みなさま、こんにちは。14期生の高橋裕司です。
今日はここ一年ほどで、ぼちぼち話題になってる労働者派遣法について。
今年になって、労働者派遣法の改正案が国会に提出されました。
何とも3度目の提出とのことで、過去2回は条文の単純な記述ミスや、与野党間の政治的駆け引きなどでいずれも廃案となったものです。
私は現在、IT系の職種で働いているのですが、今回の労働者派遣法の改正、まじめに受け止めるとしたらIT業界へのインパクトは相当大きなものなんじゃないかと思います。
厚労省公表の概要を見ると、今回の改正の主なポイントとして、
1.特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別を廃止し、全ての労働者派遣業を許可制とする
2.派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年を上限とする
3.派遣就業が臨時的・一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する
4.専門業務等のいわゆる「26業務」を廃止する
などとあります。
特に2についてはIT業界の場合、長年顧客先に常駐して「現場の主」のようになったエンジニアがプロパー以上にその企業の情報システムに精通し、支えているということは往々にしてあります。情報システムは大抵の場合、その導入から機能追加・改修を数多く経て現在の姿になっており、その経緯や歴史を知る人は限られていたりします。その経緯や歴史を知る人がまさに「現場の主」であり、かつそういった人材は業務委託の外部エンジニアであることが多々あります。
そのエンジニアが3年上限で現場を変わらなければいけない?エンジニアが同じ現場で働きたくても続けられない?派遣元企業は新たな現場を開拓し続けなければいけない?エンジニアの交代によってシステム品質が低下しないか?
もしも、この改正法案が変更・修正なく施行された場合、外部エンジニアを受け入れて情報システムを切り盛りしている日本中の企業は、3年後に大混乱を迎えるのではないかと思います。情報システムに関する業務の場合、継続性は極めて重要な要素であり、また属人性を排除しきれない業務でもあります。たとえば、スーパーSE(スーパーシステムエンジニア)が1人いれば、凡庸なSE数人分のパフォーマンスを発揮するとも言われたりします。
幸い、最大3年後までの見直し検討が考慮されているとはいえ、エンジニアが所属する企業(いわゆる派遣元)、エンジニアを受け入れる企業(派遣先)、そして派遣されるエンジニアにとって、本当に幸せなんだろうかと疑問に感じる部分もあります。
IT業界は、重層下請構造や成果を無視した"人月(にんげつ)"による見積もりなど、派遣以外にも多くの問題を抱えています。
「派遣」という就業形態は、たとえば主婦のような、比較的時間の自由度を求めるひとたちにとっては極めて有用である一方、企業側の論理としては「雇用の調整弁」的役割であることも事実としてあります。
また、従来の登録型の一般派遣労働者は非正規社員の典型でもあり、ワーキングプアなどの問題も抱えています。
私自身、この派遣に関する最適解を持ち合わせていないため明確なことは言えませんが、「労働者の権利」を考えると、派遣業界というのは「規制強化」の方向に向けて行った方が良いように思います。