森達也 2013年1月 紀伊國屋書店
最近でた森達也氏の著書、タイトルみて、軽そうなんで面白そうだから(重いテーマのものだと、ちょっとは考える?)、とりあえず買ってみた。
日乗っていうから、日記みたいな、日々のまわりのこと書いて、短文の集まりかと、勝手に想像してたんだけど、元は月刊誌連載のものらしく、ひとつひとつの章が思ったより長いし、サラサラって流して終わりってわけぢゃなかった。
緑川南京という主人公を立てて、そのひとの視線で語ってるけど、まあどうみても著者本人という設定ではある。
で、いつものように、犯罪件数自体は減ってるのに、凶悪犯罪が増えてるかのように政府もマスコミもあおりたてて、厳罰化の方向へ進んでいく日本はどうなってんだろう、みたいなこともあります。
めずらしいと私が思うのは、海外へ出かけてったときのことが多く書かれてて、ヨルダンのパレスチナ難民キャンプの家にホームステイだとか、大木金太郎の故郷である韓国の島を訪ねたりとか、やっぱちょっと一筋縄ぢゃないとこへ行ってるのが面白い。
なかでも、ノルウェーの法務省や刑務所、そしてそれらのところで働くひとの多くを指導してきた、犯罪学の権威であるクリスティ教授を訪ねた二つの章は興味深かった。
厳罰化が加速する日本とは逆に、寛容化にすすむノルウェーの刑事司法関係者は、犯罪者に与えられるべきは苦痛をともなう刑罰ではなく、治療を施さなければならない、と考えているし、実行している。
クリスティ教授の原点は、大学院のとき自ら調べたノルウェーの過去。
第二次世界大戦時、侵略してきたナチスドイツはノルウェー国内に強制収容所を作ったが、そこで看守としてナチスに雇われたノルウェー人のなかには、収容者の虐殺を行った人たちがいた。
収容者を殺した人と、殺さなかった人、戦後十数年たって彼らを訪ね歩いた結果、そこには違いがあったという。
「とても小さな差違だ。でもその差違が行動を大きく分けた。殺した人は収容者と、ほとんどコミュニケーションを交わしていなかった。そして殺さなかった人は、収容者と頻繁にコミュニケーションを交わしていた。言ってみればそれだけだ。」
ここのところは、ヘタなフィクションよりはるかに鋭くて刺激的、こういうのがあるから、ついつい読んぢゃう。
最近でた森達也氏の著書、タイトルみて、軽そうなんで面白そうだから(重いテーマのものだと、ちょっとは考える?)、とりあえず買ってみた。
日乗っていうから、日記みたいな、日々のまわりのこと書いて、短文の集まりかと、勝手に想像してたんだけど、元は月刊誌連載のものらしく、ひとつひとつの章が思ったより長いし、サラサラって流して終わりってわけぢゃなかった。
緑川南京という主人公を立てて、そのひとの視線で語ってるけど、まあどうみても著者本人という設定ではある。
で、いつものように、犯罪件数自体は減ってるのに、凶悪犯罪が増えてるかのように政府もマスコミもあおりたてて、厳罰化の方向へ進んでいく日本はどうなってんだろう、みたいなこともあります。
めずらしいと私が思うのは、海外へ出かけてったときのことが多く書かれてて、ヨルダンのパレスチナ難民キャンプの家にホームステイだとか、大木金太郎の故郷である韓国の島を訪ねたりとか、やっぱちょっと一筋縄ぢゃないとこへ行ってるのが面白い。
なかでも、ノルウェーの法務省や刑務所、そしてそれらのところで働くひとの多くを指導してきた、犯罪学の権威であるクリスティ教授を訪ねた二つの章は興味深かった。
厳罰化が加速する日本とは逆に、寛容化にすすむノルウェーの刑事司法関係者は、犯罪者に与えられるべきは苦痛をともなう刑罰ではなく、治療を施さなければならない、と考えているし、実行している。
クリスティ教授の原点は、大学院のとき自ら調べたノルウェーの過去。
第二次世界大戦時、侵略してきたナチスドイツはノルウェー国内に強制収容所を作ったが、そこで看守としてナチスに雇われたノルウェー人のなかには、収容者の虐殺を行った人たちがいた。
収容者を殺した人と、殺さなかった人、戦後十数年たって彼らを訪ね歩いた結果、そこには違いがあったという。
「とても小さな差違だ。でもその差違が行動を大きく分けた。殺した人は収容者と、ほとんどコミュニケーションを交わしていなかった。そして殺さなかった人は、収容者と頻繁にコミュニケーションを交わしていた。言ってみればそれだけだ。」
ここのところは、ヘタなフィクションよりはるかに鋭くて刺激的、こういうのがあるから、ついつい読んぢゃう。