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日本国憲法19条(思想及び良心の自由、これを侵してはならない)と自民党案(保障の程度をゆるめていないか?)

2016-08-19 23:00:00 | 日本国憲法

 日本国憲法第19条。


 第三章の人権規定に入り、重要な条文が続いています。

 19条以下条文の規定内容がより具体的になりさらに重要性が増します。

 
***********
日本国憲法
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない

自民党案
(思想及び良心の自由)
第十九条 思想及び良心の自由は、保障する
***********

 19条、「思想及び良心の自由」、思想と良心を合わせて「内心の自由」についての規定で、とても重要です。

 重要であるからこそ、「侵してはならない」と強い表現で、規定が置かれています。

 特に、明治憲法下において、治安維持法の運用にみられるように、特定の思想を反国家的なものとして弾圧するという、内心の自由そのものが侵害される事例が少なくありませんでした。日本国憲法が、精神的自由に関する諸規定の冒頭において、思想・良心の自由をとくに保障した意義は、そこにあります。(『憲法 第5版』芦部信喜 147ページ)

 「思想及び良心」とは、世界観、人生観、主義、主張など個人の人格的な内面的精神作用を広く含むものと解されます。


 思想・良心の自由を「侵してはならない」とは、憲法学者故芦部先生は、以下、説明されています。(『憲法 第5版』芦部信喜 147-148ページ)

 「このような思想・良心の自由を「侵してはならない」とは、第一に、国民がいかなる国家観、世界観、人生観をもとうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり、国家権力は、内心の思想に基づいて不利益を課したり、あるいは、特定の思想を抱くことを禁止することができない、ということである。

  (中略)

  第二の意味は、国民がいかなる思想を抱いているかについて、国家権力が露顕を強制することは許されないこと、すなわち、思想について沈黙の自由が保障されることである。国家権力は、個人が内心において抱いている思想について、直接または間接に、訊ねることも許されないのである。」





 さて、このような大事な19条を、自民案は、「侵してはならない」という文言を、「保障する」に置き換えています。

 「侵してはならない」とはっきりと断言をするべきもので、「保障する」と表現を弱めては決してならないと考えます。



*****文言を同様に置き換えることで、保障の程度を弱めてしまっている例と弱めなかった例******
〇財産権の29条1項
日本国憲法
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

 自民案
(財産権)
第二十九条 財産権は、保障する
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

 

〇22条2項
日本国憲法
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない

(居住、移転及び職業選択等の自由等)
第二十二条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する



〇自民案でも、保障の程度をゆるめなかった例、憲法21条2項検閲
日本国憲法
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない

 自民案
(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。〔新設〕
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない

*****************************



 あと、自民党案では、19条の2を下記のように新しいものを新設しています。
***********
自民党案
(個人情報の不当取得の禁止等)
第十九条の二 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。〔新設〕
***********

 憲法の考え方(参照 日本国憲法99条)で規定を置くならば、主語が逆です。

 「国民が、○○してはならない。」ではなく、「国民が、○○されないよう、国が○○しなければならない。」と書くべきで、
 すなわち、
 「何人も、個人に関する情報が不当に取得され、保有され、又は利用されてはならない。」のような言い回しが、少なくとも必要です。
 守られるべきは、国民の個人情報で、遵守すべき主体は、国民よりもまずは、国だからです。
 

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日本国憲法17条(国家賠償、マッカーサー草案にも政府草案にも存在せず、衆議院の修正で付加)と自民党案

2016-08-17 23:00:00 | 日本国憲法

 日本国憲法第17条。


*****************
日本国憲法
第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。


自民党改憲案
(国等に対する賠償請求権)
第十七条 何人も、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は地方自治体その他の公共団体に、その賠償を求めることができる。

****************

 ほぼ同じです。


 
 憲法17条は、国家賠償を定めた規定です。
 実際に、法律としての規定は、国家賠償法によります。

 
 大日本帝国憲法には、国家賠償制度に関する規定はなく、法律でも「行政裁判所ハ損害要償ノ訴訟ヲ受理セス」(行政裁判所法16条)とされていたため、公権力の行使によって私人に損害が発生しても、国も公務員も責任を負いませんでした(国家無答責の原則)。
 本条に該当する規定は、マッカーサー草案にも政府草案にも存在せず、衆議院の修正で付加されました。(参考文献 『判例憲法』第一法規 290ページ)

 国家賠償法、通称「国賠」。あまり馴染みのない法律ですが、条文は少なく、六条しか規定されていません。
 ならば理解するのも簡単かと言うとそうでもなく。
 以下に、全文掲載します。

 国賠の対象は公権力の行使にあるが、では公権力とはなにか?公権力に過失がなくても国賠の対象となりうるのか?

 公務員による不法行為 憲法17条によって、公務員の不法行為によって損害を受けたとき、憲法でその賠償を求めることが出来る対象として明記されているのは、公務員を雇用または使用している国または公共団体に対してのみです。
 国家賠償法1条の根拠にしています。


 また、法律の文言は、「公共団体」であって、「地方公共団体」ではありません。
 それによって、弁護士会のような団体も、「公共団体」に含まれ、国会賠償法が適用されることになります。もちろん、「国会」も含まれます。

 法6条では、その国に日本人に対しても国家賠償法同様の規定がある場合、その国の外国人に、日本の国家賠償法が適用されることが規定されています。


************************************
国家賠償法
(昭和二十二年十月二十七日法律第百二十五号)



第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

第二条  道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

第三条  前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。

第四条  国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法 の規定による。

第五条  国又は公共団体の損害賠償の責任について民法 以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。

第六条  この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。

   附 則 抄


○1  この法律は、公布の日から、これを施行する。
○6  この法律施行前の行為に基づく損害については、なお従前の例による。

***********************************

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日本国憲法16条(請願権)と自民党案

2016-08-16 23:00:00 | 日本国憲法

 日本国憲法、第16条。


********
日本国憲法
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。


自民党案
(請願をする権利)
第十六条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願をする権利を有する。
2 請願をした者は、そのためにいかなる差別待遇も受けない。
********

 憲法16条は、請願について規定しています。

 この条文は、いまのところ、ほぼ同じです。
 自民党案は、日本国憲法で一項だったものが、二項に分けたということだけの違いでしょうか。


 ところで、16条で保障する請願権。私達は、もっと「請願」を有効に使うべきと考えます。


 声を、国、自治体、政治に反映させる重要な手段です!
 自らの声を、政治にインパクトを持って届けることができるのです。


 なお、憲法16条で、請願した者に差別的待遇をしてはならないと現行憲法で規定しているにもかかわらず、ある自治体が、署名者や署名活動者に対し、限度を超えて戸別訪問調査をして、不当に圧力を加えたという事件が実際に発生していることは、驚きです(岐阜地判平成22.11.10、名古屋高判平成22.4.27、最三小決平成24.10.9)。
 憲法一条一条を侮ってはなりません。
 権力機関は、容易に不当な圧力を住民に対して加えることがありえます。


 憲法16条を受けて、請願を規定する法律は、

〇請願法

〇国会法(79~82条)

〇衆規(171~180条)

〇参規(162~172条)

〇自治法(124~125条)

 で、請願権行使の手続きについて規定が設けられています。

 参考までに、掲載します。


******各法律、該当部分の掲載******

〇請願法 全文
請願法
(昭和二十二年三月十三日法律第十三号)



第一条  請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。

第二条  請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。

第三条  請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
○2 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる。

第四条  請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。

第五条  この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。

第六条  何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

   附 則

 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。


〇国会法(79~82条)
第七十九条  各議院に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。

第八十条  請願は、各議院において委員会の審査を経た後これを議決する。
○2  委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願は、これを会議に付さない。但し、議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。

第八十一条  各議院において採択した請願で、内閣において措置するを適当と認めたものは、これを内閣に送付する。
○2  内閣は、前項の請願の処理の経過を毎年議院に報告しなければならない。

第八十二条  各議院は、各別に請願を受け互に干預しない。


〇衆規(171~180条)
 第十一章 請願

第百七十一条 請願書には、請願者の住所氏名(法人の場合はその名称及び代表者の氏名)を記載しなければならない。

第百七十二条 請願書には、普通の邦文を用いなければならない。やむを得ず外国語を用いるときは、これに訳文を附けなければならない。

第百七十三条 請願を紹介する議員は、請願書の表紙に署名又は記名押印しなければならない。

第百七十四条 議長は、請願文書表を作成しこれを印刷して各議員に配付する。
•会期末に請願の文書表を作成するいとまがないときは、本書により審査する。(衆先390)

第百七十五条 請願文書表には、請願者の住所氏名、請願の要旨、紹介議員の氏名及び受理の年月日を記載しなければならない。

  数人の連署による請願は、請願者某外何名と記載する。

  同一議員の紹介による同一内容の請願が数件あるときは、請願者某外何名と記載する外その件数を記載する。

第百七十六条 請願は、文書表の配付と同時に議長がこれを適当の委員会に付託する。

第百七十七条 裁判官の罷免を求める請願については、議長は、これを委員会に付託しないで裁判官訴追委員会に送付する。

第百七十八条 委員会は、請願についてその審査の結果に従い左の区別をなし、議院に報告する。

 一 議院の会議に付するを要するもの

 二 議院の会議に付するを要しないもの

  議院の会議に付するを要する請願については、なお、左の区別をして報告する。

 一 採択すべきもの

 二 不採択とすべきもの

  採択すべきものの中、内閣に送付するを適当と認めるものについては、その旨を附記する。

第百七十九条 委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した請願について、議員二十人以上から休会中の期間を除いて委員会の報告の日から七日以内に会議に付する要求がないときは、委員会の決定が確定する。

第百八十条 陳情書その他のもので、議長が必要と認めたものは、これを適当の委員会に参考のため送付する。


〇参規(162~172条)
第11章 請願

第162条 請願書は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載したものでなければならない。
第163条 法人を除いては、総代の名義による請願は、これを受理しない。
第164条 請願書の用語は平穏なものでなければならない。また、その提出は平穏になされなければならない。
第165条 議長は、請願文書表を作り印刷して、毎週一回、これを各議員に配付する。
 請願文書表には、請願の趣旨、請願者の住所氏名、紹介議員の氏名及び受理の年月日を記載する。
第166条 請願は、請願文書表の配付と同時に、議長が、これを適当の委員会に付託する。
第167条 裁判官の罷免を求める請願については、議長は、これを委員会に付託しないで裁判官訴追委員会に送付する。
第168条 請願を紹介した議員は、委員会から要求があつたときは、請願の趣旨を説明しなければならない。
第169条 請願書は、議院の議決がなければ、これを印刷配付しない。
第170条 委員会は、審査の結果に従い、次の区別をして、議長に報告書を提出しなければならない。
1.採択すべきもの
2.不採択とすべきもの

採択すべきものについては、なお、次の区別をしなければならない。
1.内閣に送付するを要するもの
2.内閣に送付するを要しないもの

第171条 委員会において採択すべきものと決定した請願については、委員会は、前条第1項の報告書に付して意見書案を提出することができる。
第172条 委員会において議院の会議に付するを要しないと決定した請願については、委員会は、議長にその旨の報告書を提出しなければならない。
 前項の場合において、報告書が提出された日から休会中の期間を除いて七日以内に、議員二十人以上から会議に付する要求がないときは、同項の決定が確定する。
第173条 削除



〇自治法(124~125条)
第百二十四条  普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。

第百二十五条  普通地方公共団体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。

以上

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憲法9、1、4、15、20、89、21、23、25、26、41、65、76、81、96、98、99条と前文 不戦精神が貫く

2016-08-16 12:55:38 | 日本国憲法

 弁護士伊藤真先生が、不戦精神が貫かれているという憲法の大切さを体系的に書かれており、理解に役立つため、掲載いたします。

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日本国憲法15条(公務員は全体の奉仕者、議会制民主主義の根幹:選挙権の保障)と自民党案(普通選挙を「保障する」の文言削除)

2016-08-15 23:00:00 | 日本国憲法

 憲法15条。

 15条は、
 〇公務員が全体の奉仕者であるということとともに、
 〇議会制民主主義の根幹をなす選挙権に関して定める条文でとても重要です。

 特に3項と4項で、近代選挙の基本原則である、

1普通選挙

2平等選挙

3自由選挙

4秘密選挙

5直接選挙

 を要請しています。

 だからこそ、日本国憲法では、普通選挙を「保障する」という文言を用いています。


****************
日本国憲法
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する
4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

自民党案
(公務員の選定及び罷免に関する権利等)
第十五条 公務員を選定し、及び罷免することは、主権の存する国民の権利である。
2 全て公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。
3 公務員の選定を選挙により行う場合は、日本国籍を有する成年者による普通選挙の方法による
4 選挙における投票の秘密は、侵されない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

*****************


 自民案で、15条が変えられた点は、以下。

15条1項
 国民固有の権利ということのその「固有の権利」という文言を削除しています。
 11条でのべましたがhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/ad3650d77379d66bbf6142d8342bfefe
 人権の三つの意義のひとつ固有性を、11条及び97条で削除しています。それにあわせてこの15条の「固有の権利」という文言も削除されました。
 人権の固有性、すなわち、「人権が憲法や天皇から恩恵として与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するとされる権利であること。」という考え方を、自民党はどうしても否定をしたいのでしょうか?

15条2項
 漢字になっています。
 個人的に、「全て」の漢字は読みにくいので、「すべて」のひらがなのままでよいと思います。

15条3項
 大問題です。
 普通選挙を「保障する」という大切な文言を削除しています
 なぜ、わざわざ、削除するのか、疑問です。

 また、「日本国籍を有する成年者」と、わざわざ「日本国籍を有する」とかぶせています。
 ここでは、その是非は述べませんが、最高裁判所の見解(最三小判平成7・2・28)によると、国政選挙は別にしても、地方議会議員選挙では、定住外国人の選挙権は、否定をしていません。
 地方政治のあり方についての判断が委ねられた部分です。
 にもかかわらず、自民案は、有無を言わさず、定住外国人の地方議会議員選挙の選挙権を奪おうとしています
 最後に、その判決文を全文掲載します。
 自民党のように安易に、定住外国人の地方議会議員選挙の選挙権を奪ってよいか、判決文(一番最後に掲載)を読んで考察いただければ幸いです。

15条4項
 「侵してはならない」という主体的な言い方から、「侵されない」と、なにか他人事のような表現に変えています。
 15条3項の「保障する」の文言削除と共に、自民党は、選挙権を軽視している印象を受けざるを得ません。

************************





以下、憲法15条が保障することのひとつ選挙権の大切さについて、書きます。



選挙権の大切さ。




 被選挙権の大切さ。
 立候補することの自由も保障されています。


 どのようなひとも、立候補は許されます。
 だからこそ、逆に、私達、国民の側に、きちんと選ぶ目が要求されます。



日本国憲法15条1項。
第十五条  公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。



 選挙権に、なんら制限を加えては、なりません。
 もちろん、成年被後見人にも、選挙権は保障されねばなりません。
 重病者には、在宅投票もきちんと保障されるべきだと考えます。
 例えば、ALSなど難病で、投票所に行くことができない方々の選挙権の保障は、なされねばなりません。





 一人一票の価値は、守られねばなりません。

 



 一人一票を判断する場合の裁判所の論理1と2
 




 一人一票を判断する場合の裁判所の論理3




 違法であり、本来、勝訴判決を得られるはずであるが、裁判で、敗れる論理。

行政事件訴訟法
(特別の事情による請求の棄却)
第三十一条  取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。
 裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもつて、処分又は裁決が違法であることを宣言することができる。
 終局判決に事実及び理由を記載するには、前項の判決を引用することができる。


 一人一票の最高裁の論理のまとめ。






 ただすべきものをたださない国会の責任について、最高裁の考え方。
 やや弱い感じはするところではありますが。



 

*******最高裁ホームページより*****
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120908067922.pdf

主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。


         理    由
 上告代理人相馬達雄、同平木純二郎、同能瀬敏文の上告理由について
 憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをそ
の対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等し
く及ぶものである。そこで、憲法一五条一項にいう公務員を選定罷免する権利の保
障が我が国に在留する外国人に対しても及ぶものと解すべきか否かについて考える
と、憲法の右規定は、国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に存
することを表明したものにほかならないところ、主権が「日本国民」に存するもの
とする憲法前文及び一条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民と
は、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである。そ
うとすれば、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法一五条一項の規定は、権利
の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留
する外国人には及ばないものと解するのが相当である。そして、地方自治について
定める憲法第八章は、九三条二項において、地方公共団体の長、その議会の議員及
び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するも
のと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条
一項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成す
ものであることをも併せ考えると、憲法九三条二項にいう「住民」とは、地方公共
団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右
規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等
の選挙の権利を保障したものということはできない。以上のように解すべきことは、
当裁判所大法廷判決(最高裁昭和三五年(オ)第五七九号同年一二月一四日判決・
民集一四巻一四号三〇三七頁、最高裁昭和五〇年(行ツ)第一二〇号同五三年一〇
月四日判決・民集三二巻七号一二二三頁)の趣旨に徴して明らかである。

 このように、憲法九三条二項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体
における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第八章の地方自治に関す
る規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接
な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共
団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出た
ものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居
住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものに
ついて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処
理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対す
る選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解
するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の
立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の
問題を生ずるものではない。以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(
前掲昭和三五年一二月一四日判決、最高裁昭和三七年(あ)第九〇〇号同三八年三
月二七日判決・刑集一七巻二号一二一頁、最高裁昭和四九年(行ツ)第七五号同五
一年四月一四日判決・民集三〇巻三号二二三頁、最高裁昭和五四年(行ツ)第六五
号同五八年四月二七日判決・民集三七巻三号三四五頁)の趣旨に徴して明らかであ
る。
 以上検討したところによれば、地方公共団体の長及びその議会の議員の選挙の権
利を日本国民たる住民に限るものとした地方自治法一一条、一八条、公職選挙法九
条二項の各規定が憲法一五条一項、九三条二項に違反するものということはできず、
その他本件各決定を維持すべきものとした原審の判断に憲法の右各規定の解釈の誤
りがあるということもできない。所論は、地方自治法一一条、一八条、公職選挙法
九条二項の各規定に憲法一四条違反があり、そうでないとしても本件各決定を維持
すべきものとした原審の判断に憲法一四条及び右各法令の解釈の誤りがある旨の主
張をもしているところ、右主張は、いずれも実質において憲法一五条一項、九三条
二項の解釈の誤りをいうに帰するものであって、右主張に理由がないことは既に述
べたとおりである。

 以上によれば、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ
る。論旨は採用することができない。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    尾   崎   行   信

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日本国憲法14条(平等権、実質的平等)と自民党案(形式的平等)

2016-08-14 23:00:00 | 日本国憲法

 日本国憲法、14条、平等権。

 以下、比較すると大差ないようにお感じになると思います。


*************************
日本国憲法
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。


自民党案
(法の下の平等)
第十四条 全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
*************************

 

 私も、最初、「あれっ」と思いました。

 なぜ、今までの14条に至るまで問題点が多々あったのに、ここでは「障害の有無」の追加をするもその他の変更をしなかったのだろうかと。

 日本国憲法14条≒自民党案14条 ?

 よくよく、考えると…

 

 日本国憲法が機能する人権の世界と、自民党案が機能する人権の世界では、世界が異なるのです。
 その条文だけで考えてはいけません。

 人権の総則規定12条を思い出して下さい。


****************** 
日本国憲法 
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 

自民党案 (国民の責務) 
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。 

******************     

 人権の世界が、まるっきり自民党案では変えられていて、「公益及び公の秩序」に反することは許されなくなっているのです。


 12条と14条を併せて考えると、 

 日本国憲法 12条+14条=「公共の福祉」のために実質的平等のルールの採用を可能にする。 (実質的平等「等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく」の考え方。例、所得税)

 自民党案  12条+14条= 「公益及び公の秩序」に反しないように、形式的平等を課す。(形式的平等「A=B=C=D=E=F=G・・・・」の考え方。例、消費税)

 
 日本国憲法と自民党案では、意味をしている平等概念そのものが異なるのではないでしょうか。

 
 形式的平等のルール(A=B=C=D=E=F=G・・・・)を適用すると、能力のある人、資質のある人、そして、能力や資質をのばすための環境が整備されているひとが、高い成績をあげることができ、結果に大きな差が生じてしまいます。
 行きつく先は、格差社会です。
 それをよしとするぞと、自民党案は、宣言をしているように考えます。
 (実質的平等、形式的平等などの概念は、ブログhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/c6493bd72f0b2d3296c2da24d939ce8dで基本的なところの解説をしています。)


 自民党案では、「公益及び公の秩序」という文言を、「公共の福祉」を削除して入れ替え、人権概念を大きく覆してしまっています。人権規定を注意深く読んで行く必要があります。

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日本国憲法13条(最も重要な条文の一つ、幸福追求権)と自民党案(「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換え。)

2016-08-13 00:00:01 | 日本国憲法

 日本国憲法第13条。

 着眼点により異なりますが、13条は、憲法の中で最も重要な条文と考えます。2番目に大事なのは、手続き保障を定めた31条でしょうか。(13の数字のならびを逆にすれば31で、よい対になっています。)

 

 憲法学者の故芦部先生によると、「社会の変革にともない、「自律的な個人が人格的に生存するために不可欠と考えられる基本的な権利・自由」として保護するに値すると考えられる法的利益は、「新しい人権」として、憲法上保障される人権の一つだと解するのが妥当である。その根拠となる規定が、憲法13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」(幸福追求権)である。」として、13条は、幸福追求権を謳っているとされています。

 「個人の尊重の原理に基づく幸福追求権は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であり、この幸福追求権によって基礎づけられる個々の権利は、裁判上の救済を受けることができる具体的権利」であります。

 「幸福追求権からどのような具体的権利が実際に導き出されるか、そして、それが新しい人権の一つとして承認されるかどうかをどのような基準で判断するかは、なかなか難しい問題」です。

 「これまで、新しい人権として主張されたものは、

○プライバシーの権利、

○環境権

○日照権

○静穏権

○眺望権

○入浜権

○嫌煙権

○健康権

○情報権

○アクセス権

○平和的生存権

 など多数」あります。

 「最高裁判所が、正面から認めたものは、プライバシーの権利としての肖像権ぐらい」です。

 「裁判上の権利と言えるかどうかは、

○特定の行為が個人の人格的生存に不可欠であることのほか、

○その行為を社会が伝統的に個人の自律的決定に委ねられたものと考えているか、

○その行為は多数の国民が行おうと思えば行うことができるか、

○行っても他人の基本権を侵害するおそれがないかなど
 
 種々の要素を考慮して慎重に決定 」 しなければなりません。

(加憲すべき権利を考える場合にも、重要な考慮要素だと、私は思います。逆を言えば、安易な加憲もまた、許されません。)

 以上、「」は、『憲法 第五版』芦部 118~121ページ。

 
 


*************************
日本国憲法
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

自民党案
(人としての尊重等)
第十三条 全て国民は、として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない
*************************

 さて、自民党案は、13条において、12条同様に、重大な過ちを犯しております。

 「公共の福祉」を、「公益及び公の秩序」に置き換えています。(前条12条でも述べました。今後、21条、22条、29条でも同様の問題が出て来ます。)

 また、国家主義を目指している自民党にとって、「個人」という言葉も、極力用いたくないのだと思います。これまた、「個人」から「人」に置き換えられています。

 「最大の尊重を必要とする。」この文言が「最大限に尊重されなければならない。」の置き換えは、同じ内容としてみなせるでしょうか?
 

 少なくともわかるのは、個人の幸福追求権を謳う13条では、「個人」を「人」に置き換えてはならないし、「公共の福祉」は絶対に「公益及び公の秩序」に置き換えてはなりません。
 新しい人権が生まれる余地がなくなります。
 個人の幸福追求権が否定されます。



 ひとつだけ例を挙げます。


 肖像権が生まれた、「京都府学連事件」

 デモ行進に際して、警察官が犯罪捜査のために行った写真撮影の適法性が争われました。

 最高裁(最大判昭和44・12・24)は、

「憲法一三条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由
及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ
の他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているのであつて、これ
は、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対しても保護されるべ
きことを規定しているものということができる。そして、個人の私生活上の自由の
一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう
等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。」

 と判決をしています。


 もし、「公共の福祉」が「公の秩序」に置き換えられてしまえば、
 この判決の内容は変わることになると思います。

 自民案を許してしまった場合、 「公の秩序」が優先され、国民の私生活上の自由が、警察権等の国家権力の行使に対して保護されないことになり、肖像権は主張できなくなります。
 なぜならば、「公の秩序」が意味するものは、「国家権力からみた秩序」であるからです。

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憲法平和主義規定は、日本国民の平和への希求と幣原首相の平和主義思想を前提に、マッカーサーが決断した日米合作

2016-08-12 11:20:33 | 日本国憲法

 「日本国憲法制定当時の幣原首相の平和主義思想が、マッカーサー・ノートの一つのきっかけになっている。」憲法学を学ぶ者であれば、当然の知識(常識)として有している箇所です。

 すなわち、「日本国憲法の平和主義の規定は、日本国国民の平和への希求と幣原首相の平和主義思想を前提としたうえで、最終的には、マッカーサーの決断によってつくられた、日米の合作」と解されています。(芦部『憲法』第5版55頁)

 国会でも、この経緯を踏まえ、日本国憲法9条の議論を行っていただきたいところです。首相であられるかたが、知らないわけがないのだけど…





 

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日本国憲法12条と自民党案(「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に置き換え。最大の問題点の一つ)

2016-08-12 00:00:01 | 日本国憲法

 日本国憲法第12条。
 
 重大な問題点として、自民党案では、「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」に、置き換えられています。  
 この置き換えだけは、絶対にゆるしてはならないと考えています。
 自民党案の最大の問題点のひとつだと私は考えています。

 憲法12条、13条、22条、29条及び21条が同様に置き換えがなされています。

 自民党案に、賛同する憲法学者や裁判官など法律の専門家は、誰一人としていないと思います。  
 特に、この削除・置き換えには、賛同するものなどいないはずです。自信を持っていいます。  
 おられれば、そのかたを後学のため教えていただきたいほどです。  

 誤解を恐れずに、わかりやすく書くのであれば、  

 「公益」=「国のため、国家のために」で、国民の権利が片づけられます。  

 「公の秩序」=権力機関により、権力機関の論理・都合で、国民の権利が片づけられます。  

 「公共の福祉」=人権と人権のぶつかり合いを、二重の基準論、比較衡量論を用い、均衡のとれた解決を見出していきます。  



******************
日本国憲法
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

自民党案 (国民の責務)
第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

******************    

 「公共の福祉」の概念は、ブログhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/11adf6d04c55152a6546d1681e84426fで、基礎知識で整理をしています。  

 一部抜き出します。    

 人権があるから、私たちは、何をやっても許されるというわけではなく、人権が制約される局面があります。  

 次の3つの場合が想定されます。

1)権利行使が他者に害を与える場合。

2)権利行使が他者の正当な権利ないしは利益と衝突する場合。

3)権利行使が社会全体の利益にとってマイナスになる場合。    


 それぞれの場合を具体例を挙げてみます。

1)権利行使が他者に害を与える場合。  
政治団体の街宣車がフルボリュームで、音楽を流すことは、彼らの表現の自由の行使ではあるが、市街地の平穏を乱し、市民に不快感を与えていることから、他者に害を与えている。人権は、まず、他者に迷惑をかけてはならない、という制約がある。

2)権利行使が他者の正当な権利ないしは利益と衝突する場合。  
マスコミが、有名人のプライバシーや名誉を傷つける報道を行う場合は、マスコミの表現の自由(報道の自由)と有名人のプライバシーが衝突する。表現の自由もプライバシーもともに、極めて重要な人権である。

3)権利行使が社会全体の利益にとってマイナスになる場合。  
空港や高速道路を建設する際には、その用地を買収しなければならないところ、地権者が用地買収に協力してくれない場合は、建設が遅れ、社会全体に大きな不利益を与える場合がある。  

 このような人権の制約を掛けねばならないときに、用いられるのが、「公共の福祉」による人権の制限です。  


 現行憲法で、「公共の福祉」の制限がついている条文は、12条・13条・22条・29条。

*****日本国憲法*****
第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。


第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
○2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
○3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

***************  

 これら条文において、自民案は、22条以外の3つは、「公共の福祉」を「公益及び公共の秩序」に置き換えています。  

 そして、22条では、はぶいてはならないのに、「公共の福祉」を省いています。  

 さらに、重大問題なのは、21条に、「公共の福祉」さえついていなかった条文に、「公益及び公共の秩序」を新たに導入しています。後に21条のところで触れますが、表現の自由を国家権力が制約し、言論弾圧ができる体制づくりを着々と進める素地を作っていると考えます。


****自民案*****
(国民の責務)
第十二条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

(人としての尊重等)
第十三条
全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。


(表現の自由)
第二十一条
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。〔新設〕
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。


(居住、移転及び職業選択等の自由等)
第二十二条
何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。    ←「公共の福祉」の文言が落ちています。ここでは、落としてはなりません!
2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。


(財産権)
第二十九条 財産権は、保障する。
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

**********  

 「公共の福祉」削除は、かなり意図的であり、悪質とさえ言えるのではないでしょうか。  
 単に言葉だけとか、そんな生易しい問題ではないと考えます。

 11条でのべた、「ナチスに学べ」という麻生発言(2013年7月)の意図が、ここにも表れています。

 麻生氏が、「だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。」と発言されたことの真意が、この「公共の福祉」の削除でも出ています。  

 と言いますか、麻生氏の「ナチスに学べ」という発言を聞いたとき、瞬時に、この自民党案の「公共の福祉」の削除に思い当たりました。
 麻生氏が、本心で発言していることが、たやすく想像できました。
 
 日本国憲法における基本的人権の制約する文言である「公共の福祉」が、「だれも気づかない手口」で削除され、代わりに「公の秩序」に置き換えられています。

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日本国憲法第11条(基本的人権の普遍性、不可侵性、固有性)と自民党案(現在及び将来の国民に与へられる。の削除)

2016-08-11 10:32:40 | 日本国憲法

 日本国憲法第11条。

************
日本国憲法
(基本的人権の享有)
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。


自民案
(基本的人権の享有)
第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。
************

 11条は、人権保障の総則的規定です。
 基本的人権の享有主体と、基本的人権の保障の意義についてうたっています。

 すなわち、基本的人権の享有主体は、国民であり、基本的人権の保障の意義が、その固有性、不可侵性、普遍性があるがゆえに保障すべきものと意義づけられるとしています。

 固有性:人権が憲法や天皇から恩恵として与えられたものではなく、人間であることにより当然に有するとされる権利であること。

 不可侵性:人権が、原則として、公権力によって侵されないこと。行政権はもとより、立法権も、さらに憲法改正権も侵すことはできない。

 普遍性:人権は、人種、性、身分などの区別に関係なく、人間であることに基づいて当然に享有できる権利であること。


 日本国憲法の条文を見ることで再度確認します。


第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない普遍性)。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利不可侵性)として、現在及び将来の国民に与へられる固有性、人間が生まれながらに有するということ)。


 自民党案を次に。

第十一条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。


 私は、基本的人権を守るという真摯な思いが、自民党案に感じられません。
 それは、重要な文言を削除しているからです。

1)基本的人権の「普遍性」が自民案では弱まっている
現行憲法
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない
 ↓
自民案
国民は、全ての基本的人権を享有する

 単に享有するだけでなく、享有を「妨げられない」ところに意味があると思います。
 自民案では、故意に重要文言を落としています。

2)基本的人権の「固有性」が自民案では、ない。
現行憲法
現在及び将来の国民に与へられる。
 ↓
自民案
(削除)

 憲法以前に、私たちは人間として固有の権利をもっています。それを文字で表したのが、憲法です。「実定的な法的権利」として確認したのが憲法です。
 「人間の固有の尊厳に由来する」のが基本的人権です。

 このような重要な「固有性」の観念を、自民案では削除しています。
 考えられないことです。

 なお、このことは、単に文言を整理していたら、たまたま落ちたとかいうレベルの話ではなく、自民案では意図して行っていることが分かります。

 日本国憲法が、人権を、「信託されたもの」であるとして人権の固有性を謳った重要な憲法97条も、自民案では、残念ながら削除しています。

現行憲法97条
第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
 ↓
自民案
(97条自体を削除)

3)2013年夏の自民党麻生氏麻生氏の「ナチスに学べ」発言
 2013年夏の自民党麻生氏麻生氏の「ナチスに学べ」発言が意図していたものが、この憲法11条、97条にも表れていないでしょうか。

 麻生氏が、「だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。 わーわー騒がないで。本当に、みんないい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。」と発言されたことの真意が、憲法11条の変更、97条の削除でも出ていると、私は、危機感をもって感じます。

 日本国憲法における基本的人権の重要な観念である「固有性」が、自民案では、「誰にも気づかないような手口」で、落とされています。

以上

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日本国憲法10条(日本国民の構成員たる資格について)と自民党案

2016-08-10 23:00:00 | 日本国憲法

 日本国憲法10条。
 10条から、第三章の人権規定「国民の権利及び義務」に入ります。

 
 10条は、幸いにしてほぼ同じ内容です。
 強いて言うなら、文章の品格として、自民党案が劣っています。

*************************
〇日本国憲法
第三章 国民の権利及び義務
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。


〇自民党案
第三章 国民の権利及び義務
(日本国民)
第十条 日本国民の要件は、法律で定める。
************************

 「日本国民たる要件」とは、日本国民の構成員たる資格(日本国籍)を有する要件を意味します。

 日本国籍の取得と喪失に関する事項は、法律で定めることを規定しています。

 その法律は、「国籍法」です。
 最後に全文を掲載します。

 「国籍法」の2条1号、3条1項はそれぞれ問題がありましたが、両者改正(2条1号:昭和59年改正、3条1項:平成20年改正)されました。


 なお、間違ってはならないのは、日本国民にだけ、日本国憲法の人権を保障するのではなく、「権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」(マクリーン事件)とされています

 逆に、判例で「権利の性質上」外国人に及ばないとされた権利:
 ○入国の自由、在留権(最大判昭和53・10・4マクリーン事件)

 ○再入国の自由(最一小判H4・11・16森川キャサリーン事件)

 ○国会議員の選挙権(最二小判H5・2・26ヒッグス・アラン事件)

 ○地方議会議員の選挙権(最三小判H7・2・28)

 ○公権力行使等地方公務員(管理職)への就任権(最大判H17・1・26)
 など




*****国籍法 全文*****
国籍法

 昭和二十五年五月四日 法律第百四十七号
 施行 昭和二十五年七月一日
 改正 昭和二十七年七月三十一日 法律第二百六十八号
    昭和五十九年五月二十五日 法律第四十五号
    平成五年十一月十二日 法律第八十九号
    平成十六年十二月一日 法律第百四十七号
    平成二十年十二月十二日 法律第八十八号

    (この法律の目的)
   第一条 日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる

    (出生による国籍の取得)
   第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
    一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
    二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
    三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を
     有しないとき。

    (認知された子の国籍の取得)
   第三条 父又は母が認知した子で二十歳未満のもの(日本国民であつた者を除
    く。)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であつた場合において、
    その父又は母が現に日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であつ
    たときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を取得することができる。
   2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得する。

    (帰化)
   第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日
    本の国籍を取得することができる。
   2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。

   第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可す
    ることができない。
    一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
    二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
    三 素行が善良であること。
    四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生
     計を営むことができること。
    五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
    六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政
      府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若
      しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したこ
      とがないこと。
   2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができな
    い場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると
    認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化
    を許可することができる。

   第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有するものについ
    ては、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えないとき
    でも、帰化を許可することができる。
    一 日本国民であつた者の子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住
     所又は居所を有するもの
    二 日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、
     又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
    三 引き続き十年以上日本に居所を有する者

   第七条 日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所
    を有し、かつ、現に日本に住所を有するものについては、法務大臣は、その
    者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可
    することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過
    し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても、同様とす
    る。

   第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第
    五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許
    可することができる。
    一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
    二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時
     本国法により未成年であつたもの
    三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除
     く。)で日本に住所を有するもの
    四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き
     続き三年以上日本に住所を有するもの

   第九条 日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一
    項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができ
    る。

   第十条 法務大臣は、帰化を許可したときは、官報にその旨を告示しなければ
    ならない。
   2 帰化は、前項の告示の日から効力を生ずる。

    (国籍の喪失)
   第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日
    本の国籍を失う。
   2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選
    択したときは、日本の国籍を失う。

   第十二条 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたもの
    は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本
    の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本
    の国籍を失う。

   第十三条 外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、
    日本の国籍を離脱することができる。
   2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。

    (国籍の選択)
   第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有すること
    となつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、そ
    の時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国
    籍を選択しなければならない。
   2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の
    定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨
    の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

   第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期
    限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択を
    すべきことを催告することができる。
   2 前項に規定する催告は、これを受けるべき者の所在を知ることができない
    ときその他書面によつてすることができないやむを得ない事情があるとき
    は、催告すべき事項を官報に掲載してすることができる。この場合における
    催告は、官報に掲載された日の翌日に到達したものとみなす。
   3 前二項の規定による催告を受けた者は、催告を受けた日から一月以内に日
    本の国籍の選択をしなければ、その期間が経過した時に日本の国籍を失う。
    ただし、その者が天災その他その責めに帰することができない事由によつて
    その期間内に日本の国籍の選択をすることができない場合において、その選
    択をすることができるに至つた時から二週間以内にこれをしたときは、この
    限りでない。

   第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければな
    らない。
   2 法務大臣は、選択の宣言をした日本国民で外国の国籍を失つていないもの
    が自己の志望によりその外国の公務員の職(その国の国籍を有しない者であ
    つても就任することができる職を除く。)に就任した場合において、その就
    任が日本の国籍を選択した趣旨に著しく反すると認めるときは、その者に対
    し日本の国籍の喪失の宣告をすることができる。
   3 前項の宣告に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければな
    らない。
   4 第二項の宣告は、官報に告示してしなければならない。
   5 第二項の宣告を受けた者は、前項の告示の日に日本の国籍を失う。

    (国籍の再取得)
   第十七条 第十二条の規定により日本の国籍を失つた者で二十歳未満のもの
    は、日本に住所を有するときは、法務大臣に届け出ることによつて、日本の
    国籍を取得することができる。
   2 第十五条第二項の規定による催告を受けて同条第三項の規定により日本の
    国籍を失つた者は、第五条第一項第五号に掲げる条件を備えるときは、日本
    の国籍を失つたことを知つた時から一年以内に法務大臣に届け出ることによ
    つて、日本の国籍を取得することができる。ただし、天災その他その者の責
    めに帰することができない事由によつてその期間内に届け出ることができな
    いときは、その期間は、これをすることができるに至つた時から一月とする。
   3 前二項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を取得す
    る。

    (法定代理人がする届出等)
   第十八条 第三条第一項若しくは前条第一項の規定による国籍取得の届出、帰
    化の許可の申請、選択の宣言又は国籍離脱の届出は、国籍の取得、選択又は
    離脱をしようとする者が十五歳未満であるときは、法定代理人が代わつてす
    る。

    (省令への委任)
   第十九条 この法律に定めるもののほか、国籍の取得及び離脱に関する手続そ
    の他この法律の施行に関し必要な事項は、法務省令で定める。

    (罰則)
   第二十条 第三条第一項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出を
    した者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
   2 前項の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第二条の例に従う。

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日本国憲法9条(戦争の放棄、平和実現のための積極的行動)と自民党案(国防軍)

2016-08-09 23:00:00 | 日本国憲法

 まず、日本国憲法9条(憲法前文を踏まえた上で)を、憲法学的に解釈します。
 (一小児科医師の解釈ですが、芦部憲法を読み込んで解釈に臨んでいます。)


****日本国憲法 9条*****
第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
*****************

 日本国憲法9条の通説的な解釈は、

1条において

 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する戦争の放棄の動機の下に、

 「国際紛争を解決する手段として」、すなわち、国家の政策の手段として

 1、国権の発動たる戦争

 2、武力による威嚇

 3、武力の行使

 この3つを放棄する。

 ここで、侵略戦争は放棄することをまず掲げています。
 自衛戦争は、1条では放棄されていません。


2条において

 「前項の目的を達成するため」、すなわち、戦争を放棄するに至った動機である 「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」する目的のため、

 「陸海空軍その他の戦力」の一切の戦力の保持を禁止、交戦権も否認します。
 このことより、自衛戦争も行うことは禁止されることになります。

 日本国は、平和主義を国の基本理念に掲げ、侵略戦争も自衛戦争も、一切の戦争を放棄しています

 
 ただし、「自衛権」は独立国家であれば当然有する権利であり、「個別的自衛権」として厳格な自衛権の発動要件のもとに認められています

 「集団的自衛権」は、他国に対する武力攻撃を、自国の実体的権利が侵されなくても、平和と安全に関する一般的利益に基づいて援助するために防衛行動をとる権利であり、日本国憲法の下では認められません。(すなわち、違憲です。)日米安保上条約の定める相互防衛の体制も、日本の個別的自衛権の範囲内のものとされています。


 <自衛権を発動するための3要件>

 1、防衛行動以外に手段がなく、そのような防衛行動をとることがやむをえないという必要性の要件

 2、外国から加えられた侵害が急迫不正であるという違法性の要件

 3、自衛権の発動としてとられた措置が加えられた侵害を排除するのに必要な限度のもので、つり合いがとれていなければならないという均衡性の要件


 「日本国憲法でも、このような自衛権まで放棄したわけではない。しかし、自衛権が認められているとしても、それにともなう自衛のための防衛力・自衛力の保持が認められるかどうかは、…重大な争いのあるところである。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 60ページ)


 そこで、政府は、自衛権を行使するための実力を保持することは憲法上許されるとしています

 「自衛のための必要最小限度の実力」(=「他国に侵略的な脅威を与えるような攻撃的武器は保持できない」)は、憲法で保持することを禁じられる「戦力」にあたらないと政府は説明をしています。

 自衛力・自衛権の限界については、学説上も、裁判所でも争われているところです。

 〇自衛力の限界は具体的にはどこにあるか

 〇自衛権がどこまで及ぶか

 〇自衛隊の海外出動
 ⇒「自衛隊の海外出動が合憲か否かは、武力行使の有無と深くかかわるが、それは自衛隊の憲法適合性という本質的な問題を措(お)いて論じることはできないであろう。いかに国際貢献という目的であっても、憲法9条の改正なくして、現状のまま自衛隊が部隊として(とくにPKFに)参加する出動を認めることは、法的にはきわめて難しい。」(『憲法 第5版』岩波書店 芦部信喜 65ページ)


 戦争を放棄する私たちの国は、自衛権の行使は、厳格な要件のもと許されています。
 このことを原点に、国際協調主義のもと、世界への人的、物的な支援等による「人間の安全保障」を積極的に生み出していくことこそが、今の日本には大切であると考えます。
 


 以下は、自民党案です。
******自民党案******
 
第二章 安全保障

(平和主義)
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。〔新設〕
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保す
るために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

(領土等の保全等)
第九条の三 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。〔新設〕

**********************************

 
 自民党案は、時代に逆行した、「国防軍」を創設します。
 ついでに、第2章「戦争の放棄」だった章の題名を、「安全保障」という題名に置き換えています。自民党にとって、「戦争の放棄」はどうも都合が悪いようです。
 9条において、自民党は、日本を戦争をする国にさせたいのではと、考えられなくもありません。


 もし、第二章を、「安全保障」というなら、国防軍をもつことだけが、安全保障であるわけではなのであるから、そのほかの安全保障に役立つ規定も盛り込むべきでしょう。
 それができないのであれば、「安全保障」のような聞こえのよさそうな章の題名をつけて、国民を欺くのではなく、真正面から、「第二章 国防軍」という題名にすべきと考えます。
 章の名づけかたから、問題であり、一貫性に欠けます。

 
 現行憲法が掲げる三つの基本原理のひとつ「平和主義」と、それゆえに、戦争は放棄し続けるのか、そして、平和外交を実践し、世界の紛争の調整役の地位を築いていくのか、
 はたまた、自民党に賛成して、戦争を許容するのか、
 判断は、私達国民ひとりひとりに委ねられています。




 自民党案を解釈するなら

9条1項で、国際紛争を解決する手段としては戦争を放棄するが、それ以外は戦争を放棄していません

9条2項で、自衛権の発動を認めています。自衛権の発動を認めると明文規定するなら、厳格な発動要件も明記すべきでしょう。この要件なき明文規定は、危険です。

9条の2 
第2項「国会の承認その他の統制」このような、「その他の統制」のようなあいまいな文言はさけるべきです。巧みに、国会をすりぬけることができる手法まで、厳格な運用が求められる条文に盛り込まないでいただきたい。
第5項「国防軍に審判所」というが、当事者だけで裁判されると「懲役300年」のようなおかしな判決が出される可能性があるから、裁判所に審判所を置くなど、正当な裁判が担保できる規定をおいていただきたい。

9条の3 「その資源を確保」が前面に出てくる危険性はないだろうか。厳格な発動要件を満たすことなく、資源確保を旗印に、戦争が正当化されるおそれがあるから、この文言は問題である。いつも戦争は、「資源の確保」のために実質起こってきたのではないでしょうか?

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日本国憲法8条(財産授受の制限、国会の議決に基づく)と自民党案(国会の承認を経る)

2016-08-08 23:00:00 | 日本国憲法
 日本国憲法、8条。
 日本国憲法第一章天皇は、この8条で終わり、9条からは第2章に入ります。

***************************
日本国憲法
(財産授受の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。


自民党案
(皇室への財産の譲渡等の制限)
第八条 皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与するには、法律で定める場合を除き、国会の承認を経なければならない。
***************************  

 憲法8条は、88条とともに、皇室経費に関する規定です。  
 (うまく皇室経費に関する条文は、「8」でそろえたのかな?それは、さておき)

****日本国憲法88条*****
第八十八条  すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。

自民党改憲草案
(皇室財産及び皇室の費用)
第八十八条 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。
****************  

 さて、新憲法の施行とともに、天皇の財産(御料)および皇族の財産(これを合わせて皇室財産と言う)は、「国に属する」ことになりました。  
 そして、天皇および皇族の活動に要する費用は、「すべて…予算に計上して国会の議決を経なければならない」と規定されました。内閣により「日本国憲法第8条の規定による議決案」として国会に付議されます。  

 予算に計上される皇室経費には、皇室経済法(最後に全文を掲載します。)で、三つの区分がされています。  

〇内廷費 皇室経済法4条  

〇宮廷費 皇室経済法5条  

〇皇族費 皇室経済法6条  

 一定の種類の行為については、その度ごとに国会の議決を経ることを要しないとされています(皇室経済法2条)。  

 8条と88条により、明治憲法下の皇室自立主義を国会中心主義に、皇室財政制度においても変更することとなりました。  

 「皇室に再び大きな財産が集中したり、皇室が特定の個人ないし団体と特別の関係を結び不当な支配力をもつことを防止することを目的」としています(『憲法第5版』岩波新書 芦部信喜 53ページ)。  

 自民党改憲草案では、「国会の議決」の文言が、「(法律で定める場合を除き、)国会の承認」とされています。  

 わざわざ、文言を変えなくてもよいのではないでしょうか。


*****皇室経済法 全文****




皇室経済法
(昭和二十二年一月十六日法律第四号)


最終改正:平成一一年一二月二二日法律第一六〇号



第一条  削除

第二条  左の各号の一に該当する場合においては、その度ごとに国会の議決を経なくても、皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは賜与することができる。
一  相当の対価による売買等通常の私的経済行為に係る場合
二  外国交際のための儀礼上の贈答に係る場合
三  公共のためになす遺贈又は遺産の賜与に係る場合
四  前各号に掲げる場合を除く外、毎年四月一日から翌年三月三十一日までの期間内に、皇室がなす賜与又は譲受に係る財産の価額が、別に法律で定める一定価額に達するに至るまでの場合

第三条  予算に計上する皇室の費用は、これを内廷費、宮廷費及び皇族費とする。

第四条  内廷費は、天皇並びに皇后、太皇太后、皇太后、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃及び内廷にあるその他の皇族の日常の費用その他内廷諸費に充てるものとし、別に法律で定める定額を、毎年支出するものとする。
○2  内廷費として支出されたものは、御手元金となるものとし、宮内庁の経理に属する公金としない。
○3  皇室経済会議は、第一項の定額について、変更の必要があると認めるときは、これに関する意見を内閣に提出しなければならない。
○4  前項の意見の提出があつたときは、内閣は、その内容をなるべく速かに国会に報告しなければならない。

第五条  宮廷費は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものとし、宮内庁で、これを経理する。

第六条  皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるために、年額により毎年支出するもの及び皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額により支出するもの並びに皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために、皇族が皇室典範 の定めるところによりその身分を離れる際に一時金額により支出するものとする。その年額又は一時金額は、別に法律で定める定額に基いて、これを算出する。
○2  前項の場合において、皇族が初めて独立の生計を営むことの認定は、皇室経済会議の議を経ることを要する。
○3  年額による皇族費は、左の各号並びに第四項及び第五項の規定により算出する額とし、第四条第一項に規定する皇族以外の各皇族に対し、毎年これを支出するものとする。
一  独立の生計を営む親王に対しては、定額相当額の金額とする。
二  前号の親王の妃に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。但し、その夫を失つて独立の生計を営む親王妃に対しては、定額相当額の金額とする。この場合において、独立の生計を営むことの認定は、皇室経済会議の議を経ることを要する。
三  独立の生計を営む内親王に対しては、定額の二分の一に相当する額の金額とする。
四  独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王に対しては、定額の十分の一に相当する額の金額とする。ただし、成年に達した者に対しては、定額の十分の三に相当する額の金額とする。
五  王、王妃及び女王に対しては、それぞれ前各号の親王、親王妃及び内親王に準じて算出した額の十分の七に相当する額の金額とする。
○4  摂政たる皇族に対しては、その在任中は、定額の三倍に相当する額の金額とする。
○5  同一人が二以上の身分を有するときは、その年額中の多額のものによる。
○6  皇族が初めて独立の生計を営む際に支出する一時金額による皇族費は、独立の生計を営む皇族について算出する年額の二倍に相当する額の金額とする。
○7  皇族がその身分を離れる際に支出する一時金額による皇族費は、左の各号に掲げる額を超えない範囲内において、皇室経済会議の議を経て定める金額とする。
一  皇室典範第十一条 、第十二条及び第十四条の規定により皇族の身分を離れる者については、独立の生計を営む皇族について算出する年額の十倍に相当する額
二  皇室典範第十三条 の規定により皇族の身分を離れる者については、第三項及び第五項の規定により算出する年額の十倍に相当する額。この場合において、成年に達した皇族は、独立の生計を営む皇族とみなす。
○8  第四条第二項の規定は、皇族費として支出されたものに、これを準用する。
○9  第四条第三項及び第四項の規定は、第一項の定額に、これを準用する。

第七条  皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。

第八条  皇室経済会議は、議員八人でこれを組織する。
○2  議員は、衆議院及び参議院の議長及び副議長、内閣総理大臣、財務大臣、宮内庁の長並びに会計検査院の長をもつて、これに充てる。

第九条  皇室経済会議に、予備議員八人を置く。

第十条  皇室経済会議は、五人以上の議員の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
○2  皇室経済会議の議事は、過半数でこれを決する。可否同数のときは、議長の決するところによる。

第十一条  皇室典範第二十九条 、第三十条第三項から第七項まで、第三十一条、第三十三条第一項、第三十六条及び第三十七条の規定は、皇室経済会議に、これを準用する。
○2  財務大臣たる議員の予備議員は、財務事務次官をもつて、これに充て、会計検査院の長たる議員の予備議員は、内閣総理大臣の指定する会計検査院の官吏をもつて、これに充てる。

   附 則 抄


○1  この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
○2  この法律施行の際、現に皇室の用に供せられている従前の皇室財産で、国有財産法の国有財産となつたものは、第一条第二項の規定にかかわらず、皇室経済会議の議を経ることなく、これを皇室用財産とする。
○3  この法律施行の際、従前の皇室会計に所属する権利義務で国に引き継がるべきものの経過的処理に関し、必要な事項は、政令でこれを定める。

   附 則 (昭和二四年五月三一日法律第一三四号)抄


1  この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。

   附 則 (昭和二七年二月二九日法律第二号)


1  この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。
2  この法律施行の際既婚者たる親王は、改正後の皇室経済法第六条第三項の適用については、独立の生計を営む親王とみなす。
3  この法律施行の際未婚者たる親王又は内親王は、改正後の皇室経済法第六条第三項の適用については、独立の生計を営まない親王又は内親王とみなす。

   附 則 (昭和二八年六月三〇日法律第四七号)

 この法律は、昭和二十八年七月一日から施行する。


   附 則 (昭和四〇年五月二二日法律第七六号)

 この法律は、公布の日から施行し、昭和四十年四月一日から適用する。


   附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄


(施行期日)
第一条  この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。





*******************************
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日本国憲法7条(内閣の助言と承認により衆議院解散)と自民党案(6条内閣総理大臣の進言により衆議院解散)

2016-08-07 00:00:01 | 日本国憲法
 日本国憲法第7条。

 憲法7条に相当する条文は、自民党改憲草案では6条であり、その6条と比較して見ます。


*************
(日本国憲法)
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。


(自民党改憲草案)
(天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。

2 天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。

3 天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。

4 天皇の国事に関する全ての行為には、内閣の進言を必要とし、内閣がその責任を負う。ただし、衆議院の解散については、内閣総理大臣の進言による。

5 第一項及び第二項に掲げるもののほか、天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。

**************************

1)自民党側の説明

 以下、6条関連の自民党側の説明を見ます。

*****自民党Q&A*****

Q6 その他、天皇に関して、どのような規定をおいたのですか?

6条に天皇の行為に関する規定を置きましたが、現行憲法を一部変更してい
る所があります。

(国事行為には内閣の「進言」が必要)
現行憲法では、天皇の国事行為には内閣の「助言と承認」が必要とされていますが、
天皇の行為に対して「承認」とは礼を失することから、「進言」という言葉に統一しま
した(6 条4 項)。従来の学説でも、「助言と承認」は一体的に行われるものであり、区
別されるものではないという説が有力であり、「進言」に一本化したものです。

(天皇の公的行為を明記)
さらに、6 条5 項に、現行憲法には規定がなかった「天皇の公的行為」を明記しました。
現に、国会の開会式で「おことば」を述べること、国や地方自治体が主催する式典に出
席することなど、天皇の行為には公的な性格を持つものがあります。しかし、こうした
公的な性格を持つ行為は、現行憲法上何ら位置付けがなされていません。そこで、こう
した公的行為について、憲法上明確な規定を設けるべきであると考えました。
一部の政党は、国事行為以外の天皇の行為は違憲であると主張し、天皇の御臨席を仰
いで行われる国会の開会式にいまだに出席していません。天皇の公的行為を憲法上明確
に規定することにより、こうした議論を結着させることになります。

(国事行為の基本に変更なし)
なお、6 条2 項では、天皇の国事行為について列記されていますが、規定を分かりや
すく若干整理したものの、基本は変えていません。

********************




2)さて、以下、問題と感じることを書きます。

問題点1 整理して書いたというが、自民党改憲草案は、実は、整理されていなく、逆にわかりずらい。

問題点2 現行憲法3条の大事な条文「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」が、条文から項に格下げされ、自民党案のこの6条4項に追いやられている。

問題点3 「進言」という言葉を持ち出しているが、現行憲法の「助言と承認」のままでよいのではないか。

問題点3 1項は、内閣と司法のことを、日本国憲法では2項に分けて書いていたものを一緒くたに書いている。これは、よろしくない。2項を設けて別々に分けて書くべき。

問題点4 衆議院の解散は、「内閣」ではなく、「内閣総理大臣」の「助言と承認(自民党の言葉では、進言)」でよいか。

問題点5 5項で、「天皇は、国又は地方自治体その他の公共団体が主催する式典への出席その他の公的な行為を行う。」と「公的な行為」の規定がなされている。
    議論が必要で、必要最小限の「公的行為」となるようにすべき。そのための手立てはあるのか。
    現行憲法では、国事行為を限定して書くことを目指していたのが、自民党案5条で、大事な「のみ」(現行憲法4条には入っていた)をとったことと相まって、天皇の「国事行為」や「公的行為」が安易に拡大される素地がつくられている。

cf.
自民党案5条
(天皇の権能)
第五条 天皇は、この憲法に定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。

現行憲法
第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。





3)自民党改憲案は、天皇の国事行為を整理して書いたということだが、逆にわかりにくくされてしまったため、改めて整理します。

 日本国憲法では、天皇の国事行為13個を明文規定(日本国憲法4条2項、6条1、2項、7条1号~10号)しています。これらは、すべて、内閣の助言と承認を必要とする行為です(現行憲法3条「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」)

 それら規定の文言が、どのように自民党改憲案でなっているのか。



○4条2項
現行憲法:天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

自民党案:天皇は、法律の定めるところにより、前二項の行為を委任することができる。(自民党改憲案では、6条3項)




○6条1項
現行憲法:天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

自民党案:天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。(自民党改憲案では、6条1項)

⇒自民党案では、内閣は内閣、司法は司法で条文をわけるべきであると考えます。



○6条2項
現行憲法:天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

自民党案:天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。(自民党改憲案では、6条1項)

⇒自民党案では、内閣は内閣、司法は司法で条文をわけるべきであると考えます。


○7条1号~10号
現行憲法:天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

自民党案:天皇は、国民のために、次に掲げる国事に関する行為を行う。

自民党案では、「内閣の助言と承認により」が削られています。後の条項で補足するのではなく、柱書きに入れるべきだと思います。自民党案6条4項だけでは、わかりにくいです。

現行憲法:
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

自民党案:
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の国の公務員の任免を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 全権委任状並びに大使及び公使の信任状並びに批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行うこと。


以上
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日本国憲法6条(1項天皇の内閣総理大臣任命、2項天皇の最高裁判所長官の任命)と自民党案

2016-08-06 02:48:31 | 日本国憲法
 日本国憲法6条。6条には、1項と2項があります。

 自民党案では、5つの項で構成される6条の第1項に、日本国憲法6条2項分の内容をまとめて一緒くたに規定されました。


****************
日本国憲法
(天皇の任命権)
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
二項  天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

自民党改憲案
(天皇の国事行為等)
第六条 天皇は、国民のために、国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命し、内閣の指名に基づいて最高裁判所の長である裁判官を任命する。
****************

 現行日本国憲法6条は、天皇の二つの国事行為が規定されています。

 1項では、天皇が、内閣総理大臣を任命するが、その実質的決定権は、国会にあることを、

 2項では、天皇が、最高裁判所の長たる裁判官を任命するが、その実質的決定権は、内閣にあることを、

 それぞれ明らかにしています。

 内閣総理大臣任命、最高裁裁判所裁判長を任命するというそれぞれ大事な条文は、その重要性に鑑み、少なくとも別の項に分けて規定しておくべきと考えます。

 なぜ、内閣と裁判所という別のものを一緒の項に押し込めたのか、理解に苦しみます。


 また、自民党改憲草案で、現行日本国憲法ではなかった「国民のために」という文章が入れられました。
 任命は、あくまで、形式的・儀礼的になされるものであり、主観的な目的や意図は入りようがない話です。
 主観的な意図ともとれる文章を、なぜ入れたのか疑問です。
 あたかも、天皇が、実質的決定権をもって、任命しているかのように誤解するひとが出ないでしょうか?
 当たり前の語句、しかしその一方で、誤解を生み出す可能性のある語句は、入れるべきでないと考えます。

以上

 
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