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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

歴史を考えるヒント

2013-05-16 21:18:12 | 読んだ本
網野善彦 平成24年 新潮文庫版
最近読んだ本。
ニューアカデミズムつながりというわけでもなく、著者は中沢新一の叔父さんということでしか、私は知らなかったんだが。
この本は、1997年に行われた講座をもとにまとめたもので、話し言葉なんで読みやすい。
日本史を考え直すヒントとして、テーマに挙げられてるのは「言葉」である。
たとえば、「日本」って国の名前ができたのは、いつなのか。そういうことを知らないまま、日本という国が成立する前のことを指して「弥生時代の日本人」みたいな表現をしてしまうことが、歴史意識を曖昧にしてしまう。
>何よりも最も問題なのは、我々がほとんど全く意識しないまま、「日本」をあたかも天から授かった国名のように、今もぼんやりと使い続けているということではないでしょうか。
ということは、歴史の試験に出るからとかぢゃなく、現代に生きる人にとっても重要な、問題意識だと思う。
そういうことも考えないと、たとえば、やたら愛国心とかを唱える政治家の言葉のウラとか見抜けなくなるんぢゃないかと。
ほかにも、
>現在、我々が日常使っている言葉にはある時期に特別な色が塗られて、本来の意味が損なわれたり、(略)本来の意味とは全く異なる語感を抱かせられるようになっているものがあることに気付きます。
みたいに、言葉を軽視することの危険性を説いてる。
あと、具体的には、近世における武家以外の民に関して、なんでもかんでも「百姓=農民」みたいな言葉でくくっちゃうことが適切ではないと繰り返して指摘している。
みんながみんな田んぼで米を作ってたわけぢゃなくて、塩をつくってたひともいるし、林業を営んでたひともいるんだけど、そういう分野の歴史が明らかにされてないのは言葉の問題だし、商業や金融も発達してたのに用語がないから歴史がないかのように思われちゃってる。
>そうした多様な生業を営む人々をそれぞれに表現する言葉は、今のところ歴史学の世界では全く定着していません。
>今後の歴史学の大きな課題は、これまで切り落としてきてしまった農業以外の分野に目を向け、それに関わる学術用語を大胆に創り出し、これまで全く薄かった分野の研究を推進し、豊かにしていくことだと私は考えています。
>前近代の日本経済史の研究は農業を基本として組み立てられており、学術用語も農業に関しては著しく分化し、豊富ですが、その他の生業、手工業・商業などに関する用語はきわめて貧困といわざるをえません。
いつどこで誰かがバイアスかけたのかなあ? 歴史っていうか、教育に関する、ボヤッとしてると気づかない、力というか教えようとする側の意志の存在、気をつけないといけないとは思います。
コメント
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