東京オリンピックでのマラソンと競歩の競技会場が札幌へ変更になるという衝撃的なニュースが日本中を駆け巡りました。
ドーハ世界陸上のマラソンや競歩で棄権者が相次いで、暑さが選手の命にかかわるという強い危機感がIOC(国際オリンピック委員会)を突き動かしたのでしょう。
手続き的に何が正しいのか、という議論を超えて既にバッハ会長の動きは早くて、「IOCと大会組織委員会の二者間で合意した」と明らかにしました。
札幌開催になったとしても、コースはどうするのか、選手と関係者の宿泊は大丈夫か、コース沿道の賛同を得る手続き、チケットはどうする、全体の予算はどこが負担するのか、ボランティアを含めて運営は大丈夫かなど、様々な課題が山積しています。
当然JOC(日本オリンピック委員会)や東京オリ・パラ組織委員会のモチベーションは下がるでしょうし、札幌変更を受けるにしても北海道や札幌での受け入れ態勢を整えるのも急務です。
しかしこうして時間が経つに連れて、その案に賛成する組織・団体が増えてゆくので、マラソンの東京開催は極めて分が悪くなる一方です。
大体において、物が動く時というのは一歩先に提案をした者がかなり有利になります。
提案をする段階で既に問題意識があって、「それを解決するにはこれしかない」という強い思いが込められているので、後出しではそれに反論するのが難しい。
もし東京がこの事態を回避できたとしたら、ドーハの世界陸上で暑さのために選手の棄権騒ぎが出た次の瞬間に、『競技時間を深夜にずらす』など、東京での競技改善計画を『提案』しておく必要があったでしょう。
『先に提案する』ことこそが機先を制するアクションで、その意味で、東京は出遅れた感があります。
まさかここへ来てこんなにもドラスティックな提案が出てくるとは思わなかったのでしょうが、危機にあたっては周りがドンビキするくらい強いアクションを見せつける必要があります。
そういう意味で今回はIOCの側に危機感が強くドンビキするくらいの提案を先にされてしまったということでしょう。
札幌市も札幌市民にとっても棚からボタ餅ですが、この機会を生かすには相当の覚悟が必要ですね。
事態の行く末を見守りながら、札幌市民として協力してゆきたいものです。