みなさん、こんにちは。稼プロ!20期生の加納久稔です。
ご承知のとおり、1月7日に2度目の緊急事態宣言が発出されました。その前には厚生労働省が「新型コロナの影響で解雇や雇止めにあった人は、見込みを含めて8万人を超えた」と発表しましたが、今後ますます増えるだろうと予想されます。
今回は、中小企業の経営者や管理職として是非とも押さえておきたい解雇や雇止めに関するポイントを、3つほどご紹介します。
1.成績が悪い社員は解雇できる?
解雇とは、使用者の一方的な意思によって労働契約を解約することで、「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」が代表的なものです。
「普通解雇」は労働者について仕事に適性がないとか心身虚弱で業務に耐えられそうにないとかいう場合、「懲戒解雇」は労働者が企業秩序を違反した度合いが非常に大きい場合に行います。一般的には就業規則に対象となる事由が規定されていますが、共通点は労働者側に非があることです。
一方「整理解雇」とは、使用者が業績不振などの経営上の理由により人員削減の手段として行うものです。解雇する主な理由が労働者にあるわけではないので、判例では4つの要素(人員整理の必要性、解雇回避努力、被解雇者選定の合理性、手続きの妥当性)が求められています。人員整理の正当な経営上の必要性があり、解雇を回避する努力を尽くしたにもかかわらず人員を削減しなければならない場合には、その対象者選定に合理的な理由が必要とされ、かつ労働者にそれらの内容を丁寧に説明して納得してもらえる努力をすることが求められるわけです。
被解雇者選定の合理性について、経営者としては「人事考課が悪い者から」と考えることが多いでしょう。しかし、人事考課は一定の基準があるとはいえ、人間がつけるものです。恣意的にすることもできます。気に食わない労働者に対してわざと悪い評価をつけ続けることもできるわけです。したがって、裁判になった場合には「合理性がない」として解雇が否定されることもあります。
なお、勤続年数や年齢は経営者の介入の余地がありませんが、設定の仕方によっては合理性を否定されることもあります。ケースバイケースであり、悩ましいところです。
2.非正規労働者は解雇しやすい?
非正規労働者(ここでは有期雇用労働者とします)の解雇は正規労働者より簡単にできると考えている方が多いと思いますが、実は逆なんです。
労働契約法第17条第1項では、「使用者は、有期雇用労働者はやむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでは解雇できない」と規定しています。ここでの「やむを得ない事由」とはかなりハードルが高い、正規労働者を解雇するときよりも厳しいと考えて良いでしょう。
使用者はいつまで雇用することを契約有期雇用労働者と約束した。それを反故にするのですから、解雇無効となるか債務不履行の責を負うことになるわけです。有期雇用労働者の解雇はかなり困難、とご認識ください。
3.契約期間満了ならいつでもOK?
有期雇用労働者の契約期間満了時に契約更新を行わず、労働契約を終了させることを「雇止め」と言います。「契約期間が終わったんだから、更新しなくてもよいのは当たり前ではないか」と思われるかもしれませんが、そういうわけではありません。
労働契約法第19条では、契約更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないと判断される場合や、契約期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合は、労働者が契約更新を希望したら雇止めを認めないと規定しています。
たとえば、契約更新の際に新たな労働契約書を作成せずにそのまま雇用を続けたり、更新後しばらくたってから後追いで契約を結ぶことを繰り返したりした場合は、前者に該当します。また、契約更新の手続きはきちんと行っていましたが更新の回数が多かったり通算期間が長かったりした場合や、会社から次の更新を期待させるような言動があった場合は、後者に該当します。
有期雇用の労働契約締結時には契約更新の有無と、更新する場合があるとしたときにはする/しないの判断基準(たとえば、契約期間満了時の仕事量、労働者の能力や成績、会社の経営状況など)を明示するよう求められています。契約期間満了の1か月前までにはこれらの基準により更新すべきかどうかを判断し、労働者に会社の意思を伝えることが必要となります。
4.最後に
1から3については罰則があるわけではありません。また、労働者が行政機関や裁判所に訴えを起こしてから問題となるものです。「だからそんなに気にしなくていい」というわけではなく、訴えられても会社がしてきたことをきちんと説明できるようにしておくことが大切です。
コロナ禍で大変な状況ではありますが、労務面でのトラブルが起きる前に専門家へ相談されることをお勧めします。
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