職場内研修で、"クライシスマネジメント"についての講義を受けました。
クライシスマネジメントは日本語では「危機管理」と言います。
似たような言葉で"リスクマネジメント"という単語がありますが、こちらは「危険管理」と訳されます。
その意味の違いですが、リスクは事件や事故を発生させる危険のことで、そういうものを事前に察知して排除するのがリスクマネジメント。
そうはいっても事件や事故は起こるものです。自然災害や人為的な事件・事故を含めて、組織の存亡を左右するような事象が起こってしまった後にどうするか、というのがクライシスマネジメントというわけです。
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講義ではまず、組織全体をマネジメントするうえでの悪い例を紹介されました。
企業を始め現代の組織は多くの業務を効率的にこなすために階層構造にせざるをえないが、そのためにトップと現場など、上部と下部の距離が離れてしまいがち。そこで情報が伝言ゲームのようになって正しく上がらなかったり、誤解を生んだりします。
そしてそこに、トップに近くて権力欲の強い者がいたりすると「虎の威を借る狐」のような人間が登場する素地がある。
情報がなかなか上にあがりにくいのは、部下がトップに直談判をすることを「ルール違反」だとか「周囲のコンセンサスを取ってから伝達すべき」というような文化も背景にあると言います。
こうした状況を打破するための組織風土として、「報連相」つまり、報告・連絡・相談するということを当たり前にする体制が望ましい。現場の正しい情報を上はもちろん、周囲にも連絡するような組織風土は確かに望ましいことで、質の高い組織マネジメントと言えるでしょう。
小林製薬という製薬会社がありますが、こちらでは社内提案制度というのを作っていて、社員に対して自社製品の改善のためのアイディアを募集しています。そしてこれがとてもうまくいっていると評判です。
社内提案制度というのはどの組織でも作られることが多いのですが、多くは「アイディアを出しても仕方がない」と思う社員が多く、形骸化しているのが現実。ところが小林製薬では、出されたアイディアは全て担当の部所に回して、採用できるものは採用し、採用できないものはなぜ採用にならないかをしっかりと検討してそれを発案者に返すということをルール化しているのだそう。
発案者は自分の考えに対して真剣に応えてくれるという姿勢を感じて、又出そうという気持ちになると言います。やりっ放しにしないという組織風土が構成員のモチベーションを上げている好事例と言えそうです。
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さて、いよいよクライシスマネジメント。
組織としては報連相を素早く行うということにつきるのですが、しばしば問題になるのはトップのマスコミなどに対する姿勢や態度だったりと、案外とんでもないところに失敗の種が転がっているものです。
事件や事故があった際の大失敗事例として先生が示されたのは、雪印乳業が毒入り牛乳で批判された時の社長の「私も寝ていないんだ」発言と、船場吉兆の産地偽装問題に対する謝罪会見時に社長が謝罪する言葉を横から女将さんが囁いた言葉が全部マイクで拾われて、社長の謝罪に対する誠意のなさが批判を受けた事例でした。
これに対して謝罪対応が上手だった事例として先生は、顧客情報が大量に漏洩した際のジャパネットたかたのタカタ社長の会見をあげました。
「タカタ社長はテレビ慣れしているということもあったでしょうが、相当に世間の目を意識して演出していたので問題が大きくならずに沈静化しました。まさに上手な対応の好事例だと思います」
危機に陥った際のトップの態度は組織の命運を分けるようです。
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さて、報連相をする組織風土においては報告・連絡・相談を受けたときの上司の態度も問題になる、と先生はおっしゃいます。
「報連相の反対は"メイカイエン"と覚えてください。メイカイエンとは、命令・解説・援助の略語ですが、嫌な情報が上がってきた時にも上司は笑う余裕を見せた上で、命令・解説・援助をすべきだ」と先生はおっしゃいます。
いざ事件事故が起きた時には、部下が実践する報連相の組織風土に対して上司も応える組織風土が求められます。
上司も部下も頑張って、健全でパフォーマンスの高い組織風土を作り上げましょう。