○高知市立自由民権記念館 常設展示
http://www.minken.city.kochi.kochi.jp/
四国旅行2日目。金毘羅さんの観光を終え、土讃線で再び高知駅に戻った。帰りの飛行機まで、まだ2時間ほど、市内観光の余裕がある。私はすぐに路面電車に乗って、自由民権記念館に向かった。高知に行ったら、ぜひ訪ねてみたいと思っていたのが、高知城でも、はりまや橋でもなく、この記念館だったのである。こんな観光客は、めったにいないと思うけど。
「明治初頭(近代の始まり)」の面白さに、突如として目覚めたのは数年前。明治10年代に日本の社会を席巻した「自由民権運動」の意義と魅力については、坂野潤治先生の本や色川大吉さんの本から学んだ。むかしは、幕末の動乱に対して、新しい体制が出来上がったのが明治だと思っていたのだが、むしろ真の変革はこの時期に起こるのだ。幕末のリーダーたちのように、ひとりふたりで日本の行方を決した大立者はいない(少ない)けれど、実に多様な、地域に根ざした運動家・思想家が現れる。また、この「自由民権運動」は、近代日本のさまざまな政治運動に地下水脈のように流れ込んでいく。一見、何の関係もないように思われる、昭和初期の国家主義、アジア主義との関連性を指摘していたのは、坂野潤治先生だったと思う。
だから、展示室で、中江兆民、植木枝盛らに混じって、頭山満の名前を見つけたときも、あまり驚かなかった。右翼/左翼なんて、政治思想の初学者のために用意された、便宜的な分類に過ぎないのだと思う。
展示は、写真・説明パネルや複製物で構成させているところがほとんど。しかし、非常に分かりやすくて面白い。少量であるが、当時の図書・雑誌・新聞等も展示されている。「近森文庫」というラベルをいくつか見たが、高知市出身の元軍人で近代文学の愛好者であった近森重治氏の蔵書だそうだ(国文学研究資料館で画像データベース化されている)。
高知では「公共図書館」を「市民図書館」と呼んでいるらしい。公共図書館の事情には疎いので知らなかったが、調べてみたら「○○市立図書館」ではなくて「○○市民図書館」と呼んでいるところは、けっこう多い。でも、高知の場合、特に自由民権運動の伝統にのっとって、「市民」という言葉を用いているような気がしてならない。
図書や雑誌のほかでは、「自由」「板垣」の文字の入った泥メンコ、「自由万歳」の文字の入った大徳利など。そう、「自由」には、憧れの高級ブランドのイメージがあったのだ。ある日の新聞広告欄には、歯磨き粉の「自由散」、鶏肉ケレー(カレー)「自由ソップ」、日本酒「自由誉」などの文字が躍っている。
女性の政治参加運動が、意外と早くから起きていることには驚いた。1880(明治13)年、高知の上町町会では、女性に選挙権・被選挙権が与えられた(のち撤回)。矢がすり柄の着物を着た女性が、緋もうせんの演台に向かっている「婦人演説」という錦絵は、岸田俊子(中島湘煙)を描いたものだという。ちょっと艶めかしい美人だと思った。
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四国旅行2日目。金毘羅さんの観光を終え、土讃線で再び高知駅に戻った。帰りの飛行機まで、まだ2時間ほど、市内観光の余裕がある。私はすぐに路面電車に乗って、自由民権記念館に向かった。高知に行ったら、ぜひ訪ねてみたいと思っていたのが、高知城でも、はりまや橋でもなく、この記念館だったのである。こんな観光客は、めったにいないと思うけど。
「明治初頭(近代の始まり)」の面白さに、突如として目覚めたのは数年前。明治10年代に日本の社会を席巻した「自由民権運動」の意義と魅力については、坂野潤治先生の本や色川大吉さんの本から学んだ。むかしは、幕末の動乱に対して、新しい体制が出来上がったのが明治だと思っていたのだが、むしろ真の変革はこの時期に起こるのだ。幕末のリーダーたちのように、ひとりふたりで日本の行方を決した大立者はいない(少ない)けれど、実に多様な、地域に根ざした運動家・思想家が現れる。また、この「自由民権運動」は、近代日本のさまざまな政治運動に地下水脈のように流れ込んでいく。一見、何の関係もないように思われる、昭和初期の国家主義、アジア主義との関連性を指摘していたのは、坂野潤治先生だったと思う。
だから、展示室で、中江兆民、植木枝盛らに混じって、頭山満の名前を見つけたときも、あまり驚かなかった。右翼/左翼なんて、政治思想の初学者のために用意された、便宜的な分類に過ぎないのだと思う。
展示は、写真・説明パネルや複製物で構成させているところがほとんど。しかし、非常に分かりやすくて面白い。少量であるが、当時の図書・雑誌・新聞等も展示されている。「近森文庫」というラベルをいくつか見たが、高知市出身の元軍人で近代文学の愛好者であった近森重治氏の蔵書だそうだ(国文学研究資料館で画像データベース化されている)。
高知では「公共図書館」を「市民図書館」と呼んでいるらしい。公共図書館の事情には疎いので知らなかったが、調べてみたら「○○市立図書館」ではなくて「○○市民図書館」と呼んでいるところは、けっこう多い。でも、高知の場合、特に自由民権運動の伝統にのっとって、「市民」という言葉を用いているような気がしてならない。
図書や雑誌のほかでは、「自由」「板垣」の文字の入った泥メンコ、「自由万歳」の文字の入った大徳利など。そう、「自由」には、憧れの高級ブランドのイメージがあったのだ。ある日の新聞広告欄には、歯磨き粉の「自由散」、鶏肉ケレー(カレー)「自由ソップ」、日本酒「自由誉」などの文字が躍っている。
女性の政治参加運動が、意外と早くから起きていることには驚いた。1880(明治13)年、高知の上町町会では、女性に選挙権・被選挙権が与えられた(のち撤回)。矢がすり柄の着物を着た女性が、緋もうせんの演台に向かっている「婦人演説」という錦絵は、岸田俊子(中島湘煙)を描いたものだという。ちょっと艶めかしい美人だと思った。