20期生の大井です。今回は本の紹介です。流行りもののDX本ですが、個人的な縁もあり感じるところも多く、その一端をご紹介します。その本は、、、
島田太郎、尾原和啓著「スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX」
メイン著者の島田太郎氏は昨年に経営再建途上の東芝にCDO(Chief Digital Officor)として入社し、スマートレシートに代表される同社のDXビジネスをドライブされている方です。島田さんは、かつて外資系CAD/CAE/PLMベンダー日本法人のトップを務められるなど、私の専門分野の技術開発系IT業界の超有名人です(直接の面識はありません)。その後、SiemensでドイツのIndustry4.0ビジネスも体感されており、私はどちらかというと舶来DXを日本に展開する黒船的な方だと思っていました。ですので、純日本的会社に見える東芝に入られたと聞いたときは、ものすごく驚きました。
この本で島田さんは、日本はDXで一見惨敗状態に見えるけれども、ものづくり技術の強みを活かし、製造業DXで覇権を握る「大逆転」の可能性があると説いています。それが東芝入社で確信に変わったとのことです。その理由は、
- 日本の製造業は外資ほどドライになれず合理化が進まなかった。ただ、この副産物で貴重なものづくりアセット(技術・人材)が埋もれている
- 一方、日本の製造業はデジタル時代におけるこの貴重なアセットの活かし方を知らない
- GAFAも製造業DXでは技術の蓄積がまだまだ追いつかない
と感じたからだそうです。私は、特に1つ目の見方が驚きでした。外資系出身ならではの価値の見出し方と思います。次にDX実現で大切なこととは、
- もの売りのビジネスモデルから、ものを中心にお客様のValue Chain全体にビジネスを広げること
- あくまでお客様視点で、テクノロジーがもたらす将来の姿を予測しながら、顧客体験を最適化していくこと
- スタートアップ精神
と言い切ります。1つ目は、そんなに敷居が高くないことですよね。ネット使って隣まで商売を広げてみようということです。そして、もう1点、面白い見方と感じたのは、
- GAFAが天下を取るプラットフォームビジネスは小売・広告。実は米国のGDPのたった約7%
- 製造業は25%を占める。この分野のデータ量は膨大で宝の山
- 日本企業は、ものづくりの分野にスケーラブルネットワークを構築できるかが勝負どころ
という点です。なるほど、市場の可能性としてこういう見方があるのか、と恐れ入りました。
実際のところ、3Dなどに代表されるものづくりへのデジタル技術の活用は、中国や台湾が進んでいます。ただこれは、属人的ともいえる精緻なものづくり技術がないのでデジタルを使っている側面があります。精度の高い技術を使ってお客様価値を高めるモデルは、ドイツや日本が一番いいポジションにいるように思います。ものづくり中小企業の持つ高い製造技術・経験を、デジタル技術やインターネットで繋げお客様価値を向上させるプラットフォームを作ることで、夢のある日本的なビジネスモデルに昇華できる、そんな予感がする話です。
これを楽観的と見るか懐疑的に捉えるか、人それぞれと思います。ただ私は楽観的に捉えて行動を!と感じました。少なくとも数字上はチャンスが見えていますし、このような統計値は意外に正直なものでバカにできないと思います。このようなチャンスがあること自体知られてない気がしますし、中小企業のDX戦略にも適用できる気がします。診断士としてそのようなワクワク感を伝えていきたいと感じました。
共著者のIT批評家 尾原和啓氏は、実は大学の研究室の同級生です。マッキンゼーを皮切りにGoogleなど10数社で新規事業に携わったというセットアップの達人で、学生当時からCutting-edgeな発想力と行動力が抜きん出て目立つ存在でした。世界や業界を俯瞰してみる鳥の目、ITを中心に世の中の流れを見る魚の目、先端テクノロジーに精通する虫の目を兼ね備えている、ホンモノのIT批評家です。特にプラットフォームビジネスへの造詣が深く、この本でもプラットフォームビジネスの特徴と製造業へのつながりをわかりやすく解説しています。
お2人に共通するのは、とてもポジティブに日本の未来を考えていること。特に製造業でDXに関わる方にはぜひご一読いただきたいな、と思います。(ちなみに片田舎出身で元来コンサバ気質の私が転職体質になったのは、尾原氏の影響です。回数も実績も足元にも及びませんが(笑)。今回のブログは回し者であることを、ここに正直に告白します。でもこの本は読む価値アリですよ!)
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