付け焼き刃の覚え書き

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「團十郎切腹事件~中村雅楽探偵全集1」 戸板康二

2008-01-04 | ミステリー・推理小説
 昭和の中頃。ラジオからテレビに世の中が移り変わりつつあった時代。
 文化部で演劇担当している竹野記者は、舞台上の殺人、役者の誘拐、仏像の盗難と芸能界や歌舞伎界にかかわる難事件や怪事件にたびたび遭遇することになる。そんなとき事件の謎解きをしてしまうのは、いつしか知り合うようになっていた警視庁の江川刑事ではなく、老歌舞伎役者である中村雅楽だった。
 わずかな手がかりから真相に到達する老優雅楽の名推理と歌舞伎にかかわるエピソードを存分に楽しめる短編集の第一弾。

 中には殺人事件どころか事件にすらならない物語が幾つか収まっているのもご愛敬。面白かったのはコマーシャル・タレントが死んだ「死んでもCM」、毎夜居酒屋に訪ねてくる正体不明の「ほくろの男」の話、そしてジョセフィン・ティの『時の娘』や高木彬光の『成吉思汗の秘密』などを彷彿とさせるベッド・ディテクティヴものの「團十郎切腹事件」といったところかな。
 かなり分厚い文庫なのだけれど、するすると読めてしまいます。さらに通常の後書きの他にも江戸川乱歩や作者自身による作品へのコメントも収録されていて2度おいしい全集になっていました。

【歌舞伎】【ラジオ】【テレビ】【日下三蔵】
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