「稼プロ!」事務局の小林 隆です。
今回は、私が外国及び外国人との取引でおかした失敗の経験から感じている、日本人の「国際化」についてのひとつの側面を記載してみました。
リオの五輪もいよいよ終盤を迎え、各国のアスリートの活躍や感動のシーンが、連日報道されていますが、その一方で日本人に対する「スリ」や「強盗」などの犯罪被害が、開幕後1週間で9件日本領事館に届けられたとのニュースを聞きました。かくいう私もこの7月の末、カンボジアのプノンペンで、スマートホンをひったくられました。
私の場合、バイク・タクシー(バイクの2人乗りで、人を目的地まで運ぶタクシー)で移動中、日本なら銀座のど真ん中とも言うべき目抜き通りの路肩で、バイクの運転手にスマートホンで地図を見せていたところ、後ろからバイクで接近した犯人に、スマートホンをひったくられたという次第です。
最近、ご当地プノンペンでは、日本人の旅行者の盗難被害が多く発生しています。私のようにスマートホンが盗難されるケースは毎日、資本金として持参した数百万円をトゥクトゥクの座席から鞄ごと盗難されたこともあるとのことでした。私の事件の2日前には、知人の女性が、身に着けていたダイヤモンドのネックレスを、路上でひったくられそうになった との話も聞きました。危険情報は現地在住の方から聞いており、それなりに認識をしていたにもかかわらず、この有様です。
思えば日本にいて、路上でスマートホンをひったくられることは、ほぼ皆無です。ましてや乗り物に乗っていて、他の乗り物が近寄ってきて襲撃され、盗難被害にあうことも、まずありません。私たち日本人は、習慣として、身を守りながら町を歩くことになれいていないといえます。
ビジネスの進め方についても、しかりです。
よくある話では、現地で日本語を話す現地人を良い人と勘違いし、だまされるケース。
よく考えると、「日本語を話す」イコール「良い人」という方程式は成り立つわけがないのですが、ついついだまされる、というケースを耳にします。
これもまた、かくいう私には、失敗の経験があります。
中国系マレーシア人より案件を受け、仕事を実施しましたが、未だに請求額の支払いを受けていないものがあります。私の失敗は、契約書を交わさずに仕事をスタートしたことです。海外の相手と、契約書を交わさずに仕事を始めるのは「もってのほか」とわかっていたのですが、紹介者がいたこと、仕事の範囲や工数などが不明確だったこともあって、相手を信頼して仕事をスタートさせました。仕事が概ね終了し、後日実施した業務に対し双方合意の上対価が決まり、支払いの請求書を送付してくれと依頼があったので、請求書を送付しました。しかし、その後連絡が途絶え、支払いはなされませんでした。今となっては、契約書がないため、請求の正当性が証明できない状況となっています。
こうした事例は、私の甘さによるものであるとの見方もありますが、一般に多くの日本人は性善説に立ってものを考える習慣があるのではないかと思います。
しかし、外国に行った時、海外の企業とビジネスを行う時には、性悪説に立って、リスクを排除する習慣を持たないと、身が持ちません。好むと好まざると、これは事実としてとらえなければならない部分であると私は考えています。
各国の習慣やものの考え方、治安状況は、日本のそれとは大きく異なります。相手の国にはその国の歴史、風土、社会構造、経済状態、宗教等を背景に、人々の考え方や社会の常識が培われています。したがってその国とかかわって行く以上、まずそれを学び、受け入れる覚悟が必要です。「郷に入れば郷に従え」それを前提にして、相手の国に入っていかないと、
相手に対する不信感ばかりがつのることとなります。
スポーツ観戦でも、応援した後は、スタンドのゴミを持ち帰る日本人。落とした財布が戻って来る国、日本。株主のための短期の利益より、社会の公器として中長期の利益を考慮する日本型の経営。
私は、この日本の国の国民性や考え方が大好きですし、誇りを持っています。ただ、それをこちら側から相手に求める前に、国際社会ではまず相手を受け入れることを学ばなくてはなりません。併せて、その社会に適応するためのスキルや経験値を上げることも必要です。
今回の私は、頭でわかっていても、その洗礼を受けることとなりました。海外でそんな負の出来事があった時、私はなぜその事業に取り組んでいるのか、なぜその事業がやりたいのか、問い直します。事業に取り組む上での「思い」や「信念」は、どんな事業を行うにも大切ですね。
私も今回の事件やこれまでの経験を教訓に、海外における守りのスキルや考え方を高め、自身の国際化を進めてゆきたいと思います。