付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ばけもの好む中将」 瀬川貴次

2013-05-14 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 家柄はそんなに悪くないし生真面目で、武芸もそれなりにこなすけれど、なにか取り柄というほどのものがあるわけではない。あえていうなら芸事はダメダメ。それが自他共に認める右兵衛佐宗孝の評価だった。ひとことでいえば「平凡」。
 そんな宗孝だが、最近、今をときめく左近中将の宣能によく出くわす。この中将、名門の家柄で見栄え良し才ありなのだけれど、趣味が少々特殊であった。
「われらはともに闇に挑む同志なのだよ」
「危険の中にこそ生きている実感があるのだとも」
「われらがやらずに誰がやる?」
 そしてそのたびに宗孝は、このバケモノ好きの貴公子から怪異を愛でようと誘われては、あちらこちらへと引きずられていくのだが……。

 平安時代を舞台に、本物の怪異を見てやろうとあちらこちらへ出向く貴族の道楽につきあわされる、要領の悪い生真面目男の冒険譚。
 自分の関心事についてだけはむやみやたらに優秀で好奇心旺盛な男と、それにつき合わされる愚直な男の冒険譚というと、ホームズ&ワトソン以来の黄金パターンっぽいですが、周囲の雰囲気や登場人物の心理はまさに平安時代。会話はなんとなく現代的だけれど、今風すぎて興ざめしないぎりぎりのところの読みやすさです。

「結果はどうでもいい。そのとき、何をどうしようとしたかのほうが大事だ」
 左近中将の宣能は、そう宗孝を評価する。

 少女向けにライトな陰陽師の小説を書いている作者ですが、別名義でちょっとダークなホラーとか悪趣味な妖怪譚とかも書いていて、それがちょうどうまい感じに混ざったような気がします。十人十色な宗孝の12人の姉もまだまだ出番のない人がいますので、続きが出ると良いなと思います(マルチアーノ12姉妹みたいなのではないと思う)。

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コメント (2)
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「“朝顔”~ヒカルが地球にいたころ……(6)」 野村美月

2013-05-14 | 学園小説(ミステリ)
「今は答えがわからなくて、迷っても仕方が無い。急ぐことはないの。一歩一歩、しっかりと足を踏み出して前へ進んでゆけば、旅のどこかで、あなたが正解と思えるものを見つけることができるかもしれないわ」
 人生という旅の答えは、自分で探すしか無いと、朝顔姫こと五ノ宮織女の言葉。

 次に是光がヒカルに代わって約束を果たして欲しいと告げられた女性は、是光とは犬猿の仲で生徒会長の斎賀朝衣。
 案の定、是光と朝衣は喧嘩を繰り返すことになるが、それなのに何故か二人が恋仲だとという噂になり、朝衣はますますいきり立った……。

 帝門家の権力争いに積極的に動き出した朝衣の物語で、是光がヤンキーキングからハーレムキングにランクアップする回、というか、あの完全武装の“朝ちゃん”がデレるエピソードです。これがあからさまに掌返しになると興ざめですが、そこは鉄壁のガードな人ですから、この微妙な加減が愉しい。
 さて、対立候補の一朱のイヤらしさは筋金入りです。とっとと退場して欲しいところですが、こういうキャラほど長居するものなんです。

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