本書は、岩波書店から出た奈良の仏像の本。今月でたばかり。
何度も取り上げられたテーマなだけに、どうかと思ったが、流石、岩波、すばらしい本だった。
仏像ファンが増えていると聞くが、ここまでの洞察をして、鑑賞している人は、少ないだろう。
著者の金子さんは、"仏像 一木にこめられ祈り"、"国宝 薬師寺展"、"国宝 阿修羅展"等を企画された方だそうで、今の仏像ブームの仕掛け人と言える人かもしれない。
テーマとしては、超有名な5つの仏像についての論説だが、その歴史的背景、芸術的な論点、周辺の仏像等、総合的な分析になっていて、すばらしい。
例えば、興福寺の八部衆が、少年の姿になっているのは、光明皇后の子供が夭折した影響ではないかとか、三月堂に、戒壇院の四明王があったのではないかとか。橘夫人念持仏の釈迦三尊像についての分析など、目から鱗だ。
マニアックな仏像マニアにも、仏像に興味を持ち始めた人にも、楽しめる本。
それにしても、何気なく見ている仏像に、こんなにトリビアがあるとは。
本当に、製作者がそこまで意識していたかはわからないが、奈良時代の仏像の素晴らしさを、再認識させてくれる本であることは、間違いない。
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