日本人がソマリアと聞いて思い出すのは海賊くらい。ソマリア沖は航海する貨物船が頻繁に襲撃されるので、普段は自衛隊の海外派遣反対!といっている団体の船舶でも自衛艦の護衛がないと通過したくないという話です。でも、逆に言うと普通の日本人が知っているソマリアの情報ってそれくらいです。
そんなソマリアを訪問し、あれこれ見て聞いて体験して回った記録がこの本です。
「こんな酷い内戦になるとわかっていれば、バーレ政権を倒したりしなかったのに」
過激なイスラム思想をおさえ、識字率を向上させ、道路や学校や病院をたくさんつくり、氏族中心主義を廃して男女平等を推し進め……。
インド洋とアデン湾に面する東アフリカのソマリアは1991年の内戦により分断され、無政府状態が続いていた。
しかし、崩壊国家の一角に、武装解除に成功して平和が10数年続いている場所があるという。その名はソマリランド。国際的には承認されることはないものの、さまざまな勢力が乱立してリアル「北斗の拳」状態の南部や横行する海賊の拠点である北東部のプントランドとは異なり、国際社会の協力のないまま、独自に各氏族の長老が集まり、3度の話し合いを経て武装解除に成功して全土を平定……って本当に可能なのか?
戦乱のソマリアにあって民主的な政党政治がおこなわれている楽園が存在しうるのか……?
「ミャンマーの柳生一族」にて余所者にはなかなか理解しにくいミャンマーの勢力図を日本の江戸時代になぞらえて読み解いてしまった著者なので、今回はさまざまな氏族(clan)が跋扈するソマリアを平氏・源氏で読み解いていきます。
言ってしまえば源平の争いで分裂した後、今度は源氏の内部で頼朝と義経の内部抗争が勃発し、そこに世界の警察を自負していたアメリカが介入して失敗して『ブラックホーク・ダウン』に至って話をこじらせてしまい、アメリカ憎しで氏族を枠組みを超えてイスラム原理主義が台頭。紆余曲折あってそこから過激派アル・シャバーブが分離……。
こうした状況を把握するだけでも、現地に入ってハッパのパーティーを回っては断片的な情報や人々の生の声を集めていくしかありません。
ソマリランドがまとまることに成功した理由は、まず長老や氏族という仕組みを旧宗主国であるイギリスが統治に利用していたため、南部とは異なり、良い意味でも悪い意味でも古い制度が残っていて、それが活きてきたことなんだとか。
ソマリランドで多数派を占める氏族はもともと遊牧民気質で、利害に敏感で、さらには気が荒くて争いごとが多い気風だったために、逆に争いごとを収めるための掟「ヘール」がしっかり根づいていて、原因が何だったとかどちらが正しいかなどは棚上げして精算できてしまったこと。
「殺人の血糊は分娩の羊水で洗い流す」
ソマリの格言。
こうした話以外にも、ソマリア最高峰に挑んだエピソードとか、調査隊もろくに入っていない太古の墳墓を観に行った話とか(現地の老人に言わせれば日本から流れてきた卑弥呼が眠っているそうな)、このあたりでの国家の粗製濫造には海外在住者の力が大きいとか、海賊稼業を始めるには初期投資がどれくらい必要かとか、あれこれ横道にそれながら、貧しい楽園ソマリランドだけではなく、難民キャンプや海賊との人質交渉の仲介で潤っているプントランド、暫定政権は存在するものの内戦が続く南部ソマリアなど各地を見て回っています。
2012年の状況までフォローして、読み応えたっぷりの1冊。
「ソマリの伝統の核心は血じゃない。契約なんだ」
和平交渉のすべてに立ち会った長老、長老院のアブドゥラヒ・デーレ。
でも、ろくな産業も無く、拉致が文化で、周囲は武装勢力が跳梁跋扈している国の方が、日本より政治のシステムがまともっぽそうというのは残念でした。やはり一党独裁というのは良くないけれど、小党派乱立も政党政治として機能するわけないよね?
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そんなソマリアを訪問し、あれこれ見て聞いて体験して回った記録がこの本です。
「こんな酷い内戦になるとわかっていれば、バーレ政権を倒したりしなかったのに」
過激なイスラム思想をおさえ、識字率を向上させ、道路や学校や病院をたくさんつくり、氏族中心主義を廃して男女平等を推し進め……。
インド洋とアデン湾に面する東アフリカのソマリアは1991年の内戦により分断され、無政府状態が続いていた。
しかし、崩壊国家の一角に、武装解除に成功して平和が10数年続いている場所があるという。その名はソマリランド。国際的には承認されることはないものの、さまざまな勢力が乱立してリアル「北斗の拳」状態の南部や横行する海賊の拠点である北東部のプントランドとは異なり、国際社会の協力のないまま、独自に各氏族の長老が集まり、3度の話し合いを経て武装解除に成功して全土を平定……って本当に可能なのか?
戦乱のソマリアにあって民主的な政党政治がおこなわれている楽園が存在しうるのか……?
「ミャンマーの柳生一族」にて余所者にはなかなか理解しにくいミャンマーの勢力図を日本の江戸時代になぞらえて読み解いてしまった著者なので、今回はさまざまな氏族(clan)が跋扈するソマリアを平氏・源氏で読み解いていきます。
言ってしまえば源平の争いで分裂した後、今度は源氏の内部で頼朝と義経の内部抗争が勃発し、そこに世界の警察を自負していたアメリカが介入して失敗して『ブラックホーク・ダウン』に至って話をこじらせてしまい、アメリカ憎しで氏族を枠組みを超えてイスラム原理主義が台頭。紆余曲折あってそこから過激派アル・シャバーブが分離……。
こうした状況を把握するだけでも、現地に入ってハッパのパーティーを回っては断片的な情報や人々の生の声を集めていくしかありません。
ソマリランドがまとまることに成功した理由は、まず長老や氏族という仕組みを旧宗主国であるイギリスが統治に利用していたため、南部とは異なり、良い意味でも悪い意味でも古い制度が残っていて、それが活きてきたことなんだとか。
ソマリランドで多数派を占める氏族はもともと遊牧民気質で、利害に敏感で、さらには気が荒くて争いごとが多い気風だったために、逆に争いごとを収めるための掟「ヘール」がしっかり根づいていて、原因が何だったとかどちらが正しいかなどは棚上げして精算できてしまったこと。
「殺人の血糊は分娩の羊水で洗い流す」
ソマリの格言。
こうした話以外にも、ソマリア最高峰に挑んだエピソードとか、調査隊もろくに入っていない太古の墳墓を観に行った話とか(現地の老人に言わせれば日本から流れてきた卑弥呼が眠っているそうな)、このあたりでの国家の粗製濫造には海外在住者の力が大きいとか、海賊稼業を始めるには初期投資がどれくらい必要かとか、あれこれ横道にそれながら、貧しい楽園ソマリランドだけではなく、難民キャンプや海賊との人質交渉の仲介で潤っているプントランド、暫定政権は存在するものの内戦が続く南部ソマリアなど各地を見て回っています。
2012年の状況までフォローして、読み応えたっぷりの1冊。
「ソマリの伝統の核心は血じゃない。契約なんだ」
和平交渉のすべてに立ち会った長老、長老院のアブドゥラヒ・デーレ。
でも、ろくな産業も無く、拉致が文化で、周囲は武装勢力が跳梁跋扈している国の方が、日本より政治のシステムがまともっぽそうというのは残念でした。やはり一党独裁というのは良くないけれど、小党派乱立も政党政治として機能するわけないよね?
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