「知らないと恥をかく、そばの食べ方」という記事があって興味深く読みました。
3つのポイントに絞って、先輩が後輩にそばの食べ方を指南するという記事です。
そばの食べ方に正解はないと思いますし、この記事の中身にも割と突っ込みどころがありました。
最初に注意されたのは「わさびはそばつゆに溶かすな」ということ。
そうそう、蕎麦の場合は汁とかいて「つゆ」と呼びます。決して「タレ」とは言わないのでご注意を。
それでわさびを汁に溶かすな、と言っていますがこれはこれで結構。溶かすとわさびの風味が飛んじゃいますからね。
しかし安曇野にいた時に地元の方に蕎麦の薬味について訊いてみると、わさびよりも七味唐辛子を使うという人が多いのに驚いたことがあります。
安曇野のわさびは明治時代から栽培が始まったもので、元々の有名産地は静岡や伊豆でした。それが大正12年の関東大震災のために静岡の産地が大打撃を受けて、そこから安曇野のわさびが注目されるようになったもの。
信州の人たちは蕎麦にはわさびよりも七味のようです。そしてその七味は何と言っても善光寺門前は八幡屋磯五郎の善光寺七味。これをかけ蕎麦のみならず、冷たい盛り蕎麦の上にもぱらぱらと振りかけて食べます。
七味ももちろん先に汁に入れてはいけません。
冷たい蕎麦に七味というのも意外にオツなものですよ。お試しあれ。
【善光寺七味】
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蕎麦の食べ方2つ目は、「つゆにそばの下部分だけをつけて、すすって食べる」というもの。
関東の汁は辛め(しょっぱめ)なので、どっぷりとつけるとしょっぱくなってしまうというので下だけちょいとつけろ、と言われます。
でもこれは汁が辛めのときの話。汁にちょんとつけるよりはどっぷりとつける方が美味しいので、どっぷりとつけても良いくらいの濃さの汁で作るお店もありますから、自分の好みで良いのだと思います。
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そばの食べ方その3は「運ばれて来たら相手を待たずに速攻ですぐ食べろ」ですが、これには同意です。
蕎麦は茹でたてが美味しくて、時間が経つと乾いてしまって風味が失われます。
一緒に注文して、自分にだけ蕎麦が来て相手にまだ来ない、というときでも遠慮せずにどんどん食べてください。
蕎麦は乾くのを嫌って、大盛りでは頼まずに少なければ二枚、三枚と頼むなんていう通の方もいます。
でも知識ばかり詰め込んで通ぶるあまり、気を使ってばかりというのでは蕎麦を存分に楽しめませんね。
大盛りをどっぷり汁につけて食べたいように食べるのが庶民の蕎麦で良いのではないでしょうか。