おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
『フロイト―視野の暗点』(ルイス・ブレガー著、後藤素規・弘田洋二監訳、大阪精神分析研究会訳、里文出版)をもとにフロイト派から見たアドラーについての第9回目です。
『フロイト―視野の暗点』の第14章「アルフレッド・アドラー:最初の反論者」からブレガーのアドラー論を引用すると、ブレガーがかなりアドラーに好意的なことが伝わってきます。
ただし、それでいて、耳が痛いことも書いていてくれます。
そのまま引用してみましょう。
結局アドラーは講演で人気を博する哲学者であり、救済の使命を担った人間であった。しかし、彼は書くことには根気に乏しかった。彼の仕事は精緻さに欠けており、後の著作の多くは弟子たちが講演から編集したものである。彼が自分の考えを文章化しなかったことが、彼の理論よりもフロイトのものが大きな影響力を持ったことの一因である。
今日アドラーを読んでみると、後の精神分析の動向を予告するような数多くの貴重な概念をそこに見出すことができる。しかしそれは、話し言葉でしか伝えることのできないような形で提示されている。その概念は大雑把に述べられ、十分に展開されておらず。精密さや深みに欠けている。アドラーはその多くをより実証的に提示することに失敗している。
『フロイト―視野の暗点』の監訳者の1人の後藤さんは、この本を私の贈呈するためヒューマン・ギルドにやって来たとき、こう尋ねました。
「アドラーの新しい本ある?」
私は岸見一郎さんによって訳されているアドラーの本のいくつかを書棚から出して、後藤さんにお見せしました。
それらの多くは、別の出版社から出ていたものです。
「アドラーの1930年代の本は、ほとんど書いていある内容が一緒だものね」
後藤さんは、アドラーの本ををしっかりと読み解いていました。
結局、後藤さんには、彼が読んだことがない、私が訳した『アドラーのケース・セミナー―ライフ・パターンの心理学 』(A.アドラー著、一光社、2,850円+税)を贈呈しました。
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アドラーのケース・セミナー―ライフ・パターンの心理学 (Adlerian Books) アルフレッド アドラー 一光社
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それにしても、アドラーが自分の本を後世にしっかり残るように、もっともっと体系化して書いていてくれていたらと、ちょっぴり恨み節が出てしまう私でした。
まだまだ続きます。