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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

21世紀のEV.Cafe

2013-05-08 20:13:49 | 読んだ本
村上龍と坂本龍一 2013年3月 スペースシャワーブックス
こないだ、書店で、これ見かけてブッ飛んだ(実際には飛び上がらないけど)、あの「エヴォリューション・カフェ」の続編かあ!?って。
『EV.Cafe』とは、その昔あった、村上龍と坂本龍一による、ゲストを招いての鼎談集である。
その後の私の、読書をはじめとする、いろんな何つーか勉強に及ぼした影響甚大な本である。
(あの本から始まって広がった私のもつ書籍のネットワークみたいなものをまとめてみたいと常々思ってるんだが。)
あれの続編なら、一も二もなく、買って読まねば。
どうやら、私がなんも知らなかっただけで、1998年ころEV.Cafeはまた行なわれていたらしく、それに2012年の村上・坂本両氏の対談を冒頭に付け加えたのが、今回の本らしい。
二人の対談のなにがおもしろいかって、私にとっては刺激的な文句があちこちで飛び出すからである。
今回もいろいろ。
たとえばメディア批判。
坂本「どの国のどんなメディアも国民がなにを望んでいるかっていう空気を読んで、それに沿ったものを提供しているだけ。」
村上「(略)約束をして政権を取ったのであれば、(略)やると言ったことを本当にやるかどうか「監視」をすべきでしょ。(略)日本のメディアは「なにを期待しますか?」でしょ。市民にそんなことを訊いているひまがあったら、ちゃんと監視すべきなんだよ。」(p15)
たとえば原発事故対応。
坂本「福島第一原発の事故でも、本来だったら半径100キロ圏内の人々は国が責任を持って避難させて補償すべきなのに、それをしない。独裁国家だったソ連のチェルノヴイリ事故のときはそれ以上の範囲の人を強制移住させてたわけで(略)第二次大戦中の軍国国家だった日本政府ですら、アメリカ軍の空襲の危険があるからと大都市の子供を田舎に強制的に疎開させてたじゃない? そう考えるといまの日本の政権は軍事政権以下でしょ。」(p17)
たとえばネットが発展した社会での生き方。
坂本「もし、ネットがなかったら、現実世界では落ちこぼれっていうか、居場所が見つからない人はいっぱいいるだろうし。」
村上「生きにくそうだよね、今の人たちって。(略)」(p48)
生物学みたいなのがからんでくるのは以前といっしょなんだけど、そこがまた刺激的。
村上「『ヒュウガウィルス』を書いた時に教えを乞うた免疫学の人はすごく面白い人でさ、多田富雄の弟子。『キレイな女の子と喋れば免疫力なんてバーンって上がるんですよ』とか言うんだよ(笑)。(略)マジに、アトピー性皮膚炎や花粉症を治したりするために『泥水』とか『空き地』とか『原っぱ』とかが『商品』になる時代が来ると思うよ。」(p52-53)
村上「前にも言ったことがあるんだけど、不登校児の脳をスキャンしたら、血流が半分になっていた。つまり肉体がものすごいストレスにさらされていて、学校に行ってはいけないという信号を出している。彼は社会的には『怠け者』っていわれるんだけど、彼のボディは、彼を保護してるわけです。」(p69)
日本の文化とか教育について。
坂本「歴史がないんじゃない? 日本って。仮にも西洋っていうのは、先の代がやったものを勉強し、新たに自分が発見をし、そして理論的にも発展していく。そういうのがないのね。」
村上「『過去』だけがあって、『歴史』がないんですよ。」(p81)
坂本「今までの日本って、学校教育なんかでもそうだけど、全体を底上げしようとしてた。均等ってことでね。でも一人のビル・ゲイツがいれば2万人雇用出来るわけでしょ。日本にもさ、1%か2%は優秀なやつがいるから、そいつらを育てるということをすべきなのね。」(p85)
日本の経済とか雇用に係る訓練の必要性について。
村上「たとえば商店街の人に景気はどうですかって聞くと、景気がよくなってくれないとうちも困るよって言うでしょ。わかってないのは、日本の経済がこれから回復しても、あんたのそのお店は潰れるんだよ、と。経済の構造そのものが変わるわけだから。そういうことが正直にアナウンスされないとだめなんだよ。」(p149-150)
なにかと不明瞭なことが多い日本の状況について。
村上「僕は最近、既得権益を持った人たちが逃げ切ろうとしているような気がするんです。ただ、確信犯的に逃げ切ろうとしているのではないような気がします。(略)経営者、政治家や官僚が逃げ切ろうとしている姿が、僕にはフリーターやホームレスと重なって見えてしょうがないんです。」(p166-167)
選挙公約とか税金の使い道について。
村上「コストが発生しているときに、誰が払っているのかというのがすごく気になるんです。臓器移植で臓器を運ぶ時、ジェットヘリの代金は誰が払っているんだろうとか、トキの雛が生まれた時も中国の専門家の渡航滞在費は誰が払うのだろうとか考えるんです。(略)公共事業などは、コストを引き受けるのは一般国民で、利益は恐らく別のところに行っています。でもコストの感覚がないので、誰も怒らないわけです。」(p182)
うーん、ビシビシきてるって感じがする、私はこういうのが好きだな、やっぱ。
鼎談のゲストは、表紙にもあるとおり、北野宏明、浅田彰、伊藤穣一、竹中直純、赤尾健一、塩崎恭久。浅田彰と塩崎恭久だけはかろうじて知ってて、あとは知らない。

ちなみに、もともとのEV Cafeは、どこ行っちゃったのか、見つからないまんまなんで、文庫版を買ったんだけど、やっぱ前の装丁のやつがどうしても欲しくなって、古本屋で買った。
コメント
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