12期生 村山です。
少し前の話になりますが、3月に松下政経塾に関する講演を聴講しました。講師は「松下政経塾政経研究所」所長の金子一也氏です。その中でとても印象に残った話がありましたのでご紹介します。
経営の神様と言われる松下幸之助の口癖は、大阪弁で「それ、ええなぁ」と言うことだそうです。どんな話でもまず「それ、ええなぁ」と言うそうです。
それは、こういう理由からです。
発想の切り替えができる、気持ちが切り替わると人生が変わる。そのためには素直な心が必要。素直な心を持つには「それ、ええなぁ」を口癖にせよ。
人の意見を聞く時は、それに反対でも、相手に不快感を抱かせて反発されないよういきなり否定せず“yes, but”で答えると良いと言われます。しかし、松下幸之助の言葉はもう少し奥が深いようです。
塾生から、戦国時代の3武将になぞらえると松下さんはどのタイプですか、と聞かれたことがあったそうです。
織田信長(鳴かぬなら殺してしまえホトトギス)
豊臣秀吉(鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス)
徳川家康(鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス)
それぞれの気性を表した有名な句です。これに対して松下幸之助は次のように答えたそうです。
革新的なことをやったのは織田信長だが、平家が平家によって滅んだように、信長は信長によって滅んだ。驕れるもの久しからず、だ。責任はすべて自分にある。経営者は歴史をこのように読むと良い。天下を取るような人はちょっとしたことで腹をたてずに、辛抱強く待つ「大忍」も大切だ。
そして、自分は「鳴かざればそれもなお良しホトトギス」だ。
それはそれで認めて受け入れ、それをどう活用するかが経営者だということだそうです。
こんなエピソードがあったそうです。営業部長が、ある暗い社員がいて営業に向かないから替えてくれと松下社長に言ったそうです。それに対して松下幸之助は「それ、ええなぁ」と言ってから、「葬式は結婚式の倍ないか。」と答え、その社員を異動させなかったそうです。この部下をどうにかして育てよう、どうにかして活用しようと考えないとダメだということです。
営業に行って10件のうち9件取れなかったという社員には、「10件のうち1件しか取れないかぁ。それ、ええなぁ。100件行ったら10件取れるなぁ。」と答えるそうです。
また、ライバル会社の悪口も決して言わなかったそうです。「A社はこういうところが良い。B社はこういうところが良い。我が社は、A社とB社の良いところとこういうところが良い。」あれも良い、これも良い、さらに良いという発想です。
まさに経営の神様と言われるだけのことはあると思いました。これまで、もう松下幸之助は昔の人で今さらと、ほとんど関心を持っていませんでした。でも、自宅で電球ソケットを製造販売していたところから、世界の松下電器産業まで会社を大きくしただけあって、器の大きさが違います。
「それ、ええなぁ」と一見優しそうですが、100件行ったら10件取れるとか、あれも良い、これも良い、さらに良いというのは、実はとても難しく厳しい要求です。
私も真似をして、部下に対して「それ、いいねぇ」とまず言ってみようと思います。そして、優しくて、でも厳しい上司を目指したいと思います。が、そのためには、まず自分を相当磨かなかければいけません。それに、そもそもそんな器が自分に有るのか・・・・・?