付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「うちのメイドは不定形」 静川龍宗

2010-06-19 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「追われる者にとっては、すべてを黒と考えることも大事でな」
 チェシャの笑みを浮かべるバロール。

 一人暮らしの高校生の家に南極から宅配便で届けられたのは、緑の髪のメイドさん。永久凍土の下で1億5000万年ほど眠っていた、不死の不定形生物だった……。

 地球創世来のコズミック・ホラーを萌え小説にしちゃうなんて、日本人って怖いなー。
 まず真っ先に思い浮かんだのは、超少女明日香だったのですよ。分裂する万能のお手伝いさんときたら、それしかありませんから。やっぱり次はニンジャと戦って欲しいよね。でも、あれよりもっと、ほのぼのしてたなー。

 単なる萌え話でもなく、クトゥルフ神話のパロディでもないところが怖いな。ちゃんとクトゥルフ神話の大系に組み込めてしまうのに、押しかけ居候の萌え小説で、学園バトルで、それでいて普通に読んで面白いんだから、こいつぁなかなかの強敵だ。ああ、『這いよれ! ニャル子さん』も読まなくちゃ。
 ただ、普通に言うシェアード・ワールドとは違うんですよね。それぞれの作品が他の作品の存在を否定しちゃっているので、1つの世界を共有しているのではなく、1つの元ネタを使い回ししていることになります。

【うちのメイドは不定形】【静川龍宗】【森瀬繚】【文倉十】【ビートルズがやって来る ヤア ヤア ヤア】【ポニーテールはふり向かない】【クトゥルフ神話】【奉仕種族】【ケルト神話】【がま口財布】【物体X】
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「実はこれ、沢庵なの♪」 東海漬物

2010-06-18 | 食・料理
 おだったさんの置き土産。
 東海地方の漬物メーカーとアニメがコラボしたというシロモノで、普通に売っているのかと思ったらUFOキャッチャーのプライズだったそうな。ホントかな?
 今度、試食会しますが、たぶん普通の沢庵の味だと思います。(2010/06/18)

 試食会しました。
 確かに普通に甘めの沢庵でした。10人ほどでぼりぼり食べて、残りは高校生の長男のお弁当の一品に。嫁さんが張り切ってキャラ弁にしてたよ。眉毛にしなくちゃダメなのよと言いつつ……。(2010.06/21)

【実はこれ、沢庵なの♪】【ムギちゃんの眉毛】【けいおん!】【東海漬物】【プライズ】
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「デュラララ!!×8」 成田良悟

2010-06-18 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 間隔は開いているし、キャラクターは多いし、複数勢力が入り交じっていて、話がどうなっているの?という『デュラララ!!』だけれど、アニメのおかげで前半の話が頭に入って読みやすくなりました。それでも、登場人物多すぎてわかりにくい……と思っていたら、そういう意見は少数派ではなかったらしく、あとがきで次巻以後は登場キャラを絞った展開になるのだとか。
 話の方は、帝人・正臣・杏里のすれ違いがかみ合いそうになる寸止め展開。もっとさくさくする~っと進んで欲しいのですが、いったんもつれた糸はなかなかほどけません。

【デュラララ!!×8】【成田良悟】【ストーカー】【流出ビデオ】【ネヴラ】
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「お・り・が・み~天の門」 林トモアキ

2010-06-17 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 両親を失い、血もつながっているかどうかも分からない遠い親戚の間を点々としていた女子高生・鈴蘭。ところが、いつの間にか養親たちの借金の片棒を担がされていたらしく、背負った借金がなんと30億円。
 借金のカタに働くことになった会社では、いきなりメイド服を着せられたかと思うとヤクザの麻薬取引現場に放り込まれ……。

 魔人と神が人間である神殺しと争い、現代兵器から日本刀までが乱舞するバトルアクション。悪の組織の使いっ走りとなった鈴蘭は、果たして神の使いである“神殿協会”の重甲胄部隊から逃れることができるのだろうか……という話。
 まだデビュー間もない時期の作品だけに荒削り。諸勢力入り乱れ、状況把握もタイヘンです。とはいえ、いかにも中高生が好きそうな勢いで読ませる本です。これだったよな、うちの子が友だちと金を出し合って買ったというのは……。

【お・り・が・み】【天の門】【林トモアキ】【2C=がろあ~】【メイド】【勇者】【魔王】【教会】
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「ミル(1)」 手原和憲

2010-06-17 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「人生は往々にしてベタなもんよ」
 ある日突然、下宿に押しかけてきたカワイイ女子高生は、実は86歳のバケネコだった……。

 雑誌連載で第1話を読んで気になっていた作品がついに単行本に。
 まとめて読むと面白いなあ。面白いといっても『聖☆おにいさん』の面白さではなく、『乙嫁語り』の面白さに近い気がするのだけれど、なんというか読んでクスクス笑ってしまうけれど読後感さわやかってあたり。
 でも、この顔でミルっていうと、真っ先に監視艦隊司令を連想する私でした。そう思うと顔はそっくりだ。

【ミル】【手原和憲】【猫】【総菜】【佐賀弁】
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「天地明察」 冲方丁

2010-06-16 | 時代・歴史・武侠小説
 碁打ち衆として幕府に使える渋川春海だったが、彼が真に関心があるのは算術。江戸に来て神社の絵馬に書かれた数学問題を見た春海は感動にうちふるえる。
 そんな春海に、日本各地を回る天文観測への参加が命じられるのだが……。

 日本の暦を作り直した天文学者の半生を描いた時代小説で、吉川英治文学新人賞とか本屋大賞をとっただけあって確かに面白い。参考文献として書名を上げられ、その中に掲載してあった書簡の1節を引用された研究者がインターネットのブログにて、史学的には間違いがあることを人の研究を使ってもっともらしく書いてくれて困ったもんだ……と文句を言ってますが、私たちが娯楽として読む分にはまったく関係ありませんし、この本を孫引きして歴史研究しようというのは隆慶一郎を読んで徳川家康を研究するのと同じことで、そんな研究者はそもそも論外ですよね。

『今日が何月何日であるか。その決定権を持つとは、こういうことだ。
 宗教、政治、文化、経済--全てにおいて君臨するということなのである』

 たかが暦。されど暦。

 冲方丁はシュピーゲルのシリーズで、サイバーパンクをそのまま表現したような文章に目が回ってお手上げしてしまいましたが、こちらはきちんとした歴史小説の文体なので安心して読めました。
 人物の配置も巧くて手堅いですよね。才能も実力もあるけれど今ひとつ自覚がない、昼行灯と呼ばれそうな主人公。勝ち気で銭勘定には厳しいヒロイン。ライバルともいうべき同年齢の孤高の天才。同じくライバルともいえる年下の天才少年。一歩間違えば少年マンガになりそうな構図ですが、ライバルがそれぞれ算術の天才であり碁の天才なので、本筋として単純なライバル対決にはならないのですね。主人公を厳しく叱咤して押し上げる存在となります。それぞれがそれぞれの分野で頂点を極め、互いに影響を与えあってさらに研鑽を積んでいく緊張感だけがあります。
 主要な登場人物に暗愚な上司とか卑劣な敵とか出てこないのも安心して読めるところ。もちろん障害が幾つも行く手に立ち塞がりますが、基本的にそれらは硬直して旧態依然とした組織や制度であり、全貌が見えない天体の運行なのです。そういう意味では珍しい話ですね。名指しできる敵役がいないのですから。

 脳内イメージだと、春海はヤン・ウェンリー、水戸光圀は水戸コミケの黄門漫遊ミルク飴、大老酒井は神田隆……。
 それくらい情景が脳裏に浮かぶ話ということでご容赦を。

【天地明察】【冲方丁】【算術】【太陰暦】【水戸光圀】【安井算哲】【本因坊道策】【保科正之】【宣明暦】【関孝和】
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「ドラゴンになった青年」 ゴードン・R・ディクスン

2010-06-15 | 異世界転移・召喚
「"できもしないこと"に関しては、できないことはないはずなんだが、それだけの修行ができていないだけだ」
 ウェルズの長弓の名手、ヒウエルのダフィッドの言葉。彼はこと弓に関しては不可能なことがあるとは認めない。すべて「できる」か「今にできるようになる」かしかない。前向きな自信家。なんでも試す前から「不可能に決まっている」と決めつけるチキン者に爪の垢を煎じて飲ませたいものです。

 G.R.ディクスンに最初に触れたのは岩崎書店から刊行されてた『宇宙の勝利者』ですが、そのときはそんなに意識してなくて、むしろ同じ全集に入っていた「ゴドウィンの『宇宙の漂流者』と紛らわしい」という反感があったくらい。
 初めて意識して読んだのが『ドラゴンになった青年』。ドラゴンのジムの元に集まってくる仲間たちの個性的で頼もしい姿に惚れ込んでしまいました。その後、アメリカ土産に買ってきたジグゾーパズルの1つを見ていて、何か既視感があることに気づきました。竜と並んで歩く騎士、対峙する女狩人と狼……あ、『ドラゴンになった青年』じゃないか!
 日本版のイラスト、萩尾望都のユーモラスな絵柄があまりに印象的だったので、フラゼッタかボリスかというリアルな絵に反応しなかったのです。でも(小遣いも乏しいのに)無意識に購入しておいた自分、エライぞ★ そこであらためて『 THE DRAGON AND THE GEORGE 』が原題だということを知るわけです(で、今日調べてみたらジグゾーパズルはボリスの絵だった!)。

 そして数年が経過して大学時代。みんなでバイクでツーリングに出かけ、日曜の夜に戻ってきてタイマー録画しておいた『超時空要塞マクロス』(だったと思う)を見ようとしたらチャンネル設定を間違えていて、なにやら見慣れぬファンタジーアニメが録画されていました。人の言葉をしゃべるドラゴンが、騎士や狼と出会い……これって、もしかしてトップ・クラフトで制作されていたという『空飛ぶドラゴンたち』でない!? ディクスンの作品を原案にしちゃったという……。面白いじゃん!……原作と全然違うけど……そして元々1時間分のタイマーがかけてあっただけなので、いよいよクライマックス!というところでブチ切れたというオチがつくのであった。さんざん探し回って見つけたビデオ版は『ドラゴン伝説・魔界大戦争』……ダサダサ。
 ついでに、ちょっと調べてみたら、ジェームズ・アール・ジョーンズもこの作品に参加してたとか(Ommadonって誰?)

「シーソー遊びを考えてごらん。一方が運命、もう一方が歴史だ」

 心理学の実験ミスから異世界に飛ばされた恋人を追いかけ、意識だけ異世界に飛ばそうとしたジムがドラゴンの肉体に乗り移ってしまった……というのが『ドラゴンになった青年』。異形のものとなった青年が、騎士やら狩人やら狼やら個性的な仲間と出会い、恋人を助けるための彼らと共に戦いに赴くという話ですが、そのジムが竜退治の騎士に対して口にしたのが「最初から、あなたの社会保障のナンバーを知ってさえいたらなあ」という言葉。
 読んだ当時は意味が全然わかりませんでした。社会保障ナンバーって何? それがどうして誰でも持っていて当然みたいな言い方をされるの?
 これって、納税者番号制度のことなんですね。アメリカだと社会保障法で定められていて、1つの番号で納税から兵役まで管理するシステムです。
 今、日本でも納税者番号制とか、国民総背番号とかが論議に上がっていて、昨年から始まったICカードによる個人認証制度もその一環ですが、これを導入すると国家が人民を管理する道具になると反対の声も出ています。でも同様の国民背番号はカナダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、韓国、シンガポール、イタリア、オーストラリアなどが制度として取り入れています。国によって、どこまで管理しているかはさまざま。要は導入の是非ではなく、運用の問題なんですけどね。
 日本の場合はまだまだ紆余曲折で迷走しそうです。でも、導入するなら、さっさと一元管理でパパパッとやって欲しいですね(1962年に導入したアメリカではシステムが迷走したおかげで国民2億8000万人のところ、発行済番号が4億人分という状況ですから……)。(2007/08/25)

 アニメ版『ドラゴン伝説・魔界大戦争』こと『フライト・オブ・ドラゴン』について補足。
 いろいろ話が違ったあげくにラストは別物になっていて「なんだ、こりゃあ?」と思ったら、原作表記がゴードン・R・ディクソンの『ドラゴンになった青年』とピーター・ディッキンソンの『空飛ぶドラゴンたち』のニコイチでした。そりゃあ、あれこれ違うわなあ……と納得してはいたのですが、主役の名前がピーター・ディッキンソンで、彼が作品中で書いていた本のタイトルも『空飛ぶドラゴンたち』。もしかして、ピーター・ディッキンソンって架空の存在? 本も含めて丸ごとフェイクかと調べてみたら……簡単に調べられるのがインターネット時代。
 ピーター・ディッキンソンはイギリスの作家。どちらかというと推理小説で有名な人。この『空飛ぶドラゴンたち』は、ル・グインのアースシー三部作の表紙絵を見ていて「なんで、こんなでかい竜があんなに小さな翼で空を飛べるんだ?」という疑問を抱き、無理矢理イラストから理屈づけて設定してみました……という設定マニアの同人誌のようなものだったようです。本人曰く、エセ学術論文。
 それを彼のエージェントが拾って出版しようと奔走し、そのついでにアニメ制作会社にコンセプトを売り飛ばし、中身も確認しないで権利を購入したランキン・バス・プロダクションは設定はあってもストーリーがないものだから慌ててディクソンからストーリーを買いつけて合体させてしまったということだそうな。主役の名前はピーター・ディッキンソン卿だけれど、本人曰く「誰も私の名前を主役に使って良いか訊ねてくれなかった」とのこと。
 設定はディッキンソン、ストーリーはディクスン。ついでにいうなら実際の制作は『風の谷のナウシカ』と同じトップクラフト。
 もともとの設定を書いたパンフレットについては、結局イギリスのペーパー・タイガー社から出版されたのだけれど、珍妙なカルト古典みたいなものだから見つけたら手放さない方が良いんだそうだ。

【ドラゴンになった青年】【ゴードン・R・ディクスン】【萩尾望都】【ハヤカワ文庫FT】【ドラゴン】【狼】【騎士】【王道】【名言】
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「ダンタリアンの書架4」 三雲岳斗

2010-06-15 | 本屋・図書館・愛書家
「幻書を奪うのは、泥棒の仕事だ。死人の役割は、大人しく煉獄の炎に焼かれることだろう?」
 お姫さまは奪っていかないのですね……。

 全寮制の女子高に出没する脱獄囚の猟奇犯罪から、焚書官が変幻自在の怪盗と対決する話まで、あれこれ詰まった短編集。
 メインの主役である読姫と鍵守の性格とかパターンは把握できたけれど、外伝的な方の焚書官は今ひとつつかめないなあ。見たところ、典型的なライバルなんだよね。強くて真面目だけれど、融通が利かないので、本編ではかませ犬というか主人公に弄ばされがちになるタイプ。

【ダンタリアンの書庫】【三雲岳斗】【Gユウスケ】【大根足】【許嫁】【オートマタ】【嫉妬】【催眠術】【調香師】【屋敷妖精】
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「大誘拐」 天藤真

2010-06-14 | ミステリー・推理小説
「あれだけはあかんわ。かわいい子どもさろうて、金ゆすって……あれ、人間のすることやないわ」
 銀行強盗でも何でも良いから誘拐だけはやめてくれと秋葉正義の言葉。

 悪事から足を洗うことに決めたスリ師の戸並健次が最後の仕事に選んだのは、紀州一の大富豪、日本一の山林地主である柳川家の当主とし子刀自の誘拐だった。ムショ仲間の正義と平太と協力し見事誘拐に成功した3人だったが、誘拐された82歳の老婦人は身代金が5000万円と聞くと激怒した。安すぎる、ふざけるな、身代金はきりよく100億や! ビタ一文負からんで……。

 スペースオペラでいうなら『お祖母ちゃんと宇宙海賊』。犯罪に巻き込まれた老嬢が、逆に犯人も警察も振り回して大暴れという話。
 1991年に岡本喜八監督で映画化され、劇場で観た私らは緒形拳と北林谷栄の対決、あごを振り回される嶋田久作、アイゼナッハ提督のような天本英世の指揮ぶり、樹木希林の猪突猛進などに爆笑したもんです。キャスト表を見ただけで泣けてくるような映画でしたが、先に原作を読んでいた(たぶん)はざまくんが「原作を読まなくてはいけません。それで映画が省略せざるを得なかった部分を埋めてこそ納得できる部分もあるのです」というものですから、トクマが映画とタイアップして出していた新書版を購入。
 映画もすごいけれど、こちらも傑作だよ!と最終的には文庫版の天藤真推理小説全集まで買いそろえてしまいましたが、それだけの価値はありました。レーザーディスクも買いました。DVDも買いました。手元に置いて何度も観て読んでは、ラストシーンに涙するのは職業柄なのかもしれません。
 書評やレビューでよく「本当に悪い人は出てこない作品」などと書いてありますが、ちょっと違う気がします。とし子刀自がしっぺ返しを食らわそうと一世一代の勝負に出た相手こそ本当の「悪いヤツ」なのではないでしょうか?

 つい最近の映画と思っていたけれど、気がつけば緒形拳も北林谷栄も天本英世も景山民夫も中谷一郎も鬼籍に入っていて寂しい限り。

【大誘拐】【天藤真】【営利誘拐】【生前贈与】【雑損失】【相続】
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「囮のテクニック~船団編」 ダドリ・ポープ

2010-06-13 | 戦記・戦史・軍事
「そういう気持ち(欲望・嫉妬心・憎悪)があるからこそ、人間は何かの計画を立てて実行するために懸命に働くのじゃないかな」
 ASIUのジェミー大尉の言葉。

 エドワード・ヨーク大尉とエクストン看護婦の交流を軸に、大西洋の戦いにおけるUボート戦を描いた異色作。感覚としては学習マンガ(マンガじゃないけど)。
 第二次大戦中において輸送船団が何を運んでいたか、その船団の護衛や航海はどういうものだったか、それを狙うUボートの数はどれくらいで能力はどれほどか、戦時中の配給や街の人々の様子はどうだったのか等々、読みながら分かる「大西洋の戦い」。これと『駆逐艦キーリング』を読めばシーレーンの重要性と船団護衛の基礎はわかるというものです。それ以上はマニアの領域ですね。
 ヨーク大尉と未亡人クレア・エクストンの大人の恋も初々しくて、やはり物語にロマンスは不可欠だと納得しております。

【囮のテクニック】【船団編】【CONVOY】【ダドリ・ポープ】【大西洋の戦い】【Uボート】【88ミリ砲】【対潜水艦戦情報部】【ジグザグ運動図】【配給】【手榴弾発射機】
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「ダンタリアンの書架3」 三雲岳斗

2010-06-12 | 本屋・図書館・愛書家
「女心は幻書よりも奇なり」

 キングの『ミザリー』やら『竹取物語』をモチーフにしたような話とか、ファンタジー異世界譚とか、はたまた読姫と鍵守が焚書官と共に地下鉄でゾンビと対決するなど、あいかわらず読み切り短編の特性を活かしてやりたい放題やってます。

【ダンタリアンの書庫】【三雲岳斗】【Gユウスケ】【進化】【BL】【青髭】【呪術師】【竹取物語】【魔術師】【テロリスト】【地下鉄】
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「帰天城の謎~TRICK青春版」 はやみねかおる

2010-06-11 | ミステリー・推理小説
「どれだけ科学が進んだら、人間は幸せになれるの?」

 中学の夏休みに代用教員の藤原先生に誘われた山田奈緒子は、N県の踊螺那村へ旅行することになる。そんな田舎の盆踊りなんかには興味はなかったけれど、その地に埋蔵金伝説が残っているとなれば話は別だった……。

 劇場版トリックの公開に合わせ、ジュニア向けミステリーをメインに活躍しているはやみねかおるが書き下ろしで主役2人の過去話を執筆するというものだけれど……元のドラマを1度も見たことがないのですが……高校生の息子が劇場版を見たいとなぜか気合いが入っていたので気になっていたところに、鶴田謙二のイラストが付いたら、もう買うしかありません。

 で、結論としては「買って良かった」。
 バカで守銭奴のヒロインとマヌケで欺されやすい物理学の徒が挑む、帰天城と玲姫伝説の謎。

【帰天城の謎】【TRICK青春版】【はやみねかおる】【鶴田謙二】【枕投げ】【盆踊り】【天狗】【エックスカリバー村正】【痔瘻】【ゆで玉子】
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「さびしい女神」 仁木英之

2010-06-10 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 ニート青年がボクキャラの美少女仙人の弟子となって旅をする『僕僕先生』の4冊目。

「恐怖を知らぬ者は一番に死ぬ。だが、恐怖を知った上で先頭に立つ勇者こそが、戦場を作るのだ」

 これが戦場の鉄則だと燭陰。

 蚕嬢とともにやってきた国は旱魃で滅びかけていた。
 人の世の混乱には無関心な様子の僕僕だが、王弁は封じられた神への生け贄にされてしまい……。

 波瀾万丈の漫遊記も、大きな転換点が来ました。太古の大戦争の記憶、かいま見える僕僕先生の秘密……。そして、優柔不断でへたれの元ニートが単なるへたれでないところを見せてくれます。神々の戦いの前には定命でへたれの青年などものの役に立たないと想われますが……。
 神さまがどいつもこいつも深刻で真面目なのに対して、仙人の軽さが印象的な巻でもあります。
 呉越同舟というか、成り行き任せで増えたメンバーにもそれぞれの思惑やら心境の変化があり、先の展開が楽しみです。

【さびしい女神】【仁木英之】【僕僕先生】【神々の戦い】【炎帝】【黄帝】【記憶】
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「俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長」 哀川謙

2010-06-09 | 魔法の学園
 人間と人外の生き物が共存している世界。
 共存と言っても見えない壁はいくらでもあり、学校も人間用とそれ以外のもの用に別れている。ただ1校、聖桐学園を除いては。
 人間と人外が共存するテストケースとして設置された聖桐学園には、人間からなる勇者生徒会と、人間以外のための魔王生徒会が存在して互いに競い合っていた。
 その勇者生徒会の生徒会長にさっそく選ばれてしまったアリスは、眉目秀麗・成績優秀・スポーツ万能。しかし、そんな今年の勇者に対し、幼馴染みの紅太郎はすべてが平均点の冴えない普通の人間。しかし、その紅太郎が次の魔王に選ばれてしまったことから……。

 えっと、学園コードギアスかと思ってしまいましたが、面白くて一気に読めてしまいました。主人公が周囲の少女たちから寄せられる好意にだけは鈍感なのはお約束ですが、それ以外は普通の人間は人間なりに真面目に取り組み、頭を使って身体を張って頑張る姿に好感を持ちました。
 書店から回収されているというので、とりあえず感想メモのみ。

【俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長】【哀川謙】【H2SO4】【幼馴染み】【生徒会】【マウントポジション】【吸血鬼】【人造人間】【人狼】【サキュバス】
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「僕とおじいちゃんと魔法の塔(2)」 香月日輪

2010-06-09 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「魔物も人間も、女は大して変わらんわぃ」
 呼び出しもしないのに魔法陣に出現する連中に、陣内秀士郎の言葉。

 龍神(たつみ)が岬の黒い塔に移り住んで4度目の春。高校にも無事に合格し、春休みを利用して泊まりがけで遊びに来た親友の信久や弟妹とも愉しくやっていたのだが……。

 かつては芸術家の卵たちが集まって暮らしていた梁山泊的な屋敷に、今度は怪しげな者たちが集まり始める話になりそうな話。回りくどいけれど、そんな感じ。空気を読みすぎる、出来の良い弟や天真爛漫な妹ともうまくやれているようでなにより。
 前作は1冊で完結して、続編なんか必要なさそうな話だったけれど、今回はあれこれ伏線引きまくって、3巻でも4巻でも出さないといけない雰囲気になってます。大魔女エスペロスも登場したのはいいけれど、信久くんが壊れ始めた気がして不安です。萌えとか言い出したらいかんよ……。
 児童文学的な説教臭さが気になる人もいるかな? けっこうストレートに、人と人との付き合い方やら社会での生き方について言い放つわかりやすさが諸刃の剣です。そういう意味ではかなりシニカル。

【僕とおじいちゃんと魔法の塔】【香月日輪】【魔女】【魔法陣】【裏金】【五感】
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