「アイリッシュ・スナイパー」 鰤／牙

「そんな最強集団の中にあって、〝邪神〟と呼ばれたほどの方です！　さぞや素晴らしいプレイヤースキルとゲーム知識をお持ちなのだろうと、そう思ってお声がけしました！」

　センスはないけれどアパレルデザイナー志望の女子大生、杜若あいりがＦＰＳ同好会に助っ人としてスカウトされた。あるゲームセンターの廃業にともなって、ＶＲゲーム用の業務用ゲーム筐体が放出されることになったのだが、その獲得を賭けて城南大学のＦＰＳ同好会とサバイバルゲーム同好会が争うことになったのだ。
　そこで、世界初のバーチャルゲーム「ナローファンタジー・オンライン」において数多のトッププレイヤーと交流を持ち、有力ギルドのトップにもなった上、邪神とまで畏れられた彼女に声がかかったのだが、実際にはあいりはゲームに関しては基本、ズブの素人。当時彼女が他のプレイヤーから畏れられていたのは、決してそのゲーム知識やプレイヤースキルなどではなく、敵対した人間の心の奥底までえぐる罵詈雑言、つまり口の悪さゆえだった。
　しかし、それなのにあいりは50万という報酬に目がくらみ、その依頼を引き受け、バーチャルゲーム「ガンサバイブ・プラネット」でのチーム戦に参加してしまう。
　彼女はせいぜい芋スナイパーなのに……。

　ＶＲゲーム黎明期を舞台にした『ＶＲＭＭＯをカネの力で無双する』のサイドストーリー。ＦＰＳとかサバゲーが何かすら知らなかった少女が行き当たりばったりで周囲を振り回し、罵詈雑言で片っ端から心を折りまくるバーチャル世界のサバゲー小説。
　粗忽で才能も無くて口が悪いだけの少女がメインになるとどうしても空気が悪くなるのですが、『ＶＲＭＭＯをカネの力で無双する』ではすべてを包み込む包容力と財力を持つイチローが居たように、この話では子分ポジにチャラオがいて、そこでうまいことバランスがとれてるんですよね。頼りないさんぴんみたいなのに、ちゃんと暴走娘をフォローし、ツッコミ、助けているのです。

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