北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

観光を支える裏方の苦労

2005-10-24 23:03:22 | Weblog
帰る頃には小雨がぱらつきました。さて、一雨ごとに寒くなる季節の到来です。

 明日の朝は平地でも雪だって

 さて今日は
■観光の会議は面白い の1本です。

【観光の会議は面白い】
 ここのところ二週間に一度のペースで開いている観光関係の会議に今日も出席する。この会議はメンバーの人選も多様で面白いのと、議論が活発なので毎回楽しみなのだ。

 今日の会議の話題は、観光戦略の骨子作成に向けて、集まっている各機関があらかじめ抽出された五つの戦略に沿った課題やポイントについての意見を出して欲しい、と言うところから始まった。

 五つの戦略(案)とは①マーケット別アプローチ戦略、②北海道観光の「魅力の向上・質の向上」、③北海道観光を巡る連携戦略、④観光基盤強化戦略、⑤北海道観光の発進戦略、の五つである。

 事務局としてはこれに対する意見を、今週末までに出して欲しいという集約の仕方を提案した。

 しかし会議は最初から意見交換の嵐で紛糾。これは面白い意見の場になった。

    *   *   *   * 

 まずAさんから「この会議の位置づけがやはり分からない。我々の上には親委員会もあるのだけれど、そこに提出する原案を作成するという事なのですか?」と疑問の声。

 それに同調する声もあって、座長が「私は行動のための素案づくりだと思っています。ここに参加している皆さんが共同でできる共同体で壁を突破する事に意義があるのではないですか」とすかさず沈静化を図る。

 Bさん:「私の机の後ろにもレポートが数十冊はありますよ。そんなものはいくら作っても何の役にも立たない。要は実行しましょうよ、ということでしょう。北海道観光のための株式会社を作ると思ってご覧なさい。そうすると誰が最高経営責任者になるのですか?誰が責任を取るのか?それを決めて、その人の働きをウォッチし続ける事ではないですか?」

 (実行しなければ何も前に進まないのは世の中の道理。さて面白い)

 Cさん:「実際、何かをしようとしても許認可という話になったとたんに、慣れた人や人の繋がりがなくてものすごく苦労する。そういうことを突破するようなことを誰が出来るのか見せて欲しい」

 Dさん:「先ほどの5つの戦略の外に何かあるとすれば、それは『財源』ではないですか。官のお金に何から何まで頼るのではなく、民間のお金が集まってくるような事を夢見ているのですが」

 Eさん「既存の組織で行くのか、新しい組織を作るのかくらいのダイナミックな議論が欲しい。親委員会でも何ででも議論して、私は新しい組織を作って欲しい」

 Fさん「観光団体のこれまでのルールを一度壊さないとダメかも知れません。そこまで戻さないとそんな議論は出来ないのではないですか」

 その辺りで座長が「日本の観光トップランナーとして産・官の連携を通じて具体的な行動に移して行きましょう」と総括。少しは参加者のマインドも向上してきたかな。

    *   *   *   * 

 Bさんから「話題提供しましょう。宿の満足度調査というのをしてみると、全部で8つの項目がある中で、北海道が平均よりも低いのは『夕食』のスコアと『接客サービス』のスコアでした。お客さんの多くがここに不満足なのだ、ということを肝に銘じた上で改善が出来なくてはダメでしょう」

 Gさんの「北海道産の食材を出しているかどうか、と言う事もあるのでは?」に対して、Eさんは「食事などは期待値も高いので、その分ハンデがあるかも」と助け船。

 メンバーの一人からは、「観光地の食に関するパネルディスカッションをしたりして勉強も重ねているのですが、驚くべきは包丁も握れない料理職人もなかにはいたりするが分かりショックでした」とのこと。

 続けて「しかしそれは、人手の問題、安い単価とその必然の外注化、そして料理の半製品化が必要なのだということです。ビニールを破る事が出来れば料理になってしまうという体制でなければ、安い単価ではやれないという裏方の現実があるのでしょう。おまけに『今なら旬の素材の方が安いのに』と思う事があっても、一度パンフレットに載せてしまえば最低半年はその料理を出し続けなくてはならないということもあります」という切実な現実も。

 『安かろう悪かろう』と言うつもりはないが、安い単価を強いられるホテル業界がいかに安価にものを提供しようかと努力すれば、必然的に向かわざるを得ない方向はアウトソーシングなのだろう。

 Cさんは「100室程度のホテル運営でも同様に大変です。2割はどうしても食材会社の半製品に頼る事になるでしょう。また地産地消を訴えても、地域で農産物を入手する事も流通ルートの現状からはなかなか難しいものです。一ホテルががんばっても難しいですね」

 単価が安いという事で、良い循環になかなかなることができずにいる北海道観光の現実がかいま見えた。

 お金を喜んで払ってもらえて、サービスを提供する側も幸せになるような仕掛けは一体何なのだろうか。


    *   *   *   * 

 話は千歳空港へ。

 Eさん「最近は個人旅行者が増えてレンタカー利用が急増しているのですが、新千歳空港のレンタカー案内がこれまたどうしようもなく悪いのです。空港内で宣伝をしては行けないという規制なのかも知れませんが、こういう受け入れ体制は絶対に問題があります」 そして返す刀で「上士幌の北海道遺産になっている旧国鉄の石橋がありますが、これが道路に看板がないと来ている。訊いてみると、どうも国立公園か何かなので規制がかかっているというようなお話でした。地元もその財産を全く大事にしていない」

 Aさん「JR駅だって不便なところは多いですよ。大きなスーツケースを持って急な階段を上っている若い女性を見ていると可哀想になりますよ」

 座長「実はタクシーも外国人が苦手だと思っている。最近はカードを見せ合う事で意思疎通するような工夫が始められて、少しは改善したようですが、外国人の乗車は勘弁して欲しいという風潮がまだあります」

 Cさん「ネイチャーガイドを食べられるようにしてあげて欲しい。年収200万円以下でやっている人が実に多い。それでも彼らはやりたがっていますが、奥さんが給料の安定した正職に就いている人でなければやれないでしょう」

    *   *   *   * 

 そしてDさんから「開発局さんではカーナビのマップコードで案内を始めていると聞きました」という話題が出た。

 私「(そらきた!)開発局ではマップコードによる周遊の実験を進めています。これはデンソーの特許なのですが、最新のカーナビには大抵ついていますし、旅行雑誌などにも見所紹介に9桁の番号が情報提供されています。このマップコードの優れたところは、日本中を30mのメッシュに切って場所を特定できることで、羊蹄山はぐるり360度の回りから見えますが、『この写真の風景はここ!』という紹介が可能なのです」と宣伝。

 続けて「しかしながら、まだまだ若い女性などにはその意味が浸透していなくて、カーナビはついているのにその機能を使っていないケースがほとんどです。つまり観光のためのインフラは整備されてきているのに、それを最終的に利用する人間との間の関係が築かれていないのです。マン・マシン・インターフェイスというやつですね。人間が機械に着いて行けていないのです」

 いかがだろう。素晴らしいインフラも、それをありがたく利用出来なくては宝の持ち腐れになってしまうのだ。

 機械がもっと使いやすくなるのが先か、人間が成長するのが先なのか。

 要はそれを利用する事に多大のメリットを感じて、喜びが身体の中にわき起こるかどうかが問題だろう。

 何の感情もない単なる技術の紹介は、喜怒哀楽を感じる人間にはなかなか浸みて行かないものなのだ。一ひねりする工夫が必要なのだろうな、きっと。

    *   *   *   * 

 ここに至って一応議論は尽くされて、お時間となった次第。

 少しでも具体的な組織や行動につなげなくては、これだけのメンバーが揃った会議がもったいない。

 何か良い儲け話はないものか。志は儲け話によって支えられるのだ。これを報徳的に言えば「経済と道徳の両立」なのである。

 経済と道徳はどちらが上になってもおかしい。車の両輪としてそのバランスが取れてこそなのである。日本人は儲け話を卑しく見る性向があるけれど、それなくしては世の中は回らないという見たくない現実には目をつぶる傾向にある。

 見たくない現実を見よう。真実の種はそこに落ちているものですだ。



 今日もなかなか白熱した議論で面白かった。意見が出る会議は良い。

コメント (1)
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