付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「「爆風」ガ島攻防戦!~紅蓮の翼」 内田弘樹

2008-01-12 | 戦記・戦史・軍事
 架空の戦闘攻撃機「爆風」がいかに開発され、戦線に投入され、いかに使われていったかを連作形式に語り続ける仮想戦記の第2弾。こういう表記だけれど、まあ『紅蓮の翼(2)』だよね。
 今回はガダルカナル島の攻防を巡る4話が収録されているけれど、プロローグもそれなりのボリュームと起承転結があるので5話と考えたいし、いやそれなら枚数も少なく内容も次の戦いのための風景をスケッチしているだけの4話はエピローグとするべきなんじゃないかとか、あれこれ余計なことを思ったり。まあ、それぞれが独立した1話ではなく、連続した「第×回」の感覚かな。そう考えるとプロローグは他の話に直接関連していないから、プロローグとしか置けないか……。
 内容的には初陣で地獄を見た新米士官を描いた「プロローグ」、爆風夜襲隊を独自に編成した美濃部中尉が噴進弾を手に入れる「切り札は己のみ」、爆風夜襲隊がサヴォ島沖の乱戦に突入する「巨竜は闇に消ゆ」、ニューカレドニア沖の奇妙なECM戦の顛末を描いた「遠すぎた楽園」、新たな戦いの準備が進む中でおこなわれる模擬空戦の「眼下の敵」。連続した話なので、特にどの話が良いということもなく、ただあちこちでそれぞれの思惑で進む改良や編成がどういう形で結実するか、徒花と散るかを見守る面白さがあります。もう少し爆風視点で話が進んでもいいかなとは思います。なんというか戦艦群の叩き合いの方が面白くないですか。
 しかしまったく本編とは関係ない、おかしな宗教が流行っているらしいボナペ島……って、どんなネタを仕込んでるんですかっ!? 考えすぎ?

【架空戦記】【爆風】【ポナペ島経典】
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「人類は衰退しました」 田中ロミオ

2008-01-12 | 破滅SF・侵略・新世界
 高度に発達した科学は魔法と見分けがつかないそうですが、冗談とも区別できないことに気付きましたよ。

 作者が田中ロミオで、タイトルが人類の衰退ってことで、なんとなく敬遠してました。ごめんなさい。なんとなく陰鬱で難解ってイメージがあったんです。
 でも周囲の評判の良さに読んでみてびっくり。なんかフルーツジュースみたいにごくごく喉を通っていくではありませんか。もちろん、よく考えてみればすごく怖い世界なのですが、きれいにオブラートで包んでごまかしてます。

 人類の黄昏……というか、人口が減少して国家も崩壊し、人間が種としても文明としても回復のつかないところまで衰退してしまって数世紀。人間はほそぼそともっぱら自給自足と物々交換で暮らすようになっていました。もはや「人類」は「人間」を意味しなくなっていたのです。
 地球最後の教育機関の最期の卒業生となった“わたし”は故郷へ帰ってきました。祖父の跡を継いで国連調停官となるためです。人見知りが激しくて一見「深窓の令嬢」だけれど、根は図太い“わたし”は、楽で知的な要職に就きたかったのです。
 そして調停官とは、今や「人類」となった妖精さんたちと「旧人類」である人間との間におけるさまざまな問題を解決するのが仕事なのです。しかし、既に人間の方が数も少なく老境の域に達している上に、妖精さんたちは昨日のこともよく覚えていないくらい時間の感覚が違うので、ここ数十年は事件らしい事件は起こっていないというのですが、それでは要職になりません……。

 図太くて脳天気で人見知りでお菓子作りが巧い主人公が、正体不明で、最盛期の人類すら遙かに凌駕する力を持っているはずの妖精さんたちと繰り広げる日々の記録です。妖精さんは「妖精」ではなく「妖精さん」という言葉のイメージままですが、そこにこういうタイプの主人公を据えた勝利ですかねえ。タイプは違うけれど、なんとなく「食卓にビールを」を思い出しましたよ。

【人類は衰退しました】【田中ロミオ】【ガガガ文庫】【人類の黄昏】【妖精さん】【ペーパークラフト】【地球文化大好き宇宙人】
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