みなさん、こんにちは。19期の西山です。個人的には最後のブログ投稿となり、何を書こうか悩みましたが、これまで通り直近の話題から関心のあるテーマを書こうと思います。
以前、このブログでパンデミックと人権リスクについて書きました。コロナ禍で企業と従業員の関係に変化が起きています。具体的には、従業員に対する安全配慮義務やテレワークなどの新しい働き方のように、企業が注意しなければならないことが増えました。
そんな中、米国発の大きな人権問題=BLM(Black Lives Matter)が世界に広がっています。黒人男性が白人警察官に足で首を絞められ亡くなった事件をきっかけに、黒人だけでなく様々な差別や格差問題が噴出しており、収束の兆しは見えません。人種などにもとづく差別や格差は古くからある問題ですが、今回がこれまでと違うのは普段、政治や社会問題と距離を置きがちな企業が態度表明や事業戦略の修正を求められている点です。
たとえば、人種差別問題への意識や取り組みが弱いとして、スターバックスなどの大手企業が相次いでフェイスブックから広告を引き揚げています。米プロフットボールリーグ(NFL)のワシントン・レッドスキンズは、先住民のネイティブ・アメリカンを示す「赤い肌」というチーム名を見直すと発表しました。ユニリーバはスキンケア製品における“ホワイト”や“ホワイトニング”、“フェア”といった名称の使用を廃止すると決め、ロレアルやジョンソン・エンド・ジョンソンが追随するなど、化粧品業界全体に広がりを見せています。
翻って日本企業はどうでしょうか。たとえば、資生堂や花王など国内化粧品メーカーが「美白」表現をやめるという話は聞こえてきません。全般的にBLM運動に対するリスク意識は高まっていないように見えますが、LGBT運動の高まりなど社会の様々な面で少しずつ変化は起きていると感じます。特に20代を中心とするミレニアム世代やその下のZ世代は気候変動や人権問題などの社会課題にどの世代よりも敏感だと言われます。次の社会を担う若者の価値観が変化している以上、「面倒な問題には首を突っ込まず、黙々と稼いでいればいい」という姿勢は自社のステークホルダーから受け入れられなくなる恐れがあります。
日本でもESG投資という言葉が浸透しつつありますが、これまで日本企業はE(環境)とG(ガバナンス)への取り組みが中心だったと思います。しかしこれからはS(社会)にも向き合っていかないといけません。これは大企業だけでなく、中小企業も含めた社会全体の課題です。自社のサプライチェーン上で人権問題を引き起こしていないかチェックするなどの「守りのS」はもちろん、自社の活動を通じてよりフェアで生きやすい社会を創り出していく「攻めのS」にも目を向けていく必要があると思います。