岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

映画『家族を想うとき』 ケン・ローチ監督 観ました。

2020-01-21 20:00:48 | 映画・DVD 

『わたしは、ダニエル・ブレイク』のケン・ローチ監督作品

映画を見ている時は、しんどいなーと思ってしまいます。

しかし見終わってからはじわじをとしみてきます。

さすが映画界の至宝と言われるケン・ローチ監督です。

原題は「Sorry We Missed You」宅配便の不在通知票です。

とても意味深です。


私たちは、英国に多くのことを学んできました。

特に社会福祉に関しては明治期から輸入専門でした。

産業革命で世界に先んじた英国は、ご存知のよう労働者を搾取しながら植民地支配を強化することで巨万の富を得ていました。

搾取された人々を救うために19世紀前半から社会福祉活動が進んでいきます。

第2次世界大戦後には英国病といわれながらもなんとか「ゆりかごから墓場まで」制度を維持してきました。

その英国が新自由主義を取り入れた1980年代から組合の力が衰退し、貧富の差がさらに増大してしまいました。

この辺りは日本も同様な展開となっています。

それだけに日本の現状を見る思いです。

とても人ごととは思えない映画です。


主人公のリッキーは妻と子ども2人の4人家族です。

リッキーは希望の仕事につくことができず、雇用契約のないフランチャイズの宅配ドライバーになります。

出来高制です。

仕事を出す立場の人間に完全にコントロールされてしまいます。

ミスはすべて罰金となって跳ね返ります。

車はレンタルするか自分の車を使うことになります。

レンタルはとても割高です。

購入するしかありません。


妻のアビーは訪問介護ヘルパーです。

自分の車で利用者宅を訪問しています。

この車が唯一の資産です。

この車を売って夫の宅配用のバンの頭金にして購入するしかありません。

妻はバスを利用しての家庭訪問となり負担が増します。


夫婦ともに過重労働となり息子と娘と過ごす時間が削られてしまいます。

家族内がギクシャクします。

子どもたちも不安定な精神状態に陥ってしまいます。


住んでいる家は賃貸アパートです。

家族のプライバシーも守られません。

身につまされる状況です。

 

下降するエスカレーターに乗った家族。

さて、この家族はどうなってしまうのでしょうか。


パンフには「気高く力強く」という言葉が書かれています。

はて?と思ってしまいますが、確かにその通りです。

人間の気高さがあります。


2人の仕事には組合の影はありません。

ともに非正規労働ですから加入できないのかもしれません。

一人一人バラバラで雇用主に対応することは不可能です。


この辺りも監督は課題としてみているように思います。

やはりこのような問題提起の映画は絶対に必要だと思いました。


お読みいただきありがとうございました。



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