みなさん、こんにちは。
19期の森(宏)です。
私は先週の金曜日から最後の実務補習に入っています。
今回そのヒアリングで、以前読んだ本を思い出したので、そのことについて書きたいと思います。
本は、IGPI経営共創基盤の代表取締役CEO冨山和彦氏の著書「なぜローカル経済から日本は甦るのか」です。
この本に興味を持ったのは、この本が主役とする地方の経済が、人口減少で高齢化が進み、ジリ貧なイメージしかないのにも関わらず、なぜ地方から日本が蘇るのか?と思わせるところでした。
実際、読み進めていくことで、これが正論であることがわかっていきます。
まず、地方では労働力人口が急速に減る一方、高齢者の割合は増えていることから、特にサービス業の人手不足は都市部よりも深刻であると指摘します。
次に、産業をグローバル産業とローカル産業に分け、前者はグローバルに競い、その分野でトップを狙い続けなければならない宿命のある、主に製造業を中心とした産業群、後者はドメスティックな市場で地産地消的な、主にサービス業を中心とした産業群と定義します。
実は、グローバル化というのはあまねく進展していくと思われがちですが、実際、日本より進んだアメリカやドイツでも、相変わらずドメスティックな仕事に就き、ローカルな経済圏で生活する国民が大半であるということにも言及します。
経済が成熟していくにつれて、第2次産業から第3次産業に経済構造の主体は移っていくと言われ、既に日本は他の欧米の先進諸国と同様に第3次産業が7割を占めています。このことから、グローバル企業の育成・支援も重要ではあるが、ローカル産業≒サービス業の効率化と成長に向けた施策を打っていく方が、合理的に言って日本経済復活に一番有効であると指摘していきます。
そして、地方においてサービス業は、確かに人手不足で、にも関わらず賃金は低いために労働参加も促進されない負のスパイラルに陥っているとしながら、まだまだ地方の企業はやるべきことをやっておらず、そのような非効率な企業が補助金や金融緩和によって生きながらえているという面も指摘します。逆に言えばそれなりの経営者がまともに経営を行えば、伸びしろは非常に大きい、と期待をかけます。
肝心のローカル企業の効率化をどのように行っていくか、については
①やるべきことをやり、やらなくてもいいことはやらない効率的な経営に努める。(この仕分けには「顧客エコノミクス」の観点、つまり顧客にとっての経済価値にも留意すること。単純な企業のコストの論理だけではない)
②成長のためには、比較優位な経営資源は何か、どこで稼げており、何がそのドライバーになっているのか、を把握することが必要。
④一方で非効率な企業は退出してもらって、従業員はより高い給料をもらえる企業に集約されていくべき。(それによって日本の低い労働生産性も上がる。)
⑤集約化(M&A等)にあたっては、密度の経済が効くのか、規模の経済が効くのか、に留意する。(ローカル企業は基本的に密度の経済が強みとなりやすい。)
⑥究極的には地域で効率的な企業は寡占または独占状態になる。
そして行政としても、地域の中核都市への人口集約化を進め、都市機能の効率化を図るべきである。
というふうに、本書では明解な主張(私の文章では明解じゃないですが)が展開されていきます。
この本を読む前は、グローバル化というものに、地方経済は抗えないようなネガティブなイメージばかりをもっていました。それが実はそれほど悲観するものでもない、ということが書かれていて、私にとって新鮮でした。
さらにローカル企業、特にサービス業の生産性向上(M&Aも含む)が日本経済を甦らせるという展開、それこそ診断士の活躍が期待されるフィールドではないでしょうか。
ところでなぜ、この本をヒアリングで思い出したのか、ですが、今回の会社は23区外(むしろ都外)のサービス業で、ローカルといえばローカル。ヒアリングの中で、「ここ数年同業他社の廃業が多くて、自然とそこの顧客がうちの顧客になる」というようなことをおっしゃっていました。また、その廃業理由も「人手不足だから賃金を上げて経営悪化するか、上げられない企業は人が確保できず、結局廃業になる。」そのようなかたちで、業界内で集約化が徐々に進んできている、という話でした。
そんなわけで、著書の内容のようなことが(部分的にですが)リアルに進展していっているのだなあ、と感じたのでありました。
以上毎回長くて申し訳ありません。