付け焼き刃の覚え書き

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「信長の弟 織田信行として生きて候」 ツマビラカズジ

2020-10-09 | 戦国転生・歴史改変
 ウェブ小説の書籍化打ち切りというのはかなり多いのですが、たとえばチートな能力を手に入れて転生して暴れ回って王となる……という話なら、最初の国を手に入れた時点で終わろうと大陸全土を支配して終わろうと大差はないのです。ダンジョンにひたすら潜ってアイテム手に入れモンスター倒して強くなるだけの話なら最初の10層ダンジョンで終わろうと1000のダンジョンを攻略して終わろうと違いはありません。もう少し主人公の活躍が見たかったとか、7人目のヒロインが好きなのに5人目までで終わってしまったとか悔いはあるでしょうが、大勢に影響はないのです。たとえるならテレビドラマ「水戸黄門」や「遠山の金さん」が第3シーズンで終わってしまったようなもの。
 でも、話全体に大きな流れがあり、しっかり伏線を張ってあるような作品、それこそ戦国転生、仮想戦国絵巻だと不完全燃焼、唐突さがぬぐえません。歴史改変ものは、もとの基本となる歴史上の大イベントがあり、誰もが知っている結末が変わってしまうのか変わらないのかというあたりが醍醐味なので、さんざん改変したあげく関ヶ原の戦い直前で止まるとかありえない。許せない。やるせない。
 同じく時代劇にたとえるなら、大河ドラマ「真田丸」とか「いだてん」が途中打ちきりになるようなもの。「水戸黄門」なら途中5話ほど見逃そうが、3シーズンほど見ていなかろうが、ちゃんと楽しめるし話も分かりますが、「真田丸」で九度山蟄居で話が終わったらどーよ?

 そんな感じで、普通のファンタジーものとかは打ち切られても「新刊が出なくなったなあ」で済ませられますが、改変歴史ものは「ここで!?」になっちゃうのですね。その筆頭は三州騒乱で話が中断し、何度も版元を変えて再スタートを切っても必ず同じところで終わる佐藤大輔の『信長新記』ね。それで家康が先陣切って突入してどうなったの!?
 そこで手を付けるのが、ツマビラカズジの『信長の弟』。
 家督争いで信長と対立し暗殺されちゃう織田信行になってしまった男が、兄弟対立を乗り越え、生き延びるためにありとあらゆる手を使っていくうちに全国統一が目前となっていくという話。今川義元の尾張侵攻を乗り切り、諸大名を従え、将軍家と敵対し、関ヶ原の戦いの先に待ち受けているものは……十字軍! スペイン艦隊! 大坂夏の陣!
 序盤はよくある戦国転生もので、信長の弟とか兄とか妹とか庶子だとかよくある展開だよなあと思っていたら、中盤以降、風呂敷があれよあれよという間に広がって、こんなもの畳めるのか?と思っていると、大きくばっさりと畳み込んで決着をつける荒技。これだから戦国転生ものは面白い!
 書籍版は、まだまだ順当に展開している中盤の三巻打ち切りなので残念。

信長の弟 織田信行として生きて候】【ツマビラカズジ】【小説家になろう】【極東十字軍】【米州探題】【螺鈿細工の地球儀】
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