「百合の間に挟まれたわたしが、勢いで二股してしまった話」 としぞう

「オレは百合が好きだ。百合ってのはよぉ、ケースに飾られた綺麗なモンばかりじゃねぇ。もっと泥臭い、雑草みたいな百合があってもいいじゃねぇか」
　一生懸命咲いていれば、それはどんなものであれ尊いのだ……という言い訳。

　幼なじみの２人の美少女、成績トップでお姫様みたいに可憐な百瀬由那とスポーツ万能で凜々しい合羽凜花は、周囲が尊いとあがめて『聖域』と呼び、絶対不可侵の百合の聖域とみなしていた。
　ところがそんな聖域に空気を読まずに割り込む女がいた。進学校に鉛筆転がしでマークシートを埋めて入学した劣等生、間四葉である。本人には悪気もないし、自分から何かしたというわけでもないのだが、気がつけば２人の間に挟まれ、なおかつ両方に告白までされてしまったのだ……。

　「小説家になろう」に掲載された短編に目が留まり、長編化されて書籍になった二股百合小説。
　凡庸な主人公になぜか才色兼備の少女たちが好意を抱き……というのは、男女関係ではよくある話なのだけれど、それを男女の三角関係ではなく百合トライアングルにしてしまったことで人当たりが柔らかくなってます。これで主人公が男だったら、まさに「尊き百合の花園を踏み荒らす不届き者」ですね。

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