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アドラー心理学による勇気づけ一筋40年 「勇気の伝道師」   ヒューマン・ギルド岩井俊憲の公式ブログ



おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。

10月27日(水)、28日(木)の2日間、秩父観音霊場巡り20箇所に加え、三峯神社に行ってきました。
このことは、後日じっくり書くとして、飛び飛びになっていた「フロイト派から見たアドラー」の第11回目にします。

今まで『フロイト―視野の暗点』(ルイス・ブレガー著、後藤素規・弘田洋二監訳、大阪精神分析研究会訳、里文出版)をもとにフロイト派から見たアドラーについて計10回書いてきました。

フロイト―視野の暗点
ルイス ブレーガー
里文出版

前回は、アドラーのフロイト離れが理論面ばかりではない、として終わりました。
今回は、その続きです。

ルイス・ブレガーによれば、アドラーは、治療面でもフロイトの古典的な技法と違って、「人生計画」や「個人神話」、その人の個人的なスタイルや葛藤、そして「誤った」神経症的生き方について診断し、それからそれを伝えて理解や洞察を生み出すのが常だったように書いています。

その後に続いて、

それ(アドラーによる治療)は親切で穏やかなやり方で行われるのだが、しかし、結局のところ治療者を権威的な立場に置き、患者が誤ったやり方をしていることを教授し、それを諦める方法を提示し、「共同体感覚」に基づいた生活を送るようにさせていくというアプローチであった。

と書いていますが、この部分は、ブレガーの書き方に明らかな誤認があります。

その1つは「治療者を権威的な立場に置き」という部分で、2つめは「共同体感覚」です。

フロイトが寝椅子に患者を横たえて患者からは見えず、治療者からは患者が見えるスタイルで精神分析を行っていたのに対して、アドラーは、治療者と患者が高さも形も大きさも同じ椅子に向き合って座るやり方の短期的な治療を行っていました(『無意識の発見 下』、アンリ・エレンベルガー、弘文社)。
この座り方が権威的なわけがありません。

無意識の発見 下  力動精神医学発達史
アンリ・エレンベルガー
弘文堂


「共同体感覚」についてアドラーはこの時期に言及していません。詳しくは後に触れますが、さまざまな文献をチェックしても、フロイトとの決別以前に「共同体感覚」に触れている形跡がないのです。

ルイス・ブレガーは、フロイト派の末裔で、アドラーに比較的好意的な人ですが、アドラーを語るには、参考になる部分はありますが、やや精密さに欠けるようです。精神医学史家のアンリ・エレンベルガーにはとても及びません。


余談になりましたが、ここでのポイントは、理論面でフロイトと違っていただけでなく、技法面においてもアドラーがフロイトとは違った手法を用いていたことです。

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