、我々の行く四万十方面とはルートが違い参考にならなかった。
暫く休み更に西に向かうと、途中四万十町とか黒潮町とか聞きなれない地名を通り過ぎた。四万十町は四万十市とは全く別の町と直前にわかり一気に通り過ぎた。四万十市も昔中村市と近郊村が合併して最近出来た町名だ。約2時間半かけて予定通り11時過ぎに四万十市に着いた。
関東風天然うなぎ料理、味は別次元
56号線に続く橋を渡る手前で右折して市街地に向かい、橋を渡り数分で天然うなぎの看板を掲げる一風亭という店を見つけ迷わず飛び込んだ。昼前なのでチラホラお客がいるという感じだった。半個室の畳部屋に通され、天然うなぎの蒲焼定食と普通のうな丼定食をオーダーし食べ比べてみた。というと格好良いが、天然うなぎは値段が倍近いので節約したのも本音。
養殖ものは食べ慣れた味だった。決して悪くない。家内に勧められて天然うなぎを一口食べて、予想と全く違う食感に意表を突かれた。ちょっと香ばしく凄く美味しいのだが、サクサクとした食感で天然うなぎ特有の歯応えというか「ねばり腰」感がない。子供時代実家の近くで獲った川うなぎと全く違う味だった。美味しいのだがこれは「ザ・天然うなぎ」じゃない。
勘定するとき感想を聞かれて答えると、初めてのお客に硬いとよく言われ蒸すようになったという。妥協したんだ。理由は分かったが、かといって関東風の蒲焼とも違う、チョット粉っぽい感じがした。文句言いたいかと聞かれれば、そうでもない。香ばしい味はとても美味しくユニークだった。お勧めかと聞かれれば、試しに一度食べてみたらと答える。値段に見合う味かは好みの問題だ。
風景と清流あっての沈下橋
店主に道順を聞き観光案内所に行った。市街地方面に右折しないで56号線を真っ直ぐ進み最初にここに来るべきだった。橋を渡ると左手に見える。ここで観光スポットなどの資料や地図を入手し食事どころなどの情報を聞くと、効率的に時間を使って四万十川を楽しめる。といっても田舎生活に馴染んだ私には四万十市を特別なところではない。時間があれば歴史に興味がある。
我々はもう余り時間が無いかったせいもある。家内が明日帰京する予定なので、夜暗くなって実家に戻る無理な日程はつらい。なので1時間で済ませる四万十観光コースを勧めて頂いた。勧められたのは、沈下橋を見ながら四万十川を北上し、江川崎から宇和島経由で大洲の実家に戻るところまで考えてくれたルートで、私達の都合にピッタリ合った。
教えられた通りもと来た道を戻り市街地を抜けて441号線を北上したが、誤って四万十川沿いの狭い県道340号線を走ることになった。この道も目的の佐田沈下橋に向かうが、センターラインもガードレールも無くすぐ左は崖だ。たまに対抗車とすれ違う時は道幅の広いところで待ち、曲がり角は対向車が来ないかヒヤヒヤした。
佐田沈下橋は私の実家の近くにもある低い橋と同じ特別珍しいものではなかった。雨が降り水位が上がると橋が水面下に沈むのが名前の謂れだ。パンフレットの写真のように、青空と紅葉と四万十の清流の組み合わせが一体となって素晴らしい景色になるのだろうが、生憎の曇天だった。
一路北に向かう
ここからは家内の運転に変わった。最初は彼女の運転と方向感覚は調子が出なかった。川沿いの県道から国道を走ったが、相変わらず狭くてガードレールの無い道が続く。彼女じゃなくても怖い。後ろからトラックが迫って来たので先に行かせ、後から付いて行くと気楽に運転し始めた。
対向車が見えにくい狭い道でも平均50-60km/hで走るトラック運転手に付いて行くだけで大変なのだが、そうしているうちに家内の運転も徐々にアグレッシブになった。直ぐ下に崖が見える道をぶっ飛ばす車の助手席に座る私のほうが少し怖くなった。
徐々に道幅が広くなり暫く走ると江川崎の手前数kmで、赤いフラッグが見え停車した。交通整理のおじさんが来て40分待てという。拡幅工事の間は交通遮断するのだという。観光案内所で言ってくれなかったと家内とぼやき合ったが、その間にも後ろに車が連なっていく。
だがお喋りは人を助ける。40分の前半は近所の住人と、後半は30年代に東京麹町に住んだという人と世間話をし、川面を飛び跳ねる鮎や河川敷の親子を眺めていると、あっという間に交通再開した。その後は順調に車が流れ四国半周旅行を終え無事実家に戻った。
蛇足
四万十でガソリンを給油した。四万十市は四国の端の田舎だが高知市内と変らない価格でリットル137円だった。県境を越え愛媛県に入ると144円だった。翌日家内を松山空港に送った時、都市部でも140円台だった。この差は何故?看板は石油メジャー名だが扱っている地場の業者が、地域独占的なコントロールして起こる価格の歪ではないかと推測する。■