
プロレスラー、守口廃尊の言葉。天才と凡人の違いを思い知ってなお、同じ土俵で戦い続けるしかない人間の業。
鳴木戸定はほとんど感情を表に出さない子供だった。
そんな彼女が唯一声をあげて大笑いしたのが「福笑い」だった。それ以後、ふくわらいが彼女の趣味であり、彼女の一部となった。幼い彼女は、紀行作家であり、彼女と同じく「ロボットみたいに感情の無い男」と周囲から言われていた父親に連れられて世界中を旅していた。その特異な体験が、彼女と世間の間に見えない壁を作ったのだ。
そして、今の定は有能な書籍編集者として活躍していたが、周囲にとってはやはりおかしな、つきあいにくい人物なのだった……。
白杖を振り回すのは視力に障害のある人が助け求めている合図、ただし現時点では福岡ローカルなルール……と。
いろいろ紆余曲折あるけれど、つまりは「本当の自分、本当のあなたとはなんであるか」という話で、帯のあおり文句は「本年度最大級の感動小説」とあるけれど、『犬とハサミは使いよう』を編集サイドから見たような話になってます。
一般的な常識人としてはひじょーーーーにつきあいづらい奇癖のある作家陣を、なだめすかし励ましおだて助言して作品を書かせる編集者の自己確認の物語なのだけれど、端から見ればその編集者が作家以上の奇人なのです。
【ふくわらい】【西加奈子】【朝日新聞出版】【人肉食】【雨乞い】【プロレス】【マルキ・ド・サド】【恋した女のパワー】