
夏野が誰かに見られていると言い出すようになった、ある日、留守中に何者かが夏野の部屋に侵入したらしいことに春海和人が気がついた。今はミニチュアダックスフンドになってしまった和人にとっては、10万冊近い蔵書に読んでも買ってもいない本が1冊紛れ込んでも見つけるのは容易だ。
しかし施錠されたマンションの一室。警備会社のセキュリティも機能している状況で、たかだか1時間ほどの買い物の間に誰がどうやって侵入し、何のためにこの本を置いていったのか……?
漫才コンビを組んでM1グランプリに出場したこともあるという著者コンビの作品だけあって(雑誌ダ・ヴィンチに書いてあった)、ストーリーがどうこう動いているときより、キャラクター同士がかみ合わない会話をしているときが一番活き活きしていて面白いです。
2巻ではドM編集者やら巨大包丁を振り回す妹やらが登場しての刃物対決で、3巻はどうなることかと心配しましたが、なんとかドSの執筆狂作家と犬に転生した読書狂少年の毒舌と刃物の応酬というラインを堅持していて一安心。壮大なスケールのストーリーとか、複雑な人間関係の生み出す愛憎なんていらないので、このままマンションと本屋の往復で話が進むと良いなあ。
人気覆面作家と新進気鋭の覆面作家の対決も、「作家なら作品で勝負」という王道の展開で勝負。もちろんトチ狂った作品勝負で、『ミスター味っ子』の対決が料理勝負といえるなら、これも執筆勝負といえるだろう程度のことなんですが、彼女たちなら読子・リードマンとも渡り合えるような気がしてきました。
【犬とハサミは使いよう】【更伊俊介】【鍋島テツヒロ】【ミステリ系不条理コメディ】【忘れられた約束】【図書室】【サブリミナル効果】【秋山忍】