21期生の中川です。
今日はクライアントに最近どんな支援をしてみたかを書いてみます。自分は公的支援の他に直接契約をしているクライアントの方もいらっしゃいますが、こちらの方々はどちらかというと労務管理の相談が多いです。具体的な成果物としては就業規則を提供する、問題があった社員対応の解決方法をご提案する等ですが、その趣旨は労務リスクを排除したい、さらにはきちんとしたいい会社にしたいということが背景に伺えます。
最近、法的に問題がない労働条件に変更したいというご要望を受けて、あるクライアント企業様へ専門型裁量労働制を導入提案と支援をさせて頂きました。人材確保の課題はありますが、業績では大きな問題がない状況なので制度面もきちんとしたいという先方のご意向でした。
さて、裁量労働制もいくつかあり、今回は労働基準法第三十八条の三に記載されている「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす」専門業務型裁量労働制度の導入提案をしました。
ご存じとは思いますが、労働者の法定労働時間は1日8時間、1週40時間と定められております。この時間を超えて労働者に業務をして頂く場合は労働基準法36条による時間外労働の協定(36協定)と割増賃金の支給が必要となります。
一方で、これを原則に、効率的な働き方に合わせて柔軟化させる労働時間制度もあります、変形労働時間制(1週間単位、1か月単位、1年単位)、フレックスタイム制度等がありますが、その1つとして今回の裁量労働制があり支援をしました。こちらは情報処理システムの分析又は設計の業務の他19業務に限り所定事項を定めて過半数代表者との労使協定を締結すること等により導入することができます。
今回、詳細の事情は記載できませんが、事情確認とご要望を受けて対応しましたが、業種はシステム開発で、ほぼ社員全員の方がシステムエンジニアと関連営業の方でしたので対応可能と判断し、ご提案させて頂きました。
導入プロセスは①事業、業務内容や実際の働き方に関するインタビュー、②みなし堂々時間となる1日あたりの労働時間制度の制定、③苦情処理窓口の設置、④裁量労働規程案、労使協定書案の作成と賃金制度の変更案の調整と決定、⑤社員説明会のコンテンツの作成と説明会の開催、⑥規程、協定書の行政届出で進めています。一部社労士業務もありますが、全体的には、何を目的にどのような働き方を従業員に期待するか、どのような社風や企業文化を経営として考えていきたいかが中心でした。制度自体は箱みたいなものでそれだけでは運用に支障があります。そこで自分が一番力を入れたのは社長、副社長との考え方のすり合わせと、従業員説明会の実施の方でした。
従業員向け説明会では、会社はシステムエンジニアである皆様の実力を信頼し、業務配分については各メンバーの裁量に大幅にゆだねたいという気持ちを繰り返し伝え、不利益変更ではないことや、何かあったら相談窓口も用意しているということも合わせて、熱弁を振るいました。1時間半の説明会では、質問もいくつか出て自身の会社員時代を思い出す勢いすら感じました。
本クライアント様におかれましては、少人数で良好な業績もそうですが、それ以上に、ステークホルダーに対して堂々と社員と社員の家族が幸せになるいい会社にしたいという社長のご発言があったからこそスムーズに進むことができたと感じています。3回の打合せと作業でだいたい2か月という期間で完了することができました。
目に見える成果物としては、裁量労働制度に関する説明資料の作成、規程や協定書、説明会実施くらいの小さな活動にも見えますが、なんのためになぜ行うのかという趣旨を明確にすること、関係者の納得性を高めるため、丁寧な関係者インタビューを中心とした導入プロセスの提案と実施が重要と考え実践できたと思います。
規程作成と提出はどうしても他士業にゆだねる必要がありますが、人を中心とした経営支援ととらえれば、中小企業診断士活動と思います。コーチングや法令に関するティーチングを使い分けながら、丁寧なインタビューをすること自体はあらゆるテーマにおける支援活動にも通用すると感じております。今後は支援の業務フローの形について確立して、さらに洗練して展開していきたいと思います。
2022年5月11日 中川 聖明