付け焼き刃の覚え書き

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「異世界魔法は遅れてる!(1)」 樋辻臥命

2015-06-20 | 異世界転移・召喚
 昔、「ネットゲーム'88」というライブ性の強いゲームがありまして、そこで魔物召喚の呪文を手に入れた!これで次の戦いは勝てる!と喜んだ人たちがいたのですが、実は召喚と従属は別の呪文で、おかげで件の戦闘時には敵も味方も全滅という酷い結果で……という昔話を書籍化にあたっての書き足し部分を読んでいて思い出してしまいました。単なる余談ですが。

 3人の高校生、水明、黎二、瑞樹は学校帰りに転移魔法陣に巻き込まれ、異世界に連れて行かれてしまった。魔王軍の侵攻に苦しむ異世界が黎二を勇者として召喚したのに水明と瑞樹が巻き込まれてしまったらしい。
 無理矢理連れてこられただけで、縁も義理もないけれど、苦しむ人々がいて自分の力で彼らを助けられるのならと魔王討伐を引き受ける黎二と、怖いけれども彼について行くことを覚悟する瑞樹。しかし水明だけは魔王退治に関わることを断固拒否する。戦いは数だよ、兄貴。魔王の何百万という軍勢の中に勇者を突っ込ませてなんとかしようなんて正気の沙汰でない。
 しかし黎二や瑞樹は知るよしもなかったけれど、現代日本にも魔法や化物は存在していて、高校生・八鍵水明はこの異世界よりも理論でも技術でも遙かに先行している、現代日本の魔術師だった。
 彼の視点では、この異世界の魔法は遅れていた……。

「言ったろう? 俺は神秘学者だと。こっちの世界の魔法使いとやらは呪文を唱えて強い魔法を会得するのが目的なのかもしれないが、俺たちは違う。向こうの世界の魔術師はこの世のあらゆる理を解き明かして、自らを万能にするのが目的だ」
 魔術師スイメイ・ヤカギは、自分たちの矜持を誇った。

 ウェブ版にエピソードをあれこれ書き足しして勇者一行の旅立ちまで。一部例外は別として、登場人物が基本的に莫迦でも愚劣でもなく、それでも想定外の事態に右往左往する話は面白いです。
 イラストは微妙に物語の山場からズレたシーンしか描かれていないのが歯がゆいですね。本としてはそこが残念。

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コメント
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