付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「武姫の後宮物語」 筧千里

2016-09-17 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「なるほど……」
 彼女がそう重々しく呟いて肯く姿は思慮深く見えないこともないが、そういうときのヘレナは実は何も考えていないのだ。

 ヘレナは帝国宰相であるアントン・レイルノート侯爵の長女であるが、世間的には嫁き遅れとされる28歳の貴族令嬢。しかし彼女の本質は、ガングレイヴ帝国八大将軍が一人『赤虎将』の副官であり、常に前線にて八面六臂の活躍をし、次期将軍候補とさえ呼ばれる武人である。
 ところがそんなヘレナに、即位したばかりの皇帝の抱える後宮に入るよう命令書が届けられる。『未婚の皇帝が即位した際、伯爵位以上の貴族家は一年以内に未婚の娘を後宮に入れなければならない』という二代目皇帝の独断で専横した法がまだ活きていたのだ。
 かくして最前線から引っこ抜かれた武姫ヘレナは、『宰相派』と『相国派』の権力抗争が繰り広げられ、若き皇帝の寵姫の座を巡って女の欲望が渦巻く後宮に放り込まれることになるのだが、何分にも彼女は剣技と肉体の鍛錬にしか興味の無い脳筋だった……。

 常在戦場で15歳のときから鍛錬一筋だった侯爵令嬢(笑)が、後宮をブートキャンプに塗り替えていく物語。最初「武姫」を「もののふひめ」と読んでましたが「ぶき」が正しいようです。分量的には少し書き足ししてるので、8巻くらいで完結する感じ。
 『後宮小説』から『彩雲国物語』まで、後宮を舞台に女性を主人公にした作品は少なくなく、なろう系だと最近では『紅霞後宮物語』とか、『悪役令嬢後宮物語』とか……『薬屋のひとりごと』『後宮楽園球場』もそうですね。
 でも、基本的にみんな頭が良いんです。同じ武闘派でも『紅霞後宮物語』の小玉には知将の資格があるんです。
 でも、ヘレナの脳みそには本当に筋肉しか詰まっていないんです。政治とか恋愛とかになると簡単に思考停止するんです。筋肉でしか考えないのではなく、考えられないんです。
 そんなヘレナが50人を超える美姫たち後宮のライバルに、「私と戦争をしたいなら、一個大隊くらいは必要だと思いますよ」と殺すつもりで立ち向かっていく姿には笑うしかありません。

【武姫の後宮物語】【筧千里】【kyo】【カドカワBOOKS】【小説家になろう】【カクヨム】【どうしてこうなった】【腕立て伏せ】【酔っ払い】【ヘレナ様の後ろに続く会】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする