19期生余合です。
今回で3回目のブログです。
第2回、3回の講義で「書く」ことについてのルール、お作法を学びました。
この「書く」ことのルールは業界によっては法令諸規則で厳しく決まっており、違反すると「法令違反」として罰せられることもあります。
私がこの3月まで従事しておりました証券業界にもそういったルールがあります。
実は「書く」だけではなく「言っても」いけない、というルールです。
例えば、「絶対」とか「必ず」といった言葉はタブー。これは「断定的表現の禁止」というルールで、株式や債券あるいは投資信託などは市場の状況次第で利益が出たり損を蒙ったりするので、その商品の勧誘をする際にはパンフレットや口頭での説明でこの2つの言葉を使うことは基本的に禁じられています。
また講義でも出ましたが、パンフレットの前半で述べたことと後半に記載したことが矛盾することも「誤解を生ぜしめる表現」としてダメです。
例えば前半で「金利が上昇します」と言っているのに最後の部分で「景気は悪くなる」と書いたとします。景気が悪くなると普通資金需要が減退して金利は下落するので前半後半で辻褄の合わないことになります。「金利の上昇」と「景気の悪化」との矛盾した表現を同じパラグラフで書くことはまずありませんが、比較的長い文章を書いているうちに最初と最後で矛盾したことを書いていることはそれなりの頻度であります。
もう一つ例を挙げると、「顧客適合性の原則」というのがあります。これは「商品のメリットデメリットをよく理解できる顧客にのみ販売すべき」というルールです。
新聞でも時々出てきますが「デリバティブ=金融派生商品」を組み込んだ商品は、一般の顧客が「これはリスクだ」とすぐに理解できるリスクをデリバティブで制御する一方「利益あるところリスクあり」で他のある意味「わかりにくい」リスクに変換しています。この「わかりにくい」リスクをきちんと説明するにはどうしても長い文章になりますし、知らないうちに専門用語を多用していることもあります。長い文章は一般に読まれませんし、専門用語の注釈も小さい字で書くことが多いのでこれも読まれません。専門用語を理解し、短い文章でもよく理解できる「お客様」に適合する商品であり、この「お客様」を念頭にパンフレットを書くことになります。「誰に対して」書くのか、は3回目の講義でも重要な要素でした。
こういったルールを守らず違反のまま記載をほかっておくと、当局検査などで指摘され、場合によっては行政指導を受けるので、証券会社や資産運用会社では顧客へ配布する文章をすべてチェックする専門部隊を設置しています。
私もついつい「これでいいや」と文章を書く基本を守らずあるいは無視して書いてしまうこともありますが、長年勤めた業界での「厳しさ」を再認識し、小論文に向かいたいと思います。