付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

★時空を超えた恋物語

2016-10-30 | ランキング・カテゴリー
 映画「君の名は。」が大ヒットしているせいか、書店の新刊にちらほら「時空を超えた恋物語」みたいな話がちらほら。この手の話が流行るかもねと言っていたら、嫁さんが「それなら『王家の紋章』の時代が来たね!」と。それは正解だが、違うと思うぞ。
 そんなこんなで、「『君の名は。』を観て、こんなわくわくどきどきしたり、せつなくなったりする、時間SF&ファンタジーな恋愛要素のある作品を読みたい」というときのためのリストです。

『ハルカ 天空の邪馬台国』 桝田省治
 現代日本の高校生が自宅の蔵でみつけた銅鏡からの呼びかけに応えたばかりに、時空を飛び越え遙か太古の日本へと飛ばされる。彼を呼び出したのは邪馬台国の巫女ハルカ、そして女王卑弥呼。邪馬台国はおりしも存亡の危機を向かえており、張政は救国の英雄として呼び出された……という、和テイストというか古代日本が舞台で、ハラハラドキドキ、ちょっぴりエッチで胸熱な冒険譚。この作品だけでも完結しているし、語られなかった気になる伏線については続編「炎天の邪馬台国」にて回収。

『この胸いっぱいの愛を』 梶尾真治
 飛行機事故に遭った鈴谷比呂志は、気がつけば20年前の故郷に立っていた。つい子供の頃に暮らしていた街並みを散策してしまうが、そこで出会ったのは幼い自分だった。そこで彼は気がついた。20年前の今日、彼は祖母のための誕生ケーキを焼こうとして火事を起こしていたのだ……。
 やはり時間SFロマンス小説の傑作である「クロノス・ジョウンターの伝説」を映画化したものを、さらに作者自らノベライズしたもので、作品としてはこちらの方が分かりやすくて好きです。梶尾真治作品には、「ムーンライト・ラブコール」とか、この手のロマンスSFが多いですよね。

『夏への扉』 R・A・ハインライン
 婚約者に裏切られ、仕事も発明も奪い取られてしまった男が、人生を諦めて30年後に蘇る冷凍睡眠を申し込んだ。再び甦生できる保証もない未来への旅に同行するのは猫のピートだけだったが……。
 タイムパラドックスものだけれど、ネコ小説で、一種の恋愛小説で、「あきらめるな。幸せをつかむためにがんばれ」という話なので、そりゃあ面白いし、読んで元気が出るってもんです。今となっては「遙か未来」が2000年というのがツッコミどころ。今でいうルンバの姿を見よ。

『鵺姫真話』 岩本隆雄
 視力悪化で宇宙飛行士への道が断たれてしまった少女は傷心のまま帰郷。そこでなりゆきから剣道の奉納試合を引き受けることになるのだが……。
 連作である『星虫』『イーシャの舟』と合わせて「星虫年代記」として合本で出ているので、そちらで読むのが分かりやすいかも。宇宙開発の拠点となる未来都市から一転して昭和の香り漂う故郷の町、さらには時間を跳躍して戦国時代に放り込まれるという二転三転。過去へタイムスリップした人間が未来の知識で無双するとか、「実は誰それの正体は何某であった」といった王道パターンてんこ盛りのジュブナイル宇宙/時間SF。

『昨日は彼女も恋してた』 入間人間
 小さな離島に住む少年と少女は、道ですれ違うのもイヤなくらいに仲が悪い。そんな2人が、失敗ばかりの科学者の松平さんの助手として、何番目かのタイムマシンの実験につきあうはめになった。
 オンボロ軽トラを改造したタイムマシンに、今度もやっぱり失敗だと確信した2人だが、予想外に実験は成功。気がつけば2人は9年間前の世界にいた……。
 続編『明日も彼女は恋をする』と合わせて一対の物語。

『鬼切り夜鳥子』 桝田省治  
 平安時代の陰陽師・夜鳥子の霊に憑依され、妖怪退治をすることになった女子高生・駒子が主役の学園伝奇小説。1巻だけ読むと分からないけれど、3巻まで一気に読むと「ああ、こういう因縁だったんだな」と納得。とにかく駒子が走って戦って脱いで脱がされて、それを平凡なスーパーマン久遠がフォローし、さらにケモスキーな知性派委員長の三ツ橋さんが予想外の角度から突っ込んで解決する話です。

『ホルモー六景』 万城目学
 一般には知られていないことだが、京都の各大学には古より伝わるホルモーなる競技のサークルがあり、日々競い合っている。立命館大学のホルモーサークル「白虎隊」に所属する細川珠実は、バイト先の料亭の蔵で「なべ丸」という文字の書かれた古い「長持」を発見する。その長持ちに入っていた木片を使い、彼女はどこの誰ともしれぬ相手と文通することになるのだが……という『鴨川ホルモー』の外伝短編集に収録された「長持の恋」がフィニィ・タイプの超遠距離恋愛譚です。

『3分間のボーイ・ミーツ・ガール』 綾里けい他
 ボーイ・ミーツ・ガールをテーマにしたアンソロジー集で、オーソドックスな青春ストーリーもあれば、アンドロイドやAIとの恋あり、時間や空間を超えた出会いと別れありと、バラエティ豊富な短編集。とにかくいろいろあって、甘ったるいのもあれば、「確かにボーイ・ミーツ・ガールではあるけれど……」と斜め上な展開に首をかしげるものもあり、飽きさせない1冊。

『未来のおもいで』 梶尾真治
 世間の喧騒を逃れて登った白鳥山で滝水浩一は、雨に降られて見知らぬ女性と雨宿りをする。
 一緒に雨宿りをしてコーヒーを飲んだだけの相手が忘れられなくなっていることに気づいた滝水は、彼女の忘れものの手帳を手がかりに自宅を訪ねてみるが、そこで知ったのは彼女がまだ生まれていないらしいと言うことだった……。
 これはちょっと珍しい未来話。

『タイム・リープ あしたはきのう』 高畑京一郎
 月曜日だと思って登校した鹿島翔香は、いつの間にか火曜日になっていることを知るが、友人たちは皆、翔香は昨日も普通に学校に来ていたというのだ。彼女の月曜日の記憶はどこへ行ってしまったのか……。
 『時をかける少女』のように読後感さわやかで少し不思議な時間の物語。


 ざっと目にとまるのはこのくらい。
 ちょっと毛色は異なるけれど、北村薫の『ターン』『スキップ』『リセット』の時間小説3部作に手を出しても良いかな。
 ここでロバート・ネイサンの名作『ジェニーの肖像』を筆頭に挙げようかとも思ったけれど、よく考えたらこれって、『君の名は。』の前半部分でぶった切った様な話なんだよね。いちばん雰囲気が近いのは、『この胸いっぱいの愛を』かな。
コメント
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