付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「妖精作戦」 笹本祐一

2011-09-19 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 ジュブナイル小説と呼ばれていたものが、いつの間にかヤングアダルトとなり、ライトノベルといわれるようになりました。中身は変わらず、器だけが変わったようなものですが、その変遷を如実に理解させる作品があります。
 笹本祐一の『妖精作戦』。デビュー作なだけに荒削りな話だけれど、個人的には『エリアル』より好き。高校生が主役で、同級生の超能力美少女を護って地球防衛している秘密組織と戦う話です。

 一番左、昭和59年初版時のイラストは挿絵画家の若菜等。いかにも表紙絵、挿絵でございといった風格の作品です。買ったときは、すでにその古さに手を出すのがためらわれたけど、今となってはかえって味があるかも。昔のジュブナイルと呼ばれた小説は、みんなこういう装幀でした。

 真ん中、昭和62年12版時のイラストは、アニメーターの平野俊弘。言っちゃ悪いが、いかにも人気アニメーターの余技のバイトでございと、マジックペンでさらさらと描かれたイメージボードともキャラクター設定ともいえないイラストがしょぼい。でもこういう小説にアニメーターやマンガ家のイラストをつけるのが流行し始めた当時はコレで通用してました。イラストが挿絵であることを目的とせず、そのイラスト担当者の作品発表の場に過ぎなかったのです(今でも、カットとしか呼べないイラストは多いけど)。
 そして最後、平成6年の新装版の担当は、SFマンガ家の御米椎。いかにもマンガでございのイラストでありながら、全編緻密に構成されたイラストは文章の魅力を最大限に活かしています。絵柄は今風でありながら、昔の挿絵が果たしていた「小説の一場面を描き出して読者がイメージを伝える一助とする」という役割をしっかり果たしています。

 中高生向けのイラスト重視の小説を、ときにジュブナイルと呼び、ヤングアダルトといい、ライトノベルと称します。うまくいえないけど、その違いは、こういうことじゃないのかなあと思うのです。(2007-08-29)

 妖精作戦、4度の登場!
 今回は創元推理文庫に移籍して、D.Kのイラストで、有川浩の解説付き。1つの作品が、こんな形でイラストが移り変わるのを見ていると、ラノベのイラストの変遷が見て取れますね。

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「美少女を嫌いなこれだけの理由」 遠藤浅蜊

2011-09-19 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「僕の知る全ての物語において、恋する美少女は、理不尽で、無敵だ」
 サポート・マネージャー、亜麻野雄介の言葉。

 「美少女」とは人間によく似た別の種族である。
 人間の可愛い女の子とよく似た容姿だが、人間と違って生まれてから死ぬまでその姿であり、老若男女の区別もちゃんとある。
 亜麻野雄介は民営化された、美少女管理団体のサポート・マネージャーとして地方配属された2名の美少女を担当することになったのだが……。

 ぶっ飛んだキャラ設定だけで最後まで突っ走った、いかにもライトノベル的な1冊。栗山千秋のイチオシというのも納得かな。「五郎八」と書いてイロハと読ませるけれど中身は「ゴロハチ」なおっとり美少女とか、サブリナだけれど実態は「サブ」さんな金髪ツインテールとか。
 年金もらっているような爺さんでも、筋肉フェチの40親父でも、見た目は美少女……という設定は、吾妻ひでおの『ふたりと5人』を先駆とするし、それ以外でも単発キャラで「見た目は美少女、でも老婆だったり男だったり」という話はあったけれど、それを種族としてしまったところは慧眼。これに第一属性、第二属性と、RPG的に個性付けしたのもわかりやすい。
 感想としては、役所の内輪争いはエグいなーといったところか。

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