many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

珍の巻・妙の巻

2013-10-03 21:38:16 | 諸星大二郎
諸星大二郎 2010年 ジャイブ
正式なタイトルは、「諸星大二郎ナンセンスギャグ漫画集(珍)の巻」と同「(妙)の巻」で(珍と妙の字は○で囲むのが正しいんだが)、2冊同時にちょっと前に出たものであるが。
ありがちなつくりで、当然、どこからかムリくり引っ張り出してきた“単行本初収録”作品を含むのがウリである。
こういうの好きぢゃないんで、悔しいから買わないでいたんだけど、やっぱ最終的には買ってしまった。
「珍の巻」のコンテンツは以下のとおり。
・ど次元世界物語
・逆立猿人
・怪談 竜の足跡
・怒々山博士 聖書を掘る
・陽はまた昇る
・蒼ざめた機械
・猫六先生執筆録
・総務課の猫
・ネット妖怪天国ニッポン
・硬貨を入れてからボタンを押して下さい
・無題
「聖書を掘る」は、怒々山博士シリーズのなかでは初収録ってことだが、逆に言うとこれを載っけて売るための口実でシリーズをそろえたってことだろう。
「蒼ざめた機械」は、「コンプレックス・シティ」に近い感じの絵柄なんだが、これも初収録だと思う。
猫に関する2題は、「猫本」って本に載ったらしいんだが、私は見たことないんで初めて読んだ。らしさのある軽いギャグもの。
最後の3つも初収録だけど、特に「無題」なんてのは、未完成原稿なんで、なにも出してこなくてもいいのにって気がする。著者はあとがきで「ページ稼ぎ」と自虐的に言ってるけど。
「妙の巻」のコンテンツは以下のとおり。
・奇妙なレストラン
・真夜中の会合
・客船セント・ピーター号上の昼食会
・禍れんだあ!
・ある災害
・人をくった物話
・珈琲店漂流記
・シマ男の逆襲
・コルク栓のある死体
・郵便ポストはなぜ赤い
・シマ男の復活
・コッシー譚
・ふしぎなナプキン
・星に願いを
・屋根の上の恋
・4コマごっこ
・BUS STOP・他
・オー氏の旅行
・アリゲーター
・毒を食らわば
・辛口怪談
・砂漠の真ン中に
「星に願いを」が初収録らしい。1978年の作品、地球の少女の願いをキャッチした、宇宙のかなたのモロ星の宇宙人が一肌脱ぐナンセンスマンガ。
「屋根の上の恋」も私は初めて見た。1974年の作品、「真夜中の会合」なんかに似てて、女の子の食べようとしたケーキとかヤキイモが逃げ出す話。
「BUS STOP・他」も初収録らしい、これらは一コマもの。

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百鬼夜行―陰

2013-10-02 22:23:41 | 読んだ本
京極夏彦 2004年 講談社文庫版
もういいやと思って、やめてたんだけど、最近になって、また読んでみた、京極堂シリーズ。
こないだテレビ映画で「姑獲鳥の夏」と「魍魎の匣」を見たりしたこともあって。
でも、この短編集には、京極堂は出てきません。
外伝というか、カバー裏によれば「サイドストーリーズ」ということで、かつての登場人物が出てきて、たぶん正編のそれぞれの事件の前の話ということになるんぢゃないかと。
ただし私は、なんせ細かいことはおろか、登場人物たちの名前も、ろくにおぼえちゃいないんで、なんかマニアックな仕掛けとかあったとしても、全然わかっちゃいない。
どうでもいいが、諸星大二郎が京極堂トリビュートとして描いた「百鬼夜行イン」ってマンガのタイトル(導入部で百鬼夜行が旅籠=INNに泊まるというダジャレ)は、これのパロディーだったのかと、いまさら気づいた次第。
コンテンツは以下のとおり。例によって妖怪の名前だとおもうが、知らないものばかりで、よくわからない。
うーむ、諸星を知ったのと同じくらいの若さのときに作品に出会ってたらのめりこんだかもしれないけど。トシとると、そこらへんの、探究心とか突っ込んで勉強しようって根気がなくてダメだねえ。
「小袖の手」(こそでのて)
「文車妖妃」(ふぐるまようび)
「目目連」(もくもくれん)
「鬼一口」(おにひとくち)
「煙々羅」(えんえんら)
「倩兮女」(けらけらおんな)
「火間虫入道」(ひまむしにゅうどう)
「襟立衣」(えりたてごろも)
「毛倡妓」(けじょうろう)
「川赤子」(かわあかご)
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高い窓

2013-10-01 21:19:22 | 読んだ本
レイモンド・チャンドラー/清水俊二訳 昭和63年 早川書房ハヤカワ・ミステリ文庫版
ここんとこ機会をみつけては読み返してる、チャンドラー=フィリップ・マーロウもの。
本作は、7つある長編の三作目で、1942年の作品らしいんだけど、私が持ってるこの文庫は初版。まあ、そのへんは出版側の都合でしょう。
事件のほうは、金持ちの未亡人が依頼人で、家の秘密を守ったまんまで、家から持ち出されたある貴重なものを見つけて取り返してほしい、といわれるとこから始まって、やがて殺人事件とかに巻き込まれてく。
「大いなる眠り」なんかに比べると、全体の進みっぷりとしては、謎解きというか、犯人捜しというか、そのへんが展開わかりやすい。
チャンドラーの書く私立探偵マーロウものが、なんか他の推理小説とちがってスッキリしないってのは、チャンドラー自身が、伏線をはったうえでのトリックを仕掛けたりすることをよしとしないで、リアリティーのある物語を書くことを目指してたから、らしい。
そう思うと、作者のご都合主義でストーリーを展開することなんかよりも、主人公の視点によってのみ得られる情報をなるべく忠実に描く、ってほうにいっちゃうから、これみよがしな盛り上げ方になってこないんで、明快ぢゃないなあと感じることになるんだろう。
ところで、表現だけをとりあげてみれば、あいかわらず、面白いよ。
たとえば、
>(略)居眠りをしている歯抜けじいさんの唇のようにひろがったりすぼんだりしているネットのカーテンがかかっている窓が二つ。
とか、
>私は腰かけから降り、一トンの石炭がシュートをすべり落ちて行くような静寂の中をドアの方に歩いていった。
とか、って言い方ね。ハードボイルドらしくて、気の利いた比喩。
ただ、これだけだと、とってつけたような言い方してんぢゃねえのって気がしないでもないが、リアリティーを追求してるチャンドラーは、そういうウソっぽくても面白いこと言うだけなんて技法をとってるわけぢゃない。
そのへん、
>かがみこんで、二本の指を頸部の大動脈に押し当てた。脈は打っていなかった。まったくなくなっていた。皮膚は氷のように冷たかった。氷のように冷たいはずはない。そう感じただけなのである。
とか、
>鳴っているベルは気味のわるい音だった。音に理由(わけ)があるのでなく、聞いている耳のせいだった。
とか、って書き方をしてるのをみると、「そう感じただけ」「聞いている耳のせい」って、話者の主観にすぎないってことをアッサリ認めて表明してるんである。こういうのがリアルってことなんだよなあって思う。
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