一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

新聞小説

2022-04-17 23:34:59 | プライベート
新聞小説の歴史は古い。1870年代に現在の新聞のルーツが相次いで創刊されたとき、間を置かずして新聞小説が掲載された。
作家では夏目漱石が有名で、朝日新聞の社員でもあった漱石は、作品のほとんどを朝日新聞に発表した。
また芥川龍之介も、読売新聞に連載の実績があった。
松本清張はいろいろな雑誌に小説を発表しているが、「砂の器」は1960年から約1年間、読売新聞夕刊に連載された。
新聞小説ではないが、1957年に「小説新潮」に発表された「地方紙を買う女」は、新聞小説が物語の核になっている。
新聞小説は二段分のスペースしかないが、その日ごとに山場を作らなければならないから大変だ。しかも翌日に興味を持たせる終わり方をしなければならない。
このあたり、将棋の観戦記に似ている。観戦記も「ここで先手の次の手が好手だった」というように締めて、読者の興味を繋げるからだ。
話を戻し、漱石の構成がよく分かるのが、漱石最後の作品「それから」だ。これは88回連載の時点で漱石が逝去したため、未完で終わっている。そのため書籍化された際も章立てがされず、単純に88回に分けて掲載されている。よって、1回ごとの文章の起伏をそのまま味わうことができるのだ。
現在は新聞の活字が大型化されていて、それなのに新聞小説(観戦記の多くも)のスペースは変わっていないから、1回あたりの文量が大幅に減っている。これでは起伏を作るのが難しく、唐突に(つづく)になっている場合も少なくないのが惜しい。
現在は昔ほど、新聞小説に需要がないのかもしれない。
というところで、この15日から読売新聞夕刊で、柚月裕子さんの小説「風に立つ」がスタートした。
柚月裕子さんは知る人ぞ知る美人女流作家で、ああ昨今は「美人」という言葉が安売りされているが、裕子さんには自信を持って使ってよい。熟女マニアには堪らない気品と知性がある。
4年前の第30回将棋ペンクラブ大賞の文芸部門において、裕子さんは「盤上の向日葵」で優秀賞を受賞したが、同年秋の贈呈式に出席されたときは、裕子さんとツーショット写真を撮らんとする出席者がひきもきらなかった。男性が受賞したときは「記録写真」しか撮らないくせに、現金なものである。
12日朝刊の記事によると、いつもはハードな推理小説な執筆している裕子さんが、今回は生まれ故郷の盛岡を舞台にした「家族小説」を書く、という内容だった。裕子さんは山形県在住だが、盛岡生まれだったのだ。知らなかった。
私は15日、16日の掲載分を読んだが、その業界をよく取材されていて、上々の滑り出しだった。これから、帰宅後の夕刊が楽しみになった。
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