見もの・読みもの日記

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恩人たちの晩年/お雇い外国人(梅溪昇)

2007-07-29 10:50:52 | 読んだもの(書籍)
○梅溪昇『お雇い外国人:明治日本の脇役たち』(講談社学術文庫) 講談社 2007.2

 幕末から明治初頭にかけて、日本は多数の欧米外国人に助けられて、猛スピードで近代化を成し遂げた。キリスト教の伝道のため、志願して来日した宣教師もあったが、多くは、幕末期には幕府および有力諸藩、明治期には新政府によって招聘され、雇用された人々であった。

 本書は、総数1800名余り(221頁、『日本帝国統計年鑑』による著者推計)といわれるお雇い外国人の中から、フルベッキ、ボアソナード、ロエステル、ジュ・ブスケ、ドゥグラス、デニスン、キンドル、シャンド、ワグネル、ダイエル、モルレー、モース、フェノロサら、各分野で功績を残した人々を個別に紹介し、さらにモースやベルツの日記を手がかりに、彼らの生活と思想を詳述している。

 私は、大学・工部大学校の教師たちには馴染みがあるが、そうでない分野(外交・軍事・金融など)のお雇い外国人には、知らないことが多くて興味深かった。また、馴染みの人々についても、フルベッキが徴兵制を主張していたこと、ボアソナードが拷問廃止に強い熱意を払ったことなど、知らないエピソードは多かった。内政ばかりではなく、不平等条約の改正、日露交渉、三国干渉の処理など、日本の「国益」に関する最も根幹的な部分にも、外務省顧問デニソンをはじめ、お雇い外国人の功があったということも初めて認識した(一般の政治外交史では、あまり語られていないが)。

 気になるのは、彼らの晩年が必ずしも幸せに見えないことである。フルベッキが日本帰化の希望を叶えられず、経済的にも不遇のうちに世を去ったことは知っていたが、ボアソナードは起草した旧民法が不採用となり、老齢70歳で「しょんぼりと故国へ帰って行った」という。

 その根底にあるのは、日本人の外国文明に対する態度であるように思えてならない。確かに、当時、欧米諸国はアジア地域を侵略と収奪の対象と見なしていた。それに対抗するためには、とにかく早急に近代国の対面を取り繕わなければならなかった。

 しかし、ここに挙がっている多くの外国人は、真に日本人の「友」となろうとした人々だった。にもかかわらず、日本国は、当面、必要と思われる知識技術を学んでしまい、明治10年代以降、日本人の後継者が育ってくると、彼ら外国人を「使い捨て」にしたのである。ベルツの日記には、日本人が西洋の学問の結実のみを取ろうとし、収穫をもたらす「根元の精神」を学ぼうとしない、浅薄な態度に対する不満が述べられている。
コメント (1)
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