付け焼き刃の覚え書き

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「陰陽師は式神を使わない」 藤原京

2021-12-06 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 ファンタジーのライトノベル風に見せて売っておきながら、実はぜんぜんファンタジーではないのが『陰陽師は式神を使わない』。

 馬神太一郎は平凡な高校生だけれど実は陰陽師の家系で、占いについて語らせたらなかなかのもの。ところが幼なじみの尚之が余計なことを言ったせいで、それが高校のクラスメイトにばれてしまう。
 本当の占いってのは、みんなが想像し期待するようなものではないので、すぐに周囲の関心はそれてしまったのだけれど、ただ1人、学年一の美少女・胡桃沢さんだけは詰め寄ってきた。納得できないと最初はけんか腰だったけれど、最後はひとこと、はっきり教えてくださいと。
 かくして放課後に、前代未聞の陰陽道講座が始まってしまうのだけれど……。

 副題が「陰陽道馬流初伝・入門編」。同じスーパーダッシュ文庫に『よくわかる現代魔法』などというファンタジー作品があるので、そんな感じかと思っていたら全然違いました。確かにストーリーはあるのだけれど、派手なシーンがあるわけでもなく……あえていうなら学習マンガに近いかな。お話に従って勉強していきましょうというやつ。話の大半が、太一郎が同級生の胡桃沢さんに陰陽道の基礎知識をレクチャーしていく内容のやりとりに費やされています。

「宗教関係は神祗官だってばさ。陰陽寮がやるなら神祗官は何をしてるのさ。天神を祀り地神を祀る官ですよって、はっきり名前に書いてあるじゃないか。恐怖の怨霊・菅原道真公は天神様じゃないのかよ」


 波瀾万丈な冒険も、襲い来る敵も、迎え撃つ式神も出てこない。だって、陰陽師は式神を使わないから。
 『易経』をベースに、『日本書紀』から『高い城の男』まであれこれ言及しつつ、世間一般に誤解されている陰陽師本来の姿についての解説と、簡単な卦の読み方、そして陰陽師の視点で読み解く日本の歴史……といった内容になってます。そいでもって巻末付録が六四卦表。
 一読の価値あり。物語部分を抜いて、ハードカバーにしたら荒俣宏と加門七海の間に挟まっておかしくないし、『大江戸魔方陣』よりこちらの方が面白かった。(2007/10/26)

「早い話、陰陽道を使うから陰陽師って言うんであって、呪術を使ってたらそれは呪術師なんだ」
 呪術を使うのは修験者だよと既存の伝奇小説に真っ向から喧嘩を売っていきます。(2020/12/06)

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