新生児の先天性の病気を早期発見する検査に、二つの難病を加えるこども家庭庁の実証事業が始まり、大阪府や埼玉県など13府県と、千葉市や名古屋市など8政令市が参加することがわかった。同庁が費用を補助し、全国一律での実施を目指して検査や治療体制を整え、課題を洗い出す。専門家は「命を救える検査に地域差がでないよう、公費検査を広げていくべきだ」としている。
検査は、かかとから少量の血液を採取して分析する「新生児マススクリーニング検査」で、国は現在、都道府県や政令市に20種類の病気について公費で行うことを求めている。
実証事業で加わるのは、細菌やウイルス感染への抵抗力が極度に低い「重症複合免疫不全症(SCID)」と、全身の筋力が低下する「脊髄性筋 萎縮 症(SMA)」の検査。数万人に1人の割合で生まれ、治療しなければ命にかかわる。早期発見できた場合、SCIDは造血幹細胞移植、SMAは遺伝子治療薬による治療などが可能で、子どもは健康に成長できる可能性が高い。
二つの難病の検査は、大学病院などを中心に行われてきた地域もあるが、数千円の自己負担が必要になるため希望しない親もいた。地域内でも検査ができない医療機関もあったため、学会や患者家族会が全国一律の実施を求めていた。
同庁は2023年度の補正予算に10億円の事業費を計上し、参加自治体を募っていた。24年度も新たな募集を行う。
この検査に詳しい防衛医科大学校の今井耕輔教授(小児科)は、「二つの難病の検査をしている医療機関では、早期発見による治療で救命できた実績がある。すべての新生児が公平に検査を受けられるよう、いち早く全国で公費化するべきだ」と話している。