こんにちは、事務局の佐野です。
僭越ながら、先日MBC総研の先生方にマイナンバー制度に関する講演をさせていただきました。長年官公庁のICT推進に関わって参りましたので、制度そのものについては3年ほど前から認識しておりましたが、民間企業の視点でこの制度へどう向き合っていくべきかという視点でお話しするのは今回初めての試みでした。お陰様で講演準備を通じて、これまで耳にすることが無かった新鮮な情報に触れることができ、大いに自分自身の勉強にもなったと思います。講演ではそんな話題も織り交ぜながらお話しさせていただいたのですが、実はその後も驚きの情報が次々飛び込んでいます。その中でも、特にインパクトが強かったお話をここでご紹介させて頂きたいと思います。
それは、企業の「厚生年金および健康保険未加入問題」です。
社会保険(厚生年金と健康保険)は、すべての法人に加入の義務があります。ところが、結構世の中の法人にはこの社会保険に加入せず、保険料の支払いを免れているところがあるようです。国税庁によると、源泉徴収を行っている法人数は約250万ヶ所。一方で、年金機構が保有する社会保険の加入事業者数は約180万ヶ所。その差約70万ヶ所が社会保険料の支払いをしていない可能性があるというのです。現在、年金機構はこの約70万ヶ所の事業者に対して調査を進めており、立ち入り検査などを実施するなどして、詳しく調べているそうです。もし、社会保険料の未払いが確認できた場合は、最大2年間遡って保険料の支払いを請求するのだそうです。おそらく、未払い状態の企業は、比較的経営が苦しい中小・零細企業が多いのではないでしょうか。特に、建設関係の事業者が多いという話も聞きます。そうした事情を抱えた事業者に、一気に社会保険料24ヶ月分の支払いが発生したらどういうことになるでしょう。大きな経営上のインパクト(というよりもダメージ)になることは間違いありません。
今回マイナンバー制度の導入されると、すべての登記法人には法人番号が付番されます。法人番号にぶら下がる形で、源泉徴収データや社会保険データなどが紐づけられるようになります。そうなれば、保険料の未払いなどは瞬時に見極められます。もしかすると、今調べられている70万ヶ所以外にも、未納の事業所が見つかるかもしれません。また、社会保険の問題以外にも隠れた不正があぶりだされるかもしれません。公平・公正な社会を作ることがマイナンバー制度導入の目的でもあります。制度開始後は、いままでのような不正はもう行えません。心当たりのある経営者は、これを機に本来あるべき姿に立ち返るべきでしょう。
払うべきものを払わないのは悪いです。ただ、これまで縦割り行政の結果として、未納や滞納管理を徹底できず、それを放置してきた行政側の責任も無いとは言い切れません。経営上のインパクトが強い事業者に対しては、一方的な支払い請求だけではなく、経過措置や自治体からの貸付制度などのフォローは必要ではないかと思います。