ヒューマン・ギルドでは、2011年のスローガンを
職場に活力、家庭に愛、自分に勇気
として、アドラー心理学にもとづき
それぞれの分野に効果的な「勇気づけ」を行います。
おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
『仏教とアドラー心理学―自我から覚りへ』(岡野 守也著、佼成出版社、2,300円+税)をあらためて紹介します。
「あらためて」と書いた理由は、ヒューマン・ギルドのニュースレターの12月号に 深沢孝之さん(臨床心理士、ヒューマン・ギルド会員)が、実に要領よく書いてくれているので、私が書くと、「今さら」の感を与えてしまいます。
しかし、著者の岡野守也さん(サングラハ心理教育研究所 主幹)の古い友人で、この本の原稿段階でアドラー心理学の部分に目を通させていただいた立場の人間から、どうしても書評を書いておきたいと思いました。
アドラーの「共同体感覚」というコンセプトと仏教の「縁起の理法」というコンセプトに両者の本質的な接点あるいは結合点がある(まえがき)
と捉える岡野さんは、この本の全体の1/3に相当する第1部を「アドラー心理学と健全な自我の確立」とし、アドラーの生涯から、アドラーの個人心理学、アドラー心理学の主軸理論を原点に忠実に書いています。
岡野さんの言うアドラー心理学と仏教の「接点」あるいは「結合点」は、次のとおりです(第1部の「まとめ」)。
1.まず、人間にはきわめて強い自我確立への衝動があることを、アドラー心理学では「優越性の努力」ほかの言葉で表現しており、唯識では「マナ識」とその「根本煩悩」で表現している。両者の洞察は、重なる部分が大きい。
2.人間がきわめて主体的・主観的存在であるという点について、両者の洞察は非常によく一致している(仮想と唯識)。
3.主観的であるために、しばしば誤った人生観・世界観を持ってしまうが、にもかかわらず、しばしば自分の誤りに気づいていない(私的論理と無明)、そのために自分をも他者をも幸福にしない不毛な生き方に陥ってしまう(不適切なライフスタイルと煩悩)という洞察も一致している。
4.自己と他者、自己と世界のつながりという普遍的な事実・真理に気づいた人に教え導かれることによって、誤りを訂正することが可能であり(共通感覚と覚り)、そして気づくことによって、自他ともに調和した生き方ができるようになる(共同体感覚と自利利他・慈悲)という点も相似形(パラレル)である。
岡野さんがアドラー心理学でもっとも力点を置いているのは「共同体感覚」です。
第2部の「仏教とアドラー心理学」の部分については、詳しく書きませんが、岡野さんらしく、難しい仏教の理論を釈尊の解いた真理から唯識まで実に平易に解き明かしてくれます。
アドラー心理学をすこしかじった人が仏教のコンセプトをもとに比較対照することで、よりアドラー心理学の理解が深まるのが『仏教とアドラー心理学―自我から覚りへ』だと言っていいでしょう。
副産物として、仏教そのものの理解も深まります。
(注)ヒューマン・ギルドに在庫しています。ご注文ください。
◎深沢孝之さんが書いたこの本の書評
山梨臨床心理と武術の研究所
2010年11月4日 「仏教とアドラー心理学」
http://taichi-psycho.cocolog-nifty.com/adler/2010/11/post-ebed.html
<お目休めコーナー> 通りがかりに