付け焼き刃の覚え書き

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「チャリオンの影」 ロイス・マクマスター・ビジョルド

2008-01-19 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人には常に選択肢が与えられます。たとえ耐えられるかどうかを選ぶ余地がなくとも、いかにして耐えるかは本人の選択に委ねられるのです」
 特使ルーペ・ディ・カザリル荘候の言葉。

 父神、母神、御子神、姫神、庶子神の五柱の神々を崇める異世界を舞台にした五神教シリーズの1作目。

 怪しげな放浪者同然の姿で城下町にたどり着いた男こそ、かつての騎士隊長ルーペ・ディ・カザリル荘候だった。隣国ロクナルとの戦争の際、不可解な停戦と身代金の未払によってガレー船奴隷として売られ、艱難辛苦を乗りこえて必死の思いで祖国チャリオンへと辿り着いたのだ。
 街についても脱走兵ではないかと疑われて宿を落ち着けることすらできないカザリルだったが、彼が少年時代に小姓として仕えていたバオシア藩妃は思いの外彼を暖かく出迎え、孫娘イセーレの教育係兼家令の役を任せた。やっとのことで安住の地を得たカザリルは、鼻息の荒いイセーレの教育係の務めを周囲の期待以上にこなしていく。
 だが、やがてイセーレと弟テイデスは腹違いの兄、チャリオン国主オリコに招かれ宮廷に出仕することになるが、宮廷はカザリルを陥れた宰相一派が支配していた……。

 最初は老人呼ばわりされる放浪者だかといった風体の主人公が実は35歳と知ってびっくり。苦労したんだなあ……。何度も死んでしまうし……。
 ビジョルドお得意の、家柄も能力も劣っているわけじゃないんだけれど自他共に認めるドン底状態の主人公が、運に助けられて本来の力をふるうチャンスを手に入れ、それを活かして一気に復活、成功への階段を進むというパターン。これで主人公が自信満々なタイプだとイヤミになりそうなものだけれど、なんというか自分を粗野で不器用で卑俗でおぞましい雄でしかないのだと過大評価しない控えめな人物なので、「うんうん、よかったね」と応援できます。
 もう1人の主人公、じゃじゃ馬イセーレもなかなか良い感じな少女です。先が楽しみ。

【神】【宮廷劇】【内乱】
コメント
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